まさに夢が叶った瞬間!『ウエストワールド』真田広之インタビュー

(※本記事は『ウエストワールド』シーズン2のネタばれを含みますのでご注意ください)

BS10 スターチャンネルにて放送中の人気ドラマ『ウエストワールド』シーズン2。『ジュラシック・パーク』や『ライジング・サン』の原作者として知られるマイケル・クライトンが監督・脚本を手掛けた1973年の同名映画を、ジョナサン・ノーラン、J・J・エイブラムスがドラマ化した本作は、人間そっくりなホスト(アンドロイド)たちの覚醒を描いている。

そのシーズン2に出演する真田広之のインタビューをご紹介しよう。彼が演じるのは、ムサシと呼ばれる剣豪で、ホストの一人、お尋ね者のならず者であるヘクター(ロドリゴ・サントロ)のドッペルゲンガーだ。そんなヘクターとの特別な関係や、ムサシが登場する新たなテーマパーク、"ショーグン・ワールド"の魅力、自身の信条などについて語ってくれている。

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――本作出演の経緯は?

シーズン1の大ファンだったんです。それにタンディ(・ニュートン/メイヴ役)のファンでもあり、アンソニー(・ホプキンス/フォード役)とは以前(2009年の映画『最終目的地』)共演したこともありました。そのシーズン1のラストで、サムライの姿と「SW」というイニシャルを目にした時は、"あれは「サムライ・ワールド」という意味なのか? シーズン2に日本人の役があるのか?"と考えて、その想像が当たっているように思わず祈りましたね。だから、実際に役をオファーされた時はとても興奮しました。まさに夢が叶った瞬間だったので。"ショーグン・ワールド"や自分の役については電話でジョナサン(・ノーラン/企画・製作総指揮)や脚本家たちと話して、彼らが黒澤映画を含めて日本の文化に敬意を抱いていることが感じられたんです。彼らがこの"ショーグン・ワールド"はオマージュだと言うのを聞いて、"それなら絶対に出演しないと"と思って「イエス」と即答しました。

 

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――『ウエストワールド』シーズン1のどんな点に惹かれたのですか?

素晴らしいアイデアですね。すっかり作品に魅了されたので、すぐさまユル・ブリンナーが出演している1970年代のオリジナル映画を見てみたんですよ。本作は、素晴らしいスタッフとキャスト、そして最新のテクノロジーによって新しいバージョンを作り上げています。その創造性があまりに高レベルなので、衝撃を受けました。

――あなたが演じるのは、"ショーグン・ワールド"の浪人、ムサシですよね。この役について説明してもらえますか?

彼はかつて将軍に仕えていましたが、今は主人を持たないサムライ、つまり浪人なんです。ムサシは剣豪で、『ウエストワールド』の有名なホストの一人、ヘクターとは特別な関係にあります。彼らはまるで鏡に映った一人の人間なんです。単にヘクターをコピーするのではなく、違う部分にうまく折り合いをつけて、ムサシというキャラクターを作り上げるのはとても興味深かったですね。僕らは最初戦うけど、その後でどこかへ行くんです。すごく興味をそそられました。

 

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――ムサシとヘクターはお互いの映し鏡なわけですが、ヘクター役のロドリゴ・サントロとどんな会話を交わしたのですか?

撮影現場で、どうやってお互いのケミストリーを生み出すかについていろいろ話し合いました。彼のことは"相棒"と呼んでいいかもしれませんね(笑) 茶屋でのシーンを撮る前にシーズン1を見直しておきました。シーズン1でヘクターが保安官を殺してホストと武器を奪うシーンがありますが、僕はその時の彼と同じ動きをしたんです。完璧にシンクロさせるため、シーズン1を注意深く見直しました。有り難いことに、そのシーンには同じ曲(ラミン・ジャヴァディ編曲による「Paint It Black」)を使ってもらえたんですよ。

一人の俳優としても、シーズン1の大ファンとしても、撮影は本当に楽しかったですね。僕と同じようにシーズン1を気に入っていた視聴者の皆さんにも楽しんでもらえると思います。とてもダイナミックで、視聴者へのサービス満載な作品ですから。そんな作品に関わることができて嬉しいです。

 

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――"ショーグン・ワールド"のセットを初めて見た時の印象は?

驚きました。スタッフは江戸時代のことを調べ上げていて、見事にその時代の町並みや茶屋を再現していましたね。建物の内部も忠実に再現されていて、畳が敷かれているし、階段は(現代と違って折り返しがなく)一直線になっていました。実に素晴らしく、かつ美しかったですね。桜の樹もありましたし。その桜の樹の下で殺陣のシーンをやれたのも嬉しかったですね。"ここはどこだ? 日本にいるのか?"という心境でした(笑) スタッフは素晴らしい仕事をしたと思います。

――その桜の樹の下でのシーン、将軍が差し向けた刺客たちと闘った時のことについてもう少し話してもらえますか?

殺陣のシーンはすべて、スタントコーディネーターと振付師と一緒に作り上げました。僕自身のアイデアもいくつか入っています。サムライ映画の経験があるので。僕らはサムライらしく、かつ見ごたえのある闘いにしたかったんです。戦闘シーンはこのパークを訪れるゲストにとって"ショータイム"を意味するわけですが、僕らはそんなショータイムと本物の闘いをミックスした、視聴者に楽しんでもらえるものを作ろうとしました。その二つのバランスが非常に取れたものにしたかったんです。

 

――メイヴ役のタンディ・ニュートンに話を聞いた時、あなたが日本語の台詞を覚えるのに手を貸してくれたと話していました。

僕はもう長いこと、タンディの大ファンなので、彼女と一緒のシーンが多くてワクワクしました。主な共演者がタンディだと言えるくらい、ムサシとメイヴは大きなつながりを持っているんです。タンディとはそれまでに何度か会っていたから、すぐに関係を築くことができました。今回、彼女は日本語の台詞があったわけですが、日本語をまったく知らない状態で台詞を言うのは難しいので、セットで毎日、日本語を覚えるのを手伝ったんです。あらゆるテイクとリハーサルでメモを取って、彼女に教えました。タンディは外国語を覚えるセンスがありますよ。耳がすごくいいんです。時々、ネイティブそっくりに聞こえるくらいでビックリしました!(笑)

毎日少しずつ、彼女の日本語は上達していきました。僕は自分の出番がない日でも撮影現場に行って、彼女の台詞がネイティブのように聞こえるまで何度も何度も練習に付き合っていました。最終的に、彼女はとてもうまく話せるようになりました。明瞭で、しかもキャラクターに適したしゃべり方でね。彼女のことを心から尊敬します。一緒に仕事をする前はファンでしたが、今では大きな尊敬の念を抱いています。彼女は素晴らしい才能を持ち合わせており、さらにとても努力家です。

 

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――ここ数年、あなたはいろいろなプロジェクトに参加していますよね。いつも仕事をして、新しい役に取り組むというのがあなたのモットーなのでしょうか?

幸運にも、僕はこの世界でサバイブしてきました。12年前にアメリカに移る前は、想像もしていなかったほどに。有り難いことに、素晴らしい監督や俳優と組んで、大きなフランチャイズ作品にも優れたインディペンデント作品にも出演することができています。子役出身の僕は、ウエスタン映画を見て育ちました。そして、世界の優れたクリエイターたちと働くことを夢見るようになっていったんです。今は一歩ずつその夢を叶えているところですよ。素晴らしいスタッフ、キャストと仕事ができたおかげでここまで生き延びることができました。

新しいプロジェクトを選ぶ時にはいつもこう考えているんです、"これは日本生まれの俳優にふさわしい役か"とね。毎回、それが判断基準なんです。だから、時には文化的な違いや脚本にある誤解によりその役を断念しなければならないこともあります。仕事を受ける前には必ず、脚本や役についてクリエイターや監督と話すようにしています。なぜなら、日本生まれの俳優である自分にとって重要なことだからです。有名になることやお金を稼ぐことは大切ではありません。その日本人のキャラクターを演じることが日本人俳優たちの未来にとっていいことなのか、それこそが僕の判断基準なんです。もちろん、日本に戻ってお金を稼ぐこともできますし、その方が簡単です。だけど僕は自分のため、そして次の世代のための未来を作りたいんです。僕にとっては、仕事を受けるかどうかが最も重要であり難しいことであって、セットで演じるのは単なる趣味なんですよ。

 

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――やってみたいのにまだ挑戦したことがないキャラクターやプロジェクトはありますか?

日本ではほぼすべてのジャンルをやりましたね。でも、アメリカなどの海外になると、まだやっていないのは、コメディ、ラブストーリー、ミュージカルと...

――では次にやる作品はミュージカルのロマンティックコメディですね。

全部一度にですか?(笑) 脚本家かプロデューサーの誰かがこの記事を読んでそういう作品をオファーしてくれるかもしれませんね。

――子どもの頃から海外で働くことを夢見ていたそうですが、実際にあなたがこれまでにやり遂げてきたことを当時のあなたが聞いたとしたら、どんな反応を示すと思われますか?

(しばらく考えてから)おそらく「嘘だ。信じられない」と言うでしょうね。でも子役時代の僕はこういう希望を抱いていたんです。"演技を続けていれば、いつか何でもできるようになって、世界でトップクラスの監督たちとも仕事ができる"とね。10歳から13歳までそう考えていました。でも何が起きるのかは全然わかりませんでした。だから毎日懸命にトレーニングしたんです。もし当時の自分が夢は叶うことを知っていたら、多分ズルをするでしょうね(笑) "夢が叶うんなら、練習しなくていいや!"って。時として我々は先のことがわからないからこそ、懸命に努力するのかもしれません。

――そうやってあなたは未来を作ってきたわけですね。

そうですね。今も新たな夢を追いかけているところですよ。完璧なんて有り得ないので、生涯勉強あるのみです。

 

『ウエストワールド』シーズン2は、BS10 スターチャンネルにて放送中。
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Photo:『ウエストワールド』シーズン2
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