現地アメリカはどう見ている?第90回アカデミー賞全部門予想まとめ

3月4日(日)に米ロサンゼルスで行われる第90回アカデミー賞授賞式。昨年度は作品賞の発表で受賞作品とは違うタイトルが読み上げられるという前代未聞のハプニングもあったが、本年度は誰が笑うことになるのだろうか? 現地アメリカのメディアによる予想と、ここまでの主な受賞実績をまとめてみた。

今回、参考にしたメディアは以下の通り。数字は各メディアが考える受賞確率の高さを示しており、①は「本命」ということになる。
HR...Hollywood Reporter
RS...Rolling Stone
C...Collider
IW...Indie Wire

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■作品賞
『君の名前で僕を呼んで』...HR⑦、C⑥、IW⑧
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』...HR⑨、C⑧、IW⑥
『ダンケルク』...HR④、C⑤、IW④
『ゲット・アウト』...HR②、C③、IW② 《対抗》
『レディ・バード』...HR⑤、C②、IW⑤
『ファントム・スレッド』...HR⑥、C⑦、IW⑦
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』...HR⑧、C⑨、IW⑨
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR①、RS①、C①、IW① 《本命》
『スリー・ビルボード』...HR③、RS②、C④、IW③

ゴールデン・グローブ賞:『スリー・ビルボード』/『レディ・バード』
英国アカデミー賞(BAFTA):『スリー・ビルボード』
俳優組合協会賞(SAG賞):『スリー・ビルボード』
製作者組合協会賞(PGA賞):『シェイプ・オブ・ウォーター』

ゴールデン・グローブ賞をはじめ主要な賞を獲得している『スリー・ビルボード』だが、好き嫌いが分かれるようでメディアはどこも本命視していない。一方、事前の賞レースでは一歩譲った感のある『シェイプ・オブ・ウォーター』はどのメディアからも有力候補と見られている。これについてColliderは、9つの候補の中で『シェイプ・オブ・ウォーター』はもし1位でなくても2位や3位という形で票を集めやすいのに対し、『スリー・ビルボード』は1位でなければ9位と最も低い評価になる危険が高いからだと論じている。また、『スリー・ビルボード』は監督賞にノミネートされていないこともマイナスと見なされている。なぜなら、監督賞にノミネートされていないにもかかわらず作品賞を獲得した例は、過去30年間で2度(第62回の『ドライビング Miss デイジー』、第85回の『アルゴ』)しかないから。ジンクス通りとなるのか!?

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■監督賞
クリストファー・ノーラン『ダンケルク』...HR②、RS②、C②、IW② 《対抗》
ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』...HR③、C③、IW④
グレタ・ガーウィグ『レディ・バード』...HR④、C④、IW⑤
ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』...HR⑤、C⑤、IW③
ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR①、RS①、C①、IW① 《本命》

ゴールデン・グローブ賞:ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』
英国アカデミー賞(BAFTA):ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』
監督組合協会賞(DGA賞):ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』

候補の5人はいずれも監督賞ノミネート初というフレッシュな顔ぶれがそろった。そんな中で最有力は、多くの賞をすでに獲得しているギレルモ・デル・トロ。Colliderは、過去69回のDGA賞受賞者のうち61人がアカデミー賞を獲得していることを、根拠として挙げている。彼が受賞すれば、アルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント:蘇えりし者』)に続いて、同世代で切磋琢磨してきたメキシコ人監督の受賞となる。対抗は、これが通算5度目の候補入りながら、同部門としては初のクリストファー・ノーラン。CG全盛期にあって当時の戦闘機を実際に飛ばし、その機体にIMAXカメラを付けて撮影するという本物の映像にこだわった姿勢は高く評価されている。

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■主演男優賞
ティモシー・シャラメ『君の名前で僕を呼んで』...HR②、RS②、C②、IW② 《対抗》
ダニエル・デイ=ルイス『ファントム・スレッド』...HR④、C③、IW③
ダニエル・カルーヤ『ゲット・アウト』...HR③、C④、IW④
ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』...HR①、RS①、C①、IW① 《本命》
デンゼル・ワシントン『Roman J. Israel, Esq.(原題)』...HR⑤、C⑤、IW⑤

ゴールデン・グローブ賞:ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』/ジェームズ・フランコ『The Disaster Artist(原題)』
英国アカデミー賞(BAFTA):ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
俳優組合協会賞(SAG賞):ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

賞レースを総なめにしてきたと言えるゲイリー・オールドマンが大本命。ティモシー・シャラメが追い上げてきたが、22歳の彼がいきなり貰う可能性は低い。大穴は、すでに3度同賞を受賞しているダニエル・デイ=ルイス。『リンカーン』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の時ほどのインパクトではないが、本人が俳優業から身を引く意向を示していることが投票を後押しする可能性はあると、Colliderは伝えている。

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■主演女優賞
サリー・ホーキンス『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR⑤、RS②、C③、IW② 《対抗》
フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』...HR①、RS①、C①、IW① 《本命》
マーゴット・ロビー『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』...HR②、C⑤、IW③
シアーシャ・ローナン『レディ・バード』...HR③、C②、IW④
メリル・ストリープ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』...HR④、C④、IW⑤

ゴールデン・グローブ賞:フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』/シアーシャ・ローナン『レディ・バード』
英国アカデミー賞(BAFTA):フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』
俳優組合協会賞(SAG賞):フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』

特に熾烈な争いが展開しているのがこの部門。性犯罪の犠牲になった娘のために立ち上がる母親という構図が今のハリウッドから支持されやすいこともあり、フランシス・マクドーマンドが21年前の『ファーゴ』に続いて2度目の受賞を果たす可能性は高いように見える。しかし、最多ノミネートの『シェイプ・オブ・ウォーター』がその勢いでサリー・ホーキンスも獲得する確率は十分ある。大穴はシアーシャ・ローナン。ゴールデン・グローブ賞を獲得しており、23歳で3度目のアカデミー賞候補と着実に成長を見せる彼女がついに栄冠を手にするか。

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■助演男優賞
ウィレム・デフォー『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』...HR②、RS②、IW② 《対抗》
ウディ・ハレルソン『スリー・ビルボード』...HR⑤、IW③
リチャード・ジェンキンス『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR③、IW④
クリストファー・プラマー『ゲティ家の身代金』...HR④、IW⑤
サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』...HR①、RS①、IW① 《本命》

ゴールデン・グローブ賞:サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』
英国アカデミー賞(BAFTA):サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』
俳優組合協会賞(SAG賞):サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』

本命はサム・ロックウェル。これが初ノミネートとなるが、これまでにもノミネートに値する演技を披露しており、場をさらうほど力強いパフォーマンスを見せた本作で満を持しての受賞は堅いと見られている。対抗は今回が3度目と、ノミネートの数では一歩上を行っているウィレム・デフォー。

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■助演女優賞
メアリー・J・ブライジ『マッドバウンド 哀しき友情』...HR⑤、IW④
アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』...HR①、RS①、IW① 《本命》
レスリー・マンヴィル『ファントム・スレッド』...HR③、IW⑤
ローリー・メトカーフ『レディ・バード』...HR②、RS②、IW② 《対抗》
オクタヴィア・スペンサー『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR④、IW③

ゴールデン・グローブ賞:アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
英国アカデミー賞(BAFTA):アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
俳優組合協会賞(SAG賞):アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

ともに主人公の母親という役柄を演じた、アリソン・ジャネイとローリー・メトカーフの一騎打ち。この二人は、ドラマでの活躍によりエミー賞やゴールデン・グローブ賞を賑わせてきた末に今回ようやくアカデミー賞初ノミネートを手にしたという経緯も被るものがあるが、ここまでの賞レースの結果を見る限りではアリソンが有利か。

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■脚本賞
エミリー・V・ゴードン&クメイル・ナンジアニ『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』...HR⑤、IW⑤
ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』...HR①、RS①、IW① 《本命》
グレタ・ガーウィグ『レディ・バード』...HR②、RS②、IW② 《対抗》
ギレルモ・デル・トロ&ヴァネッサ・テイラー『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR④、IW③
マーティン・マクドナー『スリー・ビルボード』...HR③、IW④

ゴールデン・グローブ賞:マーティン・マクドナー『スリー・ビルボード』
英国アカデミー賞(BAFTA):マーティン・マクドナー『スリー・ビルボード』
脚本家組合協会賞(WGA賞):ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』

本命は『ゲット・アウト』。ゴールデン・グローブ賞と英国アカデミー賞は『スリー・ビルボード』が受賞したが、『ゲット・アウト』は脚本家組合協会賞を獲得した通り同業者から高く評価されている。とはいえ、ホラーはアカデミー賞では概してウケが良くないのが懸念材料。また、監督賞にノミネートされた史上5人目の女性となったグレタ・ガーウィグがこのカテゴリーで栄冠を手にする可能性も否定できない。

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■脚色賞
ジェームズ・アイヴォリー『君の名前で僕を呼んで』...HR①、RS①、IW① 《本命》
スコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー『The Disaster Artist(原題)』...HR③、IW⑤
スコット・フランク、ジェームズ・マンゴールド、マイケル・グリーン『LOGAN/ローガン』...HR⑤、IW③
アーロン・ソーキン『モリーズ・ゲーム』...HR②、IW④
ヴァージル・ウィリアムズ&ディー・リース『マッドバウンド 哀しき友情』...HR④、RS②、IW② 《対抗》

英国アカデミー賞(BAFTA):ジェームズ・アイヴォリー『君の名前で僕を呼んで』
脚本家組合協会賞(WGA賞):ジェームズ・アイヴォリー『君の名前で僕を呼んで』

アメコミ作品である『LOGAN/ローガン』がこのカテゴリーに入っているのは快挙だが、本命は『君の名前で僕を呼んで』。これまで『眺めのいい部屋』などで3度監督賞にノミネートされたベテランのジェームズ・アイヴォリーが原作を見事に脚色しており、ラストにあるスピーチはまさに素晴らしいと、Rolling Stoneは指摘する。対抗は『マッドバウンド 哀しき友情』。人気の犯罪捜査ドラマ『クリミナル・マインド』で活躍するヴァージル・ウィリアムズとともに執筆した監督のディー・リースは、同カテゴリーでノミネートされた初のアフリカ系アメリカ人女性となる。

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■編集賞
『ベイビー・ドライバー』...HR③、IW② 《対抗》
『ダンケルク』...HR①、IW① 《本命》
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』...HR④、IW⑤
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR②、IW③
『スリー・ビルボード』...HR⑤、IW④

英国アカデミー賞(BAFTA):『ベイビー・ドライバー』

陸・海・空で展開する闘いを同時進行させる形で描いた『ダンケルク』が最有力。『ダークナイト』などでもクリストファー・ノーラン監督と組んでいたリー・スミスにとっては3度目のノミネートとなる。『ベイビー・ドライバー』は音響編集賞・録音賞も含めて3部門ノミネートとキレの良さが評価されているが、候補者の実績としては前者に一日の長があるか。

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■撮影賞
『ブレードランナー 2049』...HR②、IW① 《本命》
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』...HR⑤、IW③
『ダンケルク』...HR①、IW② 《対抗》
『マッドバウンド 哀しき友情』...HR④、RS②、IW⑤
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR③、RS①、IW④

英国アカデミー賞(BAFTA):『ブレードランナー 2049』

最大の注目は、これが実に14度目のノミネートながらいまだに受賞経験のないロジャー・ディーキンス(『ブレードランナー 2049』)の初受賞がなるかどうか。戦闘機にIMAXカメラを付けて撮影した『ダンケルク』が対抗だが、ほかの部門ほど明らかな優劣はない。なお、『マッドバウンド 哀しき友情』のレイチェル・モリソンは女性として初めて同部門の候補入りを果たした。

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■美術賞
『美女と野獣』...HR④、IW⑤
『ブレードランナー 2049』...HR③、IW② 《対抗》
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』...HR⑤、IW③
『ダンケルク』...HR②、IW④
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR①、IW① 《本命》

英国アカデミー賞(BAFTA):『シェイプ・オブ・ウォーター』

キャラクターの心情、人となりに合わせて美術の色や素材を統一させていったという『シェイプ・オブ・ウォーター』が本命。対抗は、前作に続いて新たな世界を創造したと話題の『ブレードランナー 2049』。

■衣裳デザイン賞
『美女と野獣』...HR②、IW⑤
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』...HR④、IW③
『ファントム・スレッド』...HR①、IW① 《本命》
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR③、IW② 《対抗》
『Victoria & Abdul(原題)』...HR⑤、IW④

英国アカデミー賞(BAFTA):『ファントム・スレッド』

本命視されているのは、ファッション業界を舞台にしている『ファントム・スレッド』。マーク・ブリッジスが『アーティスト』に続いて2度目の受賞となるか。『シェイプ・オブ・ウォーター』のルイス・セケイラはこれが初ノミネートだが、衣装デザイン協会の賞を受賞している。

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■メイクアップ&ヘアスタイリング賞
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』...HR①、IW① 《本命》
『Victoria & Abdul(原題)』...HR③、IW②
『Wonder(原題)』...HR②、IW③ 《対抗》

英国アカデミー賞(BAFTA):『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

CGIを使わずにメイクだけでゲイリー・オールドマンを英国首相に変貌させた『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』が大本命。これが3度目のノミネートとなる辻一弘をはじめとしたチームは、メイクアップ・アーティスト&ヘアスタイリスト組合賞も受賞している。

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■視覚効果賞
『ブレードランナー 2049』...HR②、IW② 《対抗》
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』...HR④、IW④
『キングコング:髑髏島の巨神』...HR⑤、IW⑤
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』...HR③、IW③
『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』...HR①、IW① 《本命》

英国アカデミー賞(BAFTA):『ブレードランナー 2049』

最有力は、大迫力の戦闘シーンが展開する『猿の惑星』シリーズ最終章。撮影、美術でもノミネートされているように視覚的に高く評価されている『ブレードランナー 2049』が英国アカデミー賞を受賞と、追い上げを見せている。

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■音響編集賞
『ベイビー・ドライバー』...HR④、IW⑤
『ブレードランナー 2049』...HR③、IW③
『ダンケルク』...HR①、IW① 《本命》
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR②、IW② 《対抗》
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』...HR⑤、IW④

戦闘の現場にいるかのような臨場感が評判の『ダンケルク』が本命。対抗は、そうした激しい音響とは別の意味で深い印象を残した『シェイプ・オブ・ウォーター』。

■録音賞
『ベイビー・ドライバー』...HR④、IW②
『ブレードランナー 2049』...HR③、IW④
『ダンケルク』...HR②、IW① 《本命》
『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR①、IW③ 《対抗》
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』...HR⑤、IW⑤

英国アカデミー賞(BAFTA):『ダンケルク』

音響編集賞に続いて、こちらも『ダンケルク』と『シェイプ・オブ・ウォーター』の争いになりそう。英国アカデミー賞を受賞したのは『ダンケルク』だが、それに続くことになるのか。

■作曲賞
ハンス・ジマー『ダンケルク』...HR②、IW④
ジョニー・グリーンウッド『ファントム・スレッド』...HR③、RS②、IW② 《対抗》
アレクサンドル・デスプラ『シェイプ・オブ・ウォーター』...HR①、RS①、IW① 《本命》
ジョン・ウィリアムズ『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』...HR④、IW③
カーター・バーウェル『スリー・ビルボード』...HR⑤、IW⑤

ゴールデン・グローブ賞:アレクサンドル・デスプラ『シェイプ・オブ・ウォーター』
英国アカデミー賞(BAFTA):アレクサンドル・デスプラ『シェイプ・オブ・ウォーター』

ここまでの賞レースを見ても、『シェイプ・オブ・ウォーター』のアレクサンドル・デスプラが『グランド・ブダペスト・ホテル』に続いて2度目の受賞を果たす可能性は高い。しかし、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』からずっとポール・トーマス・アンダーソン監督と組んでおり、ついに初のノミネートとなったレディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッド(『ファントム・スレッド』)を推す声も、「自分たちが選べるならグリーンウッドだ」というRolling Stoneをはじめ、決して少なくない。

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■歌曲賞
Mighty River『マッドバウンド 哀しき友情』...HR④、IW③
Mystery of Love『君の名前で僕を呼んで』...HR③、IW④
Remember Me『リメンバー・ミー』...HR⑤、IW① 《本命》
Stand Up for Something『マーシャル 法廷を変えた男』...HR①、IW⑤
This Is Me『グレイテスト・ショーマン』...HR②、IW② 《対抗》

ゴールデン・グローブ賞:This Is Me『グレイテスト・ショーマン』

この部門は伝統的にディズニー作品が強く、今回も同社(ピクサー)作品の『リメンバー・ミー』が本命視されている。グラミー賞受賞アーティストのコモンが手掛けた『マーシャル 法廷を変えた男』を推す声もあるが、より勢いがあるのは先日フィギュアでも曲が使用されて話題になった『グレイテスト・ショーマン』か。

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■外国語映画賞
『ナチュラルウーマン』(チリ)...HR②、IW① 《対抗》
『The Insult(英題)』(レバノン)...HR⑤、IW③
『ラブレス』(ロシア)...HR④、RS②、IW⑤
『心と体と』(ハンガリー)...HR③、IW④
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン)...HR①、RS①、IW② 《本命》

ゴールデン・グローブ賞:『女は二度決断する』(ドイツ)
英国アカデミー賞(BAFTA):『お嬢さん』(韓国)

ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞を受賞した作品がいずれもノミネートされていないこともあって予想に多少バラつきがあるが、本命は『ザ・スクエア 思いやりの聖域』。第70回カンヌ国際映画祭のパルムドールを筆頭にすでに20以上の賞を獲得し、4月からの日本公開も決まっている。対抗は、『父、帰る』のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督最新作の『ラブレス』。息子の失踪というテーマは、コメディの『ザ・スクエア』よりもアカデミー賞向き。

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■長編アニメーション映画賞
『ボス・ベイビー』...HR②、IW④ 《対抗》
『The Breadwinner(原題)』...HR④、IW②
『リメンバー・ミー』...HR①、IW① 《本命》
『Ferdinand(原題)』...HR③、IW⑤
『ゴッホ 最期の手紙』...HR⑤、IW③

ゴールデン・グローブ賞:『リメンバー・ミー』
英国アカデミー賞(BAFTA):『リメンバー・ミー』
製作者組合協会賞(PGA賞):『リメンバー・ミー』

歌曲賞同様、ディズニー作品が強いこの部門は今回も同社(ピクサー)の『リメンバー・ミー』が手にすることになるはず。アニメ界のアカデミー賞と言われるアニー賞で最多11冠を達成した勢いは止まらなさそうだ。

■短編アニメーション映画賞
『Dear Basketball(原題)』...HR①、IW② 《本命》
『Garden Party(原題)』...HR③、IW⑤
『LOU』...HR②、IW④
『Negative Space(原題)』...HR⑤、IW③
『Revolting Rhymes(原題)』...HR④、IW① 《対抗》

英国アカデミー賞(BAFTA):『Poles Apart(原題)』

アニー賞を受賞した『Dear Basketball』が本命。コービー・ブライアントが2015年に引退表明で発表したメッセージを元にした同作は、コービー自身が声を当て、あのジョン・ウィリアムズが曲を寄せるという豪華な作り。

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■長編ドキュメンタリー映画賞
『Abacus: Small Enough to Jail(原題)』...HR⑤、IW⑤
『Faces Places(英題)』...HR④、RS①、IW① 《本命》
『Icarus(原題)』...HR①、IW③
『Last Men in Aleppo(英題)』...HR③、RS②、IW② 《対抗》
『Strong Island(原題)』...HR②、IW④

英国アカデミー賞(BAFTA):『I Am Not Your Negro(原題)』

本命は、日本でも9月に公開されることが決定している『Faces Places』。"ヌーヴェル・バーグの祖母"と呼ばれる89歳のアニエス・ヴァルダがフランス人アーティストとともに、フランスの田舎を旅しながら作品を一緒に作るロードムービースタイルのドキュメンタリー。カンヌ国際映画祭の最優秀ドキュメンタリー賞ほか、すでに20以上の賞を受賞している。対抗はシリア北部の戦闘を描く『Last Men in Aleppo』。ただし、トランプ大統領が発した入国禁止令により同作のプロデューサーたちが入国できず授賞式を欠席することが、現政権への抗議の意味を込めて票を集めるかもしれないと、Rolling Stoneは指摘している。

■短編ドキュメンタリー映画賞
『Edith+Eddie(原題)』...HR①、IW④ 《対抗》
『Heaven is a Traffic Jam on the 405(原題)』...HR④、IW②
『Heroin(e)(原題)』...HR②、IW① 《本命》
『Knife Skills(原題)』...HR③、IW③
『Traffic Stop(原題)』...HR⑤、IW⑤

アメリカ国内でも特にドラッグ問題が深刻なウエストバージニア州のある町を舞台に、この問題と向き合う女性たちを描いた『Heroin(e)』が本命。95歳を超えた男女の異人種間の結婚を描いた『Edith+Eddie』が対抗となる模様。

■短編実写映画賞
『DeKalb Elementary(原題)』...HR⑤、IW②
『The Eleven O"Clock(原題)』...HR②、IW③ 《対抗》
『My Nephew Emmett(原題)』...HR④、IW④
『The Silent Child(原題)』...HR③、IW① 《本命》
『Watu Wote/All of Us(原題)』...HR①、IW⑤

英国アカデミー賞(BAFTA):『Cowboy Dave(原題)』

本命は、4歳の耳の聞こえない少女が初めてコミュニケーションの方法を得るまでを描いた『The Silent Child』。対抗は、アトランタで起きた銃乱射未遂事件を元にした『DeKalb Elementary』を抑えて、精神科医に通う思い込みの激しい男が、自らが精神科医だと思い込むコメディ『The Eleven O"Clock』と見られている。

第90回アカデミー賞授賞式は、日本ではWOWOWプライムにて3月5日(月)8:30より二ヵ国語版が生中継。そして同日21:00からは字幕版がオンエアとなる。

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Photo:
『シェイプ・オブ・ウォーター』
(C)2017 Twentieth Century Fox
『ダンケルク』
©2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
『君の名前で僕を呼んで』
©Frenesy, La Cinefacture
『スリー・ビルボード』
(C)2017 Twentieth Century Fox
ギレルモ・デル・トロ監督
(C)2017 Twentieth Century Fox
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
(C) Everett Collection/amanaimages
サム・ロックウェル(『スリー・ビルボード』)
(C) Everett Collection/amanaimages
アリソン・ジャネイ(『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』)
© 2017 AI Film Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『ゲット・アウト』
© 2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved
『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
『リメンバー・ミー』
(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
(C)2018 Disney. All Rights Reserved.
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
© 2017 Plattform Produktion AB / Société Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS
『Faces Places』
©Agnès Varda-JR-Ciné-Tamaris, Social Animals 2016