DC史上最も不気味?『ソウ』監督によるホラーテイストのヒーロードラマ『Swamp Thing』

アメリカ南東部にある小さな町で、相次いで住民の身体に異変が起きる。町に馴染みのある科学者が調査に向かったところ、ウイルスによって変貌したと思われるおぞましい生命体が出現し...。ホラーテイストを織り込んだ新感覚スーパーヒーロードラマ『Swamp Thing(原題)』が、5月下旬から米の配信サービス「DC Universe」で配信中だ。

小さな町を襲う謎の奇病

ルイジアナ州の町にはびこる出血性の奇病を調査するため、久々に故郷へ戻ったアビー(『ティーン・ウルフ』のクリスタル・リード)。彼女は14年前に親友を亡くしたことがトラウマとなり、すっかり町から足が遠のいていた。現地を調査する中で未知のウイルスが粘着質の物体を形成していることを突き止めるが、そうしている間にも疫病は恐るべき速さで蔓延してゆき、ある家を訪ねたアビーは奇妙でおぞましい死体を発見。その遺体は、まるで意思を持っているかのような無数の植物のツルによって全身が覆われていた。アビーは調査の過程で知り合った研究者アレック(『POWER/パワー』のアンディ・ビーン)とともに事態を制しようと試みるが...。

「DC Universe」に加わる異端の能力者

DCやマーベルが得意としてきた既存のヒーロードラマにホラー作品の感覚を交えたユニークな本作の第1話で監督を務めたのは、『ソウ』『死霊館』といったホラー人気作を生み出してきたジェームズ・ワン。「DC Universe」が2018年9月に配信サービスを開始した時点で、コミック原作のドラマは人気だが供給過剰気味でもあった。その中でオリジナリティを確保してきた工夫が興味深い、と米Hollywood Reporter誌は同プラットフォームの戦略に注目する。バットマンの元相棒が独自の道を歩む『TITANS/タイタンズ』は、ダークでエッジの効いた仕上がりに。寄せ集めの異能者チームを描く『Doom Patrol(原題)』は、クセの強い展開でファンを魅了した。それらに続くオリジナルシリーズの本作『Swamp Thing』では、沼地に棲みツルを操るという独創的なモンスターが登場。数あるヒーロー作品との差別化に成功している。

DC Universeの中でも本作はかなりの"異端者"、と述べるTV Guide誌も、独特な設定に注目。コスチュームに身を包んだヒーローは見当たらず、代わりに登場するのは、藻のような植物が全身にまとわりついた実に不気味なモンスターだ。

時間をかけて人間を描く

本作がユニークなのは主人公の造形だけではない。多くのアクション作品とは異なり、展開はスロー気味だ。人智を超えたパワーをテーマにしていながら、そのモンスターの全貌は少なくとも冒頭数話でははっきりと描かれない。しかし、じっくりと話を進めることによって人間関係にスポットライトを当てる余裕が生まれた。TVと違い放送枠の制限がないからといって、ダラダラ延ばせば良いというものではない、と米Hollywood Reporter誌は指摘するが、アビーとアレックの関係性が今後のストーリーの鍵となるはず、と期待を寄せてもいる。

しかし、実は本作は製作上の問題に悩まされた不運な作品でもある。終盤のストーリーがどこまでうまく収束するかは不透明だ。TV Guide誌の伝えるところによると、方向性の違いを理由に、全13話予定だったシリーズ製作は10話で中断と、大幅な短縮に。クライマックスの脚本を書き直すことでなんとか体裁は保ったものの、終盤に差しかかって重要な3話を失ってしまったことは「良く言って疑問が残る、悪く言えば悲惨な」出来事だったと同誌。とはいうものの、冒頭の数話は心地良い驚きに満ちたエピソードだったとも述べている。

謎の生命体が沼地に潜む『Swamp Thing』は、米DC Universeで放送中。(海外ドラマNAVI)

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『Swamp Thing』