もっと血みどろになりたかった!?『ウエストワールド』シーズン2 菊地凛子(アカネ役)直撃インタビュー

(※本記事は『ウエストワールド』シーズン2のネタばれを含みますのでご注意ください)

BS10 スターチャンネルにて放送中で、8月6日(月)から二ヵ国語版がスタートする人気ドラマ『ウエストワールド』シーズン2。『ジュラシック・パーク』や『ライジング・サン』の原作者として知られるマイケル・クライトンが監督・脚本を手掛けた1973年の同名映画を、J・J・エイブラムス(製作総指揮)、ジョナサン・ノーラン(企画・製作総指揮・監督・脚本)、リサ・ジョイ(製作総指揮・脚本)がドラマ化した本作は、人間そっくりなホスト(アンドロイド)たちの覚醒を描いている。

そのシーズン2は、真田広之、菊地凛子、TAO、祐真キキといった日本人キャストが多数出演する新たなテーマパーク、"ショーグン・ワールド"が登場することでも話題を呼んでいるが、その"ショーグン・ワールド"に登場するホストの一人であるアカネを演じる菊地を直撃! 演じた役柄や共演者、アメリカでの撮影、出演シーンの見どころなどを語ってもらった。

 

――本作出演にはどのような経緯があったのでしょう?

約2ページのスクリプトのオーディションでした。3種類の内容の違うシーンを3回テープで送りました。もらったスクリプトのシーンにアカネとムサシが登場しているんですけど、実際に『ウエストワールド』シーズン2に出てくるシーンではなかったんですよね。実際の脚本はその前後のシーンが黒塗りになっているので、自分のシーンしか分からないようになってました。なので、撮影現場でもある意味オーディションをやっているような感じでしたね。

――世界中が注目している超大作のシーズン2に出演したご感想は?

アメリカのドラマはすごく大変だとアメリカの皆さんもおっしゃるんです。撮影のスピードも速く、脚本が上がってくるのも突然だったりするので。その中でも『ウエストワールド』はいろいろな場所で話が一気に進行していくので、クリエイティブなチームも混乱しながらもアイデアを出し合っていくんです。当初あったシーンがいきなりなくなったり、なんだか知らないキャラクターが出てきたりとかあるんですよ。それで、みんな混乱するんですけど、確実に結果を残そうとするタフな皆さんで、共通しておっしゃるのは「これはウエストワールドだから」という言葉なんですね。今回は瞬発力が必要で、その瞬発力でしか出せないような、自分でも思いもよらなかったことができたりするんです。そういうものを得られたのは面白かったですね。

――アカネというキャラクターをどう思われますか?

オーディションの時の情報としては、シーズン1から登場していたメイヴのドッペルゲンガーみたいなドッペルボットというキャラクターで、メイヴとキャラクターとしてシンクロしていて守るものがあるということでした。それに、メイヴは娼館をやっていて、アカネはお茶屋をやっているという設定で、建物のセットもシンクロしているという内容をいただいていたんです。私はシーズン1を見ていて特にメイヴが好きだったので、彼女の持っている要素をアカネも持っていて、それを演じられるというのはユニークなアイデアだと思いましたね。なかなか経験できないことですし、演じていて面白かったです。メイヴが言っている台詞を言える、嬉しさがありました。

 

――メイヴのドッペルボットでもあるというアカネに対して共感するものはありましたか?

守るべきものができた時の人間の気持ちの持っていき方というところにシンクロしました。アカネにとっては理由なく守らなければいけないというものが子どもでしたけど、それって自分たちにもあるんじゃないかなと。それは人のこだわりかもしれないし、男女間でもあると思いますし、もちろん親子間でもあると思うんですよ。そういう根底にある感情がメイヴとリンクしていたので演じていて面白く、自分も母親なので共通点はありました。

――メイヴ役のタンディ・ニュートンとの共演はいかがでしたか? タンディは日本語の台詞がたくさんあって演技が難しかったのではないでしょうか?

彼女は『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の撮影が終わってからすぐ入ってきたんですけど、実は体調を少し崩していたんですよ。日本語を練習していた姿は、自分が英語の台詞をトレーラーでもメイク室でも練習していたこともあって、一緒だなと感じたんです。タンディはすごい役者なのに、私とやっていることは同じだというのを感じて、最初から親近感が湧きました(笑) 過密スケジュールでも挑むタフさもあり、フレンドリーでもありました。特に同じ母親同士、同じキャラクターを演じるということで良い感じに助け合え、戦友のように思えましたね。

 

――アカネとメイヴはシンクロしたキャラクターですが、タンディと演技の相談をされたりは?

タンディは日本語の音の違いがよく分かっていて、非常に感覚が良い方だったので、私がアドバイスをするまでもありませんでしたね。私もよくあるんですけど、たまに台詞の単語が分からなくなったりした時にまず質問するのは、一番身近にいるキャストなんです。監督とか(発音やイントネーションを教えてくれる)ダイレクトコーチまで行くのには距離があるので、タンディと話して直し合ったりしましたね。その場には真田さんもいらっしゃって、タンディのお手伝いをすごくされていました。

――その真田広之さんをはじめ、TAOさん、祐真キキさんら日本人キャストとの共演はいかがでした?

一人で海外の作品に出るのでなく、日本人キャストが一緒にいるというのはすごい安心感がありました。"ショーグン・ワールド"は現代の日本じゃないので、古い言葉やその時代の所作があるんですよね。そこを一緒に悩んだり、共有したり、アイデアを持ち寄ったりできたので、みんながいるというのは心強かったです。

真田さんはすごい方ですね。日本の俳優としての責任感をお持ちで、必ず結果を残そうとされる方です。自分の出番のないシーンも見に来て、セットの細かいところもチェックされていました。真田さんが見に来ると、タンディが安心するんです。タンディは「真田さんは素敵で優しくて最高だわ。しかもハンサムだし」と言って喜んでいました(笑)

 

――本作に多くの日本人が出演している点について、ご自身が海外作品に出演され始めた頃と比べてアメリカの映像業界の変化をどのように感じていらっしゃいますか?

私がアメリカの作品に初めて出演したのは10年以上前(2006年の映画『バベル』)になりますが、その時からアジア人の役が少ないと訴えるような運動がありました。今はアカデミー賞などでも人権的な運動がされていますよね。向こうの方は普通の表現として言われるんですけど、ダークスキンカラーの役、アジア人の役という枠組みが脚本にはあるんですよ。私はアジア人の役ではなく日本人の役を演じてきているんですけど、そうなると演じることができる役はどうしても限られてくるんですよね。

ただ、最近の動きとしては西欧人の名前の役のオーディションの話が来たりもするんです。オーディションでよければどこの国の人でもいいみたいな考えがあるのかもしれませんね。そういう動きからも変化を感じてはいますね。

――撮影現場はどんな雰囲気でしたか?

あれだけお金がかかっている作品で、なおかつJ・J、ノーラン、リサという総括している人たちが全部を見ているんです。彼らがOKを出さないと衣装も着られないんです。すごく面白くてめったに経験できないことをさせていただきました。現場では、自分のシーン以外の台本は黒塗りにされているから、自分がなんで登場しているのか分からない人もいるんですよ。そういう時は、役者同士で教え合うこともありました。だけど、聞かなかったことによる無責任感というのも良い方に使えるんです。「脚本を読んできた?」とは言われないんです(笑) 「だって知らないもん」という立場なので、突拍子もないこともできるんです。だから、皆さん大変なんですけど、楽しんでいる人が多かったですね。

 

――"ショーグン・ワールド"のセットのクオリティはすごいものがありますよね。

本当にしっかりと作られていました。作品によってはセットの裏側は何もないみたいなこともあると思うんですけど、本作のセットはどこから撮影してもいいように作られていました。それをたったの2話のためだけに作るという感覚にビックリしました。ウエストワールドのセットの裏側に作られていて、大体同じ大きさなんです。入り口が開いて見えることも考慮して、家の奥にも入れるようになっていて、中もほとんど作られているんです。予算にもビックリしますけど、セットを作る人たちの意気込みもすごいですね。皆さん、日本人キャストにセットを見せるのを楽しみにしていたみたいなんです(笑) 黒澤作品からのアイデアもあったみたいで、そういうアイデアを持ちつつ、『ウエストワールド』ならではの"ショーグン・ワールド"という作られた世界に融合させて作りたいという思いを感じました。リサから聞いたんですけど、セットは壊さないで置いておくそうです。再び"ショーグン・ワールド"が登場するかは分からないですけどね。

――ご自身の出演シーンでオススメや見どころを挙げるとしたら?

やっぱり(第5話の)クライマックスのアカネの舞のシーンですね。怒りをあのように表現することはあまり経験したことがなかったので。他の作品ではあり得ないんですけど、撮影現場には話がズレないように必ず脚本家がいるんです。その方から、演技を抑えるようにと言われました。日本人って怒りを逃がそうとしたり、奥ゆかしさを美しいと考えることが多いと思うんですけど、そんな日本人的感覚を持っている方だったんです。私が今までやってきた作品だと、感情をもっと出すようにと言われることが多かったんです。だから、文化的に「日本人とは何か?」みたいなのをよく分かっていらっしゃる方たちだなと思いました。

 

――あのエピソードはタイトルもズバリ「アカネの舞」ですが、舞のシーンではどのようなことを考えながら演じていたのでしょう?

あれは結局のところ復讐なので、復讐の舞みたいなことなんです。静かな気持ちで舞っていくんですけど、それがノンストップで怒りに到達するんです。そういうのはリサとノーランの感覚なんでしょうね。女性なんですけどサムライに近い感覚で、女性らしく迫りながらサムライになっていく感覚は演じていて面白かったです。だけど、こういう舞だと見せられた時も驚きはなかったんですよ。違和感がなく疑いようのないものを見せられた感じでした。

――アカネの舞は日本のいわゆる舞とは違った振付けですが、それがアカネの立場や世界観にマッチしているというわけですね。

作っている人たちが考え抜いたものを出しているんでしょうね。これが「『ウエストワールド』の"ショーグン・ワールド"におけるアカネの舞だ」というのがあるんだと思います。そういう意味では大きな責任感を感じました。ある程度完成したものをちゃんとやってみせるという結果を出さないといけないですからね。ものすごい速さで撮影していく中で、自分たちが作ったものをどういう風に演じてくれるのかという周囲の思いを感じました。試しているというか、信用はしているけど見せてほしいという感じですね。「面白いものを見せてよ」という感覚が『ウエストワールド』にはあるんですよ。皆さんがその感覚をすごく持っているんです。

――アカネが将軍を殺すシーンは『ウエストワールド』らしい暴力性のあるシーンでしたが、演じていていかがでしたか?

そういうシーンはすごく大好きです(笑) 血みどろなのは大好き(笑) 女性が将軍を殺すというのはあまりない設定ですよね。私は殺陣をやってきていますけど、それを生かせる機会はそうないんですよ。殺陣は主に男性のものですし、サムライも男性ですしね。今回はそういうこともできたので、すごく楽しかったです。将軍を殺すシーンはCGではなく実際の人形で、カメラが寄るシーン用とか、顔がすでに斬れているものがあって、非常に精巧に作られていました。それを「思う存分斬ってください」と言われて、思いっきり斬りつけました(笑) 血しぶきはもっと自分にかかると思ったんですけど、全然かかってくれなくて、そこはちょっと残念でしたね(笑) どうせなら、もっと血みどろになりたかったです(笑)

 

(文/豹坂@櫻井宏充)

 

『ウエストワールド』シーズン2は、BS10 スターチャンネルにて放送中。二ヵ国語版は8月6日(月)より毎週月曜22:00ほか日本初放送。
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『ウエストワールド』シーズン2
菊地凛子
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『ウエストワールド<ファースト・シーズン>』
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