海外ドラマNAVIライターによる2018年本当に面白かった海外ドラマ総括【前編】

2018年も残すところあと数日! 今年もたくさんの海外ドラマが話題になりましたが、海外ドラマNAVIライターがそれぞれお気に入りの作品をご紹介! 年末年始に見始めるドラマの候補にしてみてくださいね!

全14作品のうち、前編では6作品をご紹介します。

海外ドラマをおすすめするNAMIは...

気がつけば子どもの頃から洋画&海外ドラマにハマりまくり、今まで見たドラマの数は膨大に。『ブレイキング・バッド』をこよなく愛し、これ以上の最高傑作はなかなか登場しないのではないかと思っている。1話完結の作品よりも、次が気になって眠れなくなってしまうような、ガッツリとクリフハンガーがあるシリーズが好み。

■映画『ボディガード』×『ハウス・オブ・カード』=『ボディガード ー守るべきものー』に!

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最近は、Netflixなどでイギリスやヨーロッパのドラマシリーズも続々と配信されるようになり、自分の好みの幅が広がってきているように思う。そんなイギリスの作品で、イチオシしたいのがNetflixで配信中の『ボディガード ー守るべきものー』だ。

本作の主人公は、偶然居合わせた爆弾テロ犯を投降させた手柄を認められ、英国内務大臣ジュリア・モンタギューの警護役に昇給した元軍人のデヴィッド・バッド。最初デヴィッドは、自身のPTSDの原因となった英軍のアフガニスタンへの派遣を推し進めた彼女に警戒心を抱いていたが、次第に心を開いて打ち解け始める。そんな矢先に警視庁から"ある仕事"を言い渡されたデヴィッドは、私情と任務の狭間で苦しむことに...。そして、デヴィッドの知らぬところで陰謀がうごめき、彼は想像もしなかったような事件に巻き込まれてしまう。

現代では世界中のどこでテロが勃発するか予測がつかず、宗教や政治といった信念が異なる人やグループが、爆弾や銃を使って罪のない人々を巻き込む危険な時代になってしまった。本シリーズは、普通なら非日常であるはずの出来事や事件が"いつ起きてもおかしくない"という緊迫感に包まれ、フィクション作品で起こる絵空事とは思えないようなリアリティにあふれている。

そして、クライアントと一緒に時間を過ごすことが多いボディガードという仕事柄か、デヴィッドとジュリアの間で漂う男女の緊張感も大きなスパイスとなり、まさに映画『ボディガード』と『ハウス・オブ・カード 野望への階段』が出会ったら、『ボディガード ー守るべきものー』が出来上がり!とでも言いたくなるような、エンターテイメント性が高く見応えある作品となっている。

配信局:Netflix
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■殺し屋が俳優を目指す斬新な設定に病みつきになる『バリー』

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Lights. Camera. Assassin. Bill Hader is #Barry, coming to #HBO spring 2018. See the first look (link in bio).

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『サタデー・ナイト・ライブ』出身のビル・ヘイダーが第70回エミー賞コメディ部門主演男優賞に輝き、かなり気になっていたのがAmazon Prime Originalの『バリー』だ。

主人公は、オハイオ州の田舎町で父親の友人ヒュークスから仕事を請け負い、殺し屋稼業で生活を立てている元海兵隊員のバリー。友達も人生の目標もない孤独な彼が"仕事"でロサンゼルスへ行くことになり、ターゲットの男が通う演劇クラスで思いかけず舞台に立つことに。その出来事をきっかけに演劇クラスに通い始めたバリーは、ついに裏稼業から足を洗うことを決意。ところが、過去に関わったギャングやヒュークスはバリーを放っておいてはくれなかった...。

とにかく何が面白いって、素性を知られてはいけないはずの殺し屋が舞台に上がり、超目立ってしまうという設定が斬新である。海外ドラマでは二足のわらじを履いたり、表と裏の顔を持つキャラクターは少なくないが、"殺し屋で役者志望"という登場人物は初めてではないかと思う。しかも、コメディ畑出身のビルが脚本&クリエイターを務めているだけあって、劇中にはシュールなブラックユーモアがテンコ盛り! かなり笑えるシーンが満載なのだが、殺し屋やギャングが登場して激しいドンパチも繰り広げられるからか、フィルムノワール的な香りもプンプンと漂い、ビルが全く新しいジャンルを開拓したかのようにさえ思える仕上がりとなっている。

配信局:Amazon Prime Video
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海外ドラマをおすすめする尾崎英二郎は...

朝の連続テレビ小説『あぐり』でTVドラマデビュー。日本での活動時代を経て、2007年に米国の映画界に拠点を移す。主な出演作品は『硫黄島からの手紙』『HEROES/ヒーローズ』『エージェント・オブ・シールド』『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』『高い城の男』『レジェンド・オブ・トゥモロー』ほか。ハリウッドに参入した戦略と思考をまとめた書籍『思いを現実にする力』の著者。

■DCが繰り出す、サブカルネタ満載、大胆な脚本のスーパーヒーロードラマ『レジェンド・オブ・トゥモロー』

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DC's #LegendsOfTomorrow Season 4 returns Mondays this fall on The CW!

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自分の出演作品をオススメするのはバイアスがかかってしまうので本来ならば控えたいところですが、今年、是非観ていただきたいのは日本でも絶賛配信中のDCコミック原作の人気ドラマ『レジェンド・オブ・トゥモロー』です。最も注目すべき点は、まずこのシリーズそのものが過去『ARROW/アロー』や『FLASH/フラッシュ』等のDCドラマに登場済みのヒーローやヴィランたちが再集結していること(例えば、ホワイトキャナリー役のケイティ・ロッツ、アトム役のブランドン・ラウス、ヒートウェーブ役のドミニク・パーセル、そしてジョン・コンスタンティン役のマット・ライアン...)それだけでもDCお得意の"クロスオーバー"感が楽しめます。

特筆すべきは脚本家チームの大胆さと勇敢さ!! この異色のヒーローチームは時空を超えて、時間軸と平和を脅かす敵と戦うことから、毎回いつの時代にタイムトラベルするかが見ものです。そこには、ビートルズや若き日のジョージ・ルーカス監督、やがて大統領となるオバマ氏などが登場するので「ヒーローたちがいかに世界を影で救ってきたか!?」というフィクションではあっても、視聴者のノスタルジックな思い出や記憶を刺激する作りになっています。

僕が登場したシーズン4第5話「Tagumo attacks!!!」では、1951年のまだ第1作目の『ゴジラ』を生み出す前の本多猪四郎監督が物語に描かれました。脚本家チームは本多監督の戦争体験から東宝で映画デビューした頃のことを非常に細かくリサーチしており、普通の米国ドラマでも踏み込まない、心の琴線に触れるセリフを織り込みました。批評家たちもその勇気ある着眼点と構築力を評価しており、批評サイトの支持率も毎シーズン高まってきているという、珍しいシリーズでもあります。

製作陣の遊び心も満載で、映画・音楽・ファッション・アニメやおもちゃのキャラクター・歴史上の怪物など、サブカルチャー的な事物をジョークにし、小ネタを劇中にふんだんに盛り込み、視聴者の目耳を楽しませています。前述の「Tagumo〜」では、なんと僕に多大な影響を及ぼした大好きな2本の映画『ジョーズ』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のネタが飛び出し、このエピソードに出演したのは運命ではないのか!?と放送を観て興奮しました。是非、一度試しにご覧下さい!!

配信局:Hulu(シーズン1~2)、WB海外ドラマエクスプレス(フォース・シーズン)
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■定石を覆す、決して単なるホラーではない深遠な家族のドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』

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僕は、映画でもテレビドラマでもホラー作品はあまり得意ではありません。なので『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』という題名を最初に目にした時は、よくある怪奇的なお屋敷内に閉じ込められるような類のドラマかと思い、食指が伸びませんでした。

しかし、米国内の業界での評判や噂がすこぶる良いのです! 配信後、以前僕が関わったドラマのVFX担当者が彼のツイート上でこの作品を絶賛していたことから、それだけ言うなら一度観てみようと思ったのです。で、実際どうだったか!? 主人公たちは序盤からいきなり「お屋敷」の外へと飛び出し、それぞれが社会で成長しているという意外な設定。しかし20年後のある日... という展開。先に結論からと言うと、これは続きが観たくなってしまうよな...という出来映えで時間を忘れて観入っていました。

巧いと思ったのは、キャスティング。ティモシー・ハットン以外、特別に目立つスター俳優を一切起用していないことで、観る者にこの「恐怖の逸話」を信じさせてくれます。大人の俳優たちにはどこか恵まれない雰囲気を醸し出すオーラが見られますが、抜擢された幼少の子役たちの自然さにも感心させられます。ホラー作品というのは、演者にとっては脚本で次の進展がすべて判ってしまうだけに"怖さ"をリアルに演じるのは非常に難しく、ただ激しい音響や、血みどろの残酷描写で驚かすような安直な手法に頼ってしまう作品群が多いのです。

しかし、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』はそれらとは一線を画します。全身がうぅ!!っと凍りつくような、致命的な"震撼"を起こす瞬間のために、繊細で周到なビルドアップ(積み上げ)があり、演出面でもビジュアル面でも満足度が高いのです。批評家は絶賛。単に超常現象スリラーに留まらず、人間たちを掘り下げる上質のミステリーに仕上がっています。

何の予備知識もなく観てみた本作ですが、あとで調べてみると、過去2度も映画化もされた題材で1959年の同名原作小説がベース。タイトルはその古き伝統を引き継ぎつつも、酷評された1999年の映画版の汚名を完全に覆す、出色の新たな創作の試み。製作プロダクションはスピルバーグ傘下の「アンブリン・テレビジョン」。巧妙な手腕にも納得です!!

配信局:Netflix
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海外ドラマをおすすめする豹坂@櫻井宏充は...

海外ドラマはジャンルを問わずに好きだが、なかでもSF、ファンタジー、コメディがお気に入り。IT業界出身なので『MR.ROBOT/ミスター・ロボット』、『シリコンバレー』のようなIT系ドラマがどこまで盛り上がるのかも気になるところ。

■ついにフィナーレを迎えた異色の"刑事ドラマ × ダークファンタジー"!『GRIMM/グリム (ファイナル・シーズン)』

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【関連記事】地上波のドラマは本当に質が低いのか? 『GRIMM/グリム』に見るアメリカのドラマの底力

民話や伝承に登場する魔物(ヴェッセン)たちは古来より人間の姿に化けて、人間社会に潜んでいた。ヴェッセンの正体を見抜き、彼らと戦うことができるのはグリム童話で有名なグリム兄弟の一族だけだった! 自分がグリムの末裔と知った刑事のニックは人間社会に紛れたヴェッセンの巻き起こす事件を解決していく中で、巨大な陰謀に巻き込まれて行く...。

有名な童話の裏にあるダークなファンタジー設定を刑事ドラマに持ち込むという異色ながらもユニークな世界観を持った『GRIMM/グリム』。2011年に米NBCで放送が開始されたが、その世界観と設定が独特すぎるため、視聴者に受け入れられるのか個人的に不安もあった。しかし、若者を中心に好評を博すことで、ファイナル・シーズンとなるシーズン6をもって無事に大団円を迎えることに。ファイナル・シーズンは、王家との戦いとの決着や、7つの鍵によって隠されたグリム一族の秘宝などの様々な謎も解き明かされ、最終章を飾るにふさわしいシーズンとなっている。ファンはもちろんのこと、初めて知ったという人も新たなジャンルを確立した本シリーズの完結をぜひ見逃さないでほしい。さらに、スピンオフも計画されており、ますます広がるグリム・ワールドにこれからも楽しませてもらえること間違いなしだ。

DVD発売中
配信局:U-NEXT
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■FBI捜査官の相棒はマジシャン? 難事件も華麗にイリュージョンで解決!『トリック 難事件はオレにお任せ』

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刑事ドラマといえば海外ドラマでも人気ジャンルの一つ。刑事や捜査官が異業種の人物と手を組むというのも定番の設定だが、『トリック 難事件はオレにお任せ』もそんな1本。だが、本作ではその相棒が世界的なマジシャンで、さらにイリュージョンを駆使して事件を解決するという、まさしく新感覚なクライムサスペンスになっている。

物語は、世界的マジシャンであるキャメロンの弟が謎の女に殺人の濡れ衣を着せられるところから始まる。キャメロンは弟の無実を証明するため、謎の女の手がかりを手に入れようとFBIに接触。持ち前のマジックとイリュージョンを駆使して捜査に協力し、FBI捜査官ケイと数々の難事件に挑むのだった...。

映画『グランド・イリュージョン』でコンサルタントを務めたマジシャンが製作に参加ということで、数々のマジック・シーンも本格的だ。事件捜査とマジックを華麗に融合させ、原題の「Deception(だまし)」よろしく犯人だけでなく、視聴者さえも"だまし"てしまう。作品全体のテイストは全体的に軽いタッチで、軽妙な主人公は見ていて楽しい。その他にも実在のマジシャンたちの名前を出してバカにするなど手品が好きな人にはニヤッとさせ小ネタも満載となっている。残念ながらシーズン1でキャンセルとなったことで物語も完結とはならなかったが、斬新な設定の刑事ドラマとして気軽に楽しめる1話完結型のクライムサスペンスだ。

放送局:AXN
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後編もお楽しみに!

Photo:
『ボディガードー守るべきものー』
(C) DESWILLIE
Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』
『GRIMM/グリム』ファイナル・シーズン
(c)2017 Universal Studios. All Rights Reserved.
『トリック 難事件は俺にお任せ』
(C)Warner Bros. Entertainment Inc.