出演は半年前に予言されていた!?『ウエストワールド』シーズン2 真田広之(ムサシ役)直撃インタビュー

(※本記事は『ウエストワールド』シーズン2のネタばれを含みますのでご注意ください)

8月6日(月)からBS10 スターチャンネルにてから二ヵ国語版が日本初放送となる人気ドラマ『ウエストワールド』シーズン2。『ジュラシック・パーク』や『ライジング・サン』の原作者として知られるマイケル・クライトンが監督・脚本を手掛けた1973年の同名映画を、J・J・エイブラムス(製作総指揮)、ジョナサン・ノーラン(企画・製作総指揮・監督・脚本)、リサ・ジョイ(製作総指揮・脚本)がドラマ化した本作は、人間そっくりなホスト(アンドロイド)たちの覚醒を描いている。

そのシーズン2には真田広之、菊地凛子、TAO、祐真キキといった日本人キャストが多数出演する新たなテーマパーク、"ショーグン・ワールド"が登場することでも話題を呼んでいるが、今回は、その"ショーグン・ワールド"に登場するホストの一人であるムサシを演じる真田を直撃! 出演後の反響や自身の役柄、出演シーンの見どころなどを語ってもらった。

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――第70回エミー賞で21ノミネートを果たすなど、さらに盛り上がりを見せるシーズン2ですが、世界的に大人気な作品に出演していかがでしたか?

シーズン1を見ていて大ファンだったので、オファーを受けた時には感慨深いものがありました。シーズン2もエミー賞に21ノミネートされている理由というのは、脚本の素晴らしさや映像のクオリティの高さもありますし、予算もかなり高い作品ですが、それ以上に現場に出た時に感じたスタッフの志の高さにあると思いますね。優秀な人材が本当にチームワーク良く作っていて、その空気に触れた時に、"これがこういう面白い作品を生み出したんだな"と現場で実感できたんです。どうやってあのクオリティの高さを生み出しているのか、それを垣間見ることができたのは本当に嬉しいことでした。俳優としても、もともと好きだった作品に参加できたという喜びは日々現場で実感していましたね。

――"ショーグン・ワールド"のエピソード放送後の反響は?

今、特にHBO®のドラマシリーズというのは注目度も高いですし、クオリティも信頼があるので、ある程度の反響は予想していました。ただ、その予想以上に反響が大きかったですね。放送後、いつになくメールやメッセージがたくさん届きました。特に業界内の視聴率の高さというのを実感しましたね。以前に仕事をしたプロデューサーや、しばらく連絡が途絶えていた業界内の人からもメッセージが来たんです。それこそ、ヨーロッパや日本など国内外問わずですよ。プレッシャーもありましたが、本当に良い形で次へつながってくれると良いなと思いますね。

 

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――出演されたエピソードをご覧になった感想は?

アメリカでリアルタイムで放送を見たんですが、現場で感じていたことにプラスして編集や音楽に至るまで非常に良く『ウエストワールド』の世界観と融合させてくれているなと感じました。そしてまた、キーになっているシーズン1との関わり方や、私が演じたムサシが(シーズン1から出演しているキャラクターの)ヘクターと鏡のような対の関係になっているんです。なので、ヘクターが登場するシーズン1と同じようなシーンが出てくるんですが、そこを見事に編集で一体化させてくれていたのは嬉しかったですね。シーズン1から見ていた登場人物たちと一緒に仕事をしながら、そういう形でコラボができているというのを完成品として見た時にあらためて、参加できたことの充実感というものが沸いてきました。

――演じられた"ムサシ"は史実に登場した宮本武蔵ではなく、西洋の方が作ったテーマパークの中のサムライというユニークな設定ですが、このキャラクターの魅力をどこに感じましたか?

テーマパークの中のアンドロイドのサムライですよね。宮本武蔵とは全く違って、将軍に仕えて護衛役をやっていた侍が浪人になった設定です。それで、今や金のためなら平気で人も殺してしまうが、反面、何か頼まれると断れない。どこか昔、サムライだった時の、心の火がまだ残っていると言うのでしょうか。それをドラマの中で刺激されつつ、ストイックだけども熱い思いが根底にあるという微妙なところに、ムサシというキャラクターの面白さを感じましたね。ヘクターとの対になっている部分も楽しみましたけど、やはり剣豪という設定はテーマパークならではのショータイムとして見せなきゃいけない要素だと思うんです。当然、このテーマパークに訪れるお客さんはそれを見たいと願っていますしね。そこの部分で、レギュラーの登場人物も含めて自分も助かるために刀一つで窮地を脱していき、そしてメンバーを救っていくという。その辺を託してもらったというのも、やりがいのあるところでしたね。

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――本作のスタッフは"ショーグン・ワールド"を作り上げるにあたって、黒澤明監督の世界観をかなりリスペクトしているそうですね。その点からも、頼まれると断れない浪人というのは『七人の侍』を彷彿とさせますね。

最初にオファーを頂いた時に脚本家と電話で話したのですが、黒澤映画を含めた日本の昔の時代劇に対する尊敬の念として、そのオマージュとして作りたいんだという思いをその時に強く感じました。だから、それにお応えする役を受けられるのは喜びでしたね。

――出演されたシーンの中でお気に入りや、ぜひ注目してほしいのは?

やはり、シーズン1とオーバーラップしていくシーンに関しては非常に気にいっています。現場でも、カメラマンとアングルからタイミングまで一緒に面白がって作っていたんですよ(笑) 僕も撮影直前にシーズン1を見直して、視聴者がはっきりと気づけるように演じました。しかも、シーズン1と同じローリング・ストーンズの「黒くぬれ!(Paint It, Black)」の曲を、音楽担当のラミン・ジャヴァディがサムライ・バージョンに仕上げてくれているんですよ。その音楽とシーンのマッチングは最高でしたね。あとは残虐性も含めたエンターテイメントを"ショーグン・ワールド"は求められているので、ニンジャとの戦い、サムライ同士の戦いは注目シーンです。ムサシという名前に引っかけて二刀流もアイデアとして盛り込んでいます。殺陣についてもリアルさだけを追求するのではなく、このテーマパークとしてのサービス精神をどこまで盛り込めるかが作りがいのあるところだったので、その2つのファイトシーンもしっかり見て頂ければと思います。

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――二刀流のシーンは真田さんのアイデアだったんですね。

そうなんですよ。第5話でのニンジャとの戦いの時は相手の刀を奪って一瞬だけ二刀流になるんですが、それはその後の予告編的なものなんです。そして、第6話では自分は一刀しか持ってないんですが相手の小太刀を奪って、やっぱり最後は二刀で終わるというね(笑) 撮影の合間にアイデアを出し合って一緒に作りました。撮影当日は自分たちだけで作っていますから、すっかり手も入っていますし、もうアングルを変え、サイズを変え、スピードを変え、一日中撮りまくっていましたね(笑)

――菊地凛子さん、TAOさん、祐真キキさんら数多くの日本人キャストが出演するだけでなく、ほぼ全編を日本語で演技するという点も見どころですが、菊地さんたちとの共演や撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

凛子ちゃんは『47RONIN』でご一緒して、TAOさんは『ウルヴァリン:SAMURAI』でご一緒していたので、最初から気心も知れていましたから準備段階からいろいろな話をしました。キキちゃんも『HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン』や、アメリカのいろんな番組に出演されていてアメリカでの撮影に慣れていたので、やりやすくて良いチームワークで進められましたね。脚本家も常に現場にいて状況次第でどんどんセリフを変えたりするので、その都度、日本語だとこういう言い回しがいいのではないかとか、動きの確認だとか、それぞれが持ち場をしっかり守りながら和気あいあいという非常に楽しい現場でした。

 

――菊地さんとのインタビューで伺ったのですが、真田さんがメイヴ役のタンディ・ニュートンの日本語セリフの演技を手伝われていたそうですね。真田さんについて、タンディは「素敵で優しくて最高だわ。しかもハンサム」とおっしゃっていたそうです。

そうですか(笑) タンディとの共演は充実していました。実はこの作品に関わるきっかけとなったのも、ある意味、彼女だったりするんですよ。僕が彼女の大ファンだったということもあり、この話がスタートする半年前くらいだったかと思いますが、偶然、彼女に会う機会があったんです。その時に、「シーズン1をずっと見ていたけど、素晴らしい作品だね」と話したら、彼女から「本当に良いチームだから、あなたも絶対に合流するべきよ」と言われたんです。それで、「まあ、現場で会えたらね」というような話でその時は別れたんですよ。そうしたら、その後にこの話が来てオファーも頂いて、半年後に本当に現場でお会いできることになったんです(笑) そんな経緯もあって、普通なら日本語を教えるというような、でしゃばったことはしにくいんですけど、彼女が日本語のセリフにプレッシャーを感じていたので、「できるだけ助けるよ」と話したんです。僕も母国語ではない現場で語学を学ぶことの大変さや、現場でセリフが変わることへの対応の難しさが分かっているので、経験者として、そして俳優という立場として伝えられることは伝えて、とにかくやれることはしてあげようという思いでした。

――真田さんは出番がない日もタンディのために現場で待機していたそうですね。

そうなんです。自分の出番がない日も彼女のために現場に行って日本語のアドバイスをしていました。アフレコの時も彼女がご指名で来てほしいというので、スタジオに行ってつきっきりで繰り返しレコーディングをしていましたね。それで、彼女の語学に対する才能と貪欲さと努力というのを目の当たりにしたことで、いちファンとしての感情から尊敬へと変化し、共演者として信頼と友情を築けました。こちらとしても本当に助けがいがありましたし、それを通じて友情が芽生えたというのは素晴らしい財産になったと思います。本当に手放しで尊敬と愛情をお返ししたいですね。

――タンディが菊地さんに、「真田さんが出番のない時も現場にいてくれて、すごく安心できた」と言っていたそうです。

テイクごとにノートをチェックしたり、ブロックサインも送ったり、そこは裏方に徹して現場にいました。時にはカンペを持ちながらやっていましたよ(笑) アメリカの録音助手の方は日本語が分からないので、ローマ字で日本語のセリフを書いても今どこまでセリフが流れているのか分からないですからね。現場でそれができるのは僕しかいなかったんです。なので、どこでページをめくればいいか、タンディの目線に入ってずっとカンペ持ちをやっていました。すると監督が「そんなことする役者がいるのか(笑)」と言って、面白がって僕のことを写真で撮っていましたよ(笑)

 

――"ショーグン・ワールド"のハイクオリティなセットは取り壊されずにまだ残されているそうですね。そうすると"ショーグン・ワールド"再登場の可能性があるかもしれませんが、あの地にまた戻りたいという思いはおありですか?

僕もそのことは聞きました。"ショーグン・ワールド"のセットはずっと残していくと言っていました。もちろんチャンスがあるならば、また参加したいという思いは根底にあります。殺されてもロボットですから生き返れますし、とりあえず殺されずに終わったので(笑) もしチャンスがあるのであれば"ショーグン・ワールド"はもちろんのこと、これからさらにいろいろと登場してくるであろう様々なワールドにも関わってみたいですね。メイヴたちが"ショーグン・ワールド"に来ることができたのだから、ムサシもどのワールドにも行くことができるはずですよね。なので、どの時代のどこの国かも分からないですが、そこに元サムライの男が飛び込んでいって、異文化同士でぶつかり合って起こる化学反応みたいなものを自分自身でも楽しんでみたいという思いがあります。それを実現できるならば視聴者の方々にぜひお見せして、楽しんで頂きたいですね。

 

――最後に『ウエストワールド』ファンや真田さんのファンヘ、メッセージをお願いいたします。

"ウエストワールド"と同じテーマパークの中に作られた"ショーグン・ワールド"。最高峰のスタッフ、キャストとのコラボで独特な世界観が誕生したと思います。見てくださる皆さんも、このテーマパークを訪れたゲストという気分で楽しんで頂けたらと思います。ぜひご覧になってください。

(取材・文/豹坂@櫻井宏充)

 

『ウエストワールド』シーズン2は、BS10 スターチャンネルにて二ヵ国語版が8月6日(月)より毎週月曜22:00ほか日本初放送。
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『ウエストワールド』シーズン2
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『ウエストワールド<ファースト・シーズン>』
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