海軍犯罪捜査局を舞台にした人気長寿ドラマ『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』は2003年の放送開始以来、多くのファンを魅了してきた。その一方、劇中で描かれるテクノロジー描写には現実とかけ離れた部分が存在し、その問題点をYouTube番組が指摘している。
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当時は存在していなかった技術
YouTubeチャンネル「Linus Tech Tips(原題)」のライナス・セバスチャンとルーク・ラフレニエール、さらに「Level One Techs」のウェンデル・ウィルソンが、テレビドラマに登場する技術シーンを検証する企画でシーズン8第13話「仮面の裏側」を取り上げた。
問題のシーンでは、登場人物たちが女性キャラクターのPCスペックやオンラインゲームでの実績について語っているのだが、専門家たちから見ると開始直後から違和感だらけだという。
【該当シーンは5:00〜】
まず、女性キャラクターが自分のパソコンについて、「16コアCPU搭載で、10Mbpsの回線を持っている」と誇らしげに語る点だ。専門家たちは、当時(2011年)に16コアの一般向けCPUは存在していなかったことを指摘。さらに、「インターネット回線速度」と「CPUのコア数」を並べて誇示すること自体が不自然で、実際のPCユーザーがそんな言い方をすることはあり得ないと述べている。ウェンデルは、「もしその時代に“高性能”を強調するなら、せいぜい8コア構成か、クアッドコア程度の話になるだろう」と補足している。
加えて三人は、「オンラインゲームでハイスコアを取るために回線速度が重要」という設定にも疑問を呈した。オンライン対戦では確かにレイテンシー(遅延)が勝敗に影響するが、“スコアを早くアップロードするために高速回線が必要”という発想は完全に筋違いだとしている。
さらに問題なのは、「その女性があらゆるMMORPGでハイスコアを持っている」という発言だ。専門家たちは、MMOというジャンルの特性上、「一人のプレイヤーが同時期に全ゲームでトップを取ることは現実的に不可能」だと指摘。MMOは長時間のプレイや協力プレイが前提であり、“アーケードゲーム的なスコア争い”の発想をそのまま持ち込むのは成立しない。
結局のところ、このシーンは技術的な正確さを欠いており、2011年当時のハードウェアやゲーム文化の現実から見ても正しいとは言えない描写となっている。ライナスは、「そもそも16コアCPU自体が存在していなかった」とまとめ、最も基本的な部分から破綻していると指摘している。
もっとも、『NCIS』は本格的な技術解説を目的とした番組ではなく、視聴者を楽しませることを優先する娯楽作品だ。長年にわたり愛されてきた理由も、緊迫感のあるストーリーや魅力的なキャラクターにある。今回のように専門家が“ツッコミどころ満載”と笑うような場面もあるが、それはあくまでフィクションとして受け止めるべきだろう。むしろ、こうした不自然さを突っ込むのも視聴者の楽しみ方のひとつかもしれない。
『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』シーズン1~21はHuluで配信中。(海外ドラマNAVI)