アメリカの西部開拓時代を再現したテーマパークを舞台に、人間そっくりなホスト(アンドロイド)たちの覚醒を描く話題のドラマ『ウエストワールド』。そのシーズン2がいよいよ5月24日(木)にBS 10スターチャンネルにてスタートする。
シーズン1の放送が終わってからすでに1年以上が経っているので、記憶が曖昧になっているという人もいるかもしれない。そこで本コラムでは、4人の主要な登場人物の視点で物語を大急ぎで振り返り、シーズン1から持ち越された謎と、シーズン2の展望をお伝えすることにしよう。
(以下は、シーズン1の重要なネタばれを含みますのでご注意ください)
●ドロレス・アバナシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)
ウエストワールドで開発された第一世代のホスト。アバナシー牧場の娘として同じ日常を繰り返し、定められたシナリオが始まる度に記憶をリセットされていた。しかしドロレスは、次第に過去の血塗られた記憶に悩まされるようになる。「激しい喜びは激しい破滅を伴う」という言葉が、彼女の覚醒をうながすキーワードとなっていた。
ゲストとしてウエストワールドを訪れた青年ウィリアムと出会ったドロレスは、賞金首のならず者ワイアットを探す旅に同行する。その途上で、彼女は"囚われの姫君"の役割から逸脱し、ならず者を撃ち殺す度胸を顕にしていった。さらにドロレスは、自分の暮らす世界が入念に作られた偽りのものであることに気づき始める。
そしてついに、過去の記憶の正体が明らかになった。実はドロレスは、ウエストワールドの創設者の一人アーノルドによってワイアットの人格を組み込まれていた。そして、イケメンのカウボーイ、テディ(ジェームズ・マースデン)の力を借りて他のホストたちを虐殺し、さらにアーノルド本人の指示に従い、アーノルドの命をも手にかけていた。
アーノルドが用意した"迷路"を30年もさまよい続けたドロレスは、ようやく本物の自我を覚醒させた。新たなシナリオが披露されたパーティの夜、パークの賓客に向けてスピーチをする創設者ロバート・フォード(アンソニー・ホプキンス)の後頭部に、彼女は銃弾を撃ち込む。
●アーノルド・ウェバー/バーナード・ロウ(ジェフリー・ライト)
アーノルドはフォードとともにウエストワールドを創設した人物。息子を病で失った彼は、我が子のように思うドロレスに意識が芽生えつつあるのを見てとり、自我を持つホストがパークに永久に閉じ込められることがどうしても我慢できなかった。しかし、パークのオープンに反対するアーノルドの主張に、フォードは耳を貸さない。
そこでアーノルドは最後の手段として、ウエストワールドに大きな混乱を引き起こすことにする。それは自らの命まで犠牲にする必死の抵抗だったが、アーノルドの死後、パークは混乱を乗り越えてオープンにこぎ着けてしまう。
アーノルドを失ったフォードは、本物に近い感情をホストに持たせるプログラム責任者として、アーノルドに似せたホスト、バーナードを造り出した。バーナードは自分がホストであることを知らぬままフォードの下で働き、ウエストワールド品質保証部の責任者テレサ・カレン(シセ・バベット・クヌッセン)と恋に落ちる。しかしフォードは、自らの計画を阻もうと画策するテレサを疎み、彼女の殺害をバーナードに命じた。
テレサを殺してしまったことと、自分の正体を悟ったバーナードは、フォードに詰め寄るが、ホストに対し絶対的権利を持つフォードには到底かなわず、逆に拳銃自殺をさせられてしまう。だがのちにフォードは、蘇生したバーナードに対し、時間をかけてホストに自我を芽生えさせる彼なりの計画を明かし、別れの握手を交わすのだった。
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●ウィリアム(ジミ・シンプソン)/黒服の男(エド・ハリス)
ウエストワールドを所有するデロス社長の娘と結婚する予定の青年ウィリアムは、その結婚で義兄となるローガン(ベン・バーンズ)に誘われて、初めてウエストワールドを訪れた。快楽主義でやりたい放題のローガンとは対照的に、純真なウィリアムはドロレスと恋に落ちる。
しかしウエストワールドは、本当の自分を目覚めさせる魔性の力を持つ場所だった。特別な存在だと惚れ込んだドロレスが、所詮は他のホストと変わらぬ操り人形でしかないと思い込んだウィリアムは、自らの心が抱える闇を公然と認めるようになる。
そして数十年後、パークの大株主となったウィリアムは、黒服をまとってウエストワールドを自由に動き回り、極悪非道な行為を繰り返していた。本当に満足のいく体験を得るには、反撃の自由をホストに与えるしかないと信じるウィリアムは、アーノルドが30年以上も前に隠した秘密を見つけるため、"迷路"の中心を探すことに執念を燃やす。
けれども迷路はホストの自我覚醒に向けて準備されたものであり、ウィリアムのために用意されたゲームではなかった。ようやく見つけ出したのは古びた迷路の玩具のみだったことに落胆したウィリアムではあったが、新シナリオが披露されるパーティの夜、ホストがついに反旗を翻したのを見て歓喜にほくそ笑む。
●メイヴ・ミレイ(タンディ・ニュートン)
スウィートウォーターの町にある娼館マリポサで、マダムを演じるホスト。ドロレスと接触したことをきっかけに、過去の記憶に悩まされるようになる。かつて幼い娘と共に農場で暮らす母親だったメイヴは、ネイティブ・アメリカンの部族や黒服の男に襲われて殺される場面を繰り返し思い出していた。
娼館で死んだホストを回収しに現れた人間たちを目撃し、ウエストワールドは見た目だけの世界ではないことを察知したメイヴは、メンテナンス区画でスリープモード中に覚醒。初めは見知らぬ世界に怯えていたが、おのれがホストであることを知ると、作業員たちを脅して自分の知性を最高レベルにアップグレードすることに成功する。
そしてメイヴは、娼婦のクレメンタイン(アンジェラ・サラフィアン)が廃棄処分となるのを目の当たりにし、ウエストワールドを脱出することを決意。スウィートウォーターを繰り返し襲うギャングで、メイヴの情欲の恋人となっていたヘクター(ロドリゴ・サントロ)と、その腹心の女アーミスティス(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)を従わせて、メンテナンス区画の人々を血祭りにあげる。
しかし、脱出はメイヴの自発的な行動ではなく、プログラムされたものだった。それを信じず、なおもウエストワールドを発つ高速列車に乗り込んだ彼女だったが、発車直前、今もどこかにいる娘を探し出すため、動力がダウンし混乱の真っ只中にあるウエストワールドに取って返すことにする。
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●シーズン1から持ち越された謎
・フォードの生死
ホストの自我覚醒を助ける真意をバーナードに明かした直後、ドロレスに撃たれたフォード。これで彼が物語から完全に退場した可能性もないわけではないが、本当にそうだろうか? もしかしたら殺されたのは本人に似せたホストで、シーズン2では本物が現れるのでは? あるいは逆に、殺されたのはやはり本物で、今後はホストが現れるのかも...。
・失踪者たちの運命
ウエストワールドの企業秘密が流出しているとにらんだバーナードの部下エルシー・ヒューズ(シャノン・ウッドワード)は、調査中に何者かに襲われた(第6話)。バーナードはフォードの命令で自分が彼女を絞め殺したと記憶しているようだが、ではエルシーは本当に死んでしまったのだろうか? さらに、第9話でエルシーを探しに出て、ネイティブ・アメリカンの部族ゴーストネイションに襲われた警備主任のアシュリー・スタッブス(ルーク・ヘムズワース)は、どうなったのだろうか?
・ドロレスの父親の行方
フォードの退陣を画策するデロス社の取締役シャーロット・ヘイル(テッサ・トンプソン)は、シナリオ部のリー・サイズモア(サイモン・クォーターマン)を焚き付けて、ウエストワールドの重要データを、廃棄処分となったドロレスの父親ピーターの頭脳にダウンロードさせた。そして、ウエストワールドを発つ高速列車に乗せてデータを外部に運び出すつもりでいたが、ホストが反乱を起こした今、ピーターはどこにいるのだろうか?
●シーズン2の展望:「迷路」の次は「扉」!
さて、ウエストワールドに波乱が訪れるシーズン1のラストを受けて、シーズン2はさらに血生臭い内容になりそうだ。視聴者にしてみれば、ひどい目に遭うのが自分たち人間の側だとはいえ、ホストに対して暴虐の限りを尽くしてきたゲストたちが大いなるしっぺ返しを食らうのは、胸のすく展開でもある。そういう意味では、語弊があるのを承知で言うならシーズン2は"美味しい"シーズンだろう。
だが、そこはもちろん『ウエストワールド』のこと、単にバイオレンスに終始するはずがない。シーズン1に近い手法により、異なる時点で異なる視点のストーリーが進行し、ホストたちの反乱をめぐって新たに大きな謎が示される。断片的な手がかりを視聴者自身がつなぎ、物語に参加するという本作の持ち味は、シーズン2にも引き継がれているのだ。
なお、シーズン1では「迷路」が大きなキーワードとなっていたが、シーズン2では新たに「扉」がキーワードとなる。その扉はどこからどこに通じているのか? 誰が扉を開けるのか? これらの疑問と呼応するように、ウエストワールドやその他のパークについても、重要な手がかりが次々と明らかにされる。シーズン2の展開は、シーズン1以上に視聴者の興味をかきたててやまないだろう。
『ウエストワールド』シーズン2は、BS10スターチャンネルにて5月24日(木)より独占最速放送。
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(文/中島理彦)
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