
『新スター・トレック』(以下『TNG』)シリーズの最終章から20年後を舞台にジャン・リュック・ピカード艦長のその後を描くスピンオフ『スタートレック:ピカード』(以下『ピカード』)。
同シリーズに再登場したあのヴィランの描かれ方が残念だった理由を米Screenrantが報じている。
自我を持った“悪役AI”モリアーティ
そのキャラクターとは、人気ヴィランのモリアーティ教授(ダニエル・デイビス)だ。『ピカード』のシーズン3第6話「バウンティ」の1話だけ復帰したモリアーティだったがその内容は、ファンが満足できるようなものだったかは疑問が残る。
モリアーティが初登場したのは、『TNG』シーズン2の「ホログラム・デッキの反逆者」。データ(ブレント・スパイナー)とラ=フォージ(レヴァー・バートン)がホロデッキでシャーロック・ホームズごっこをしていたとき、AIが「データを倒せる敵」として作り出したのがモリアーティだった。
だが彼は単なるホログラムでは終わらず、自我を獲得し、ホロデッキの外の世界を認識するようになる。艦のシステムを操作し、「現実世界に出してほしい」と要求するなど、かつてない知的脅威として描かれた。
シーズン6「ボトルの中の船」では、モリアーティが“ホロデッキから脱出した”と信じるラストで幕を閉じたが、実際はホロ・キューブの中の仮想世界に閉じ込められていた。
『ピカード』での再登場は“本物”ではなかった
そして迎えた『ピカード』シーズン3。ピカード(パトリック・スチュワート)率いる旧エンタープライズDのクルーが再結集し、再び銀河の危機に立ち向かう。
その中でモリアーティも再登場するが――ファンの期待とは裏腹に、登場したのは『TNG』の“あのモリアーティ”ではなかった。
彼はセキュリティ・プログラムの一部に過ぎず、自我を持つ存在ではない。あの知的な悪役ではなく、データの記憶の断片として登場しただけだった。
登場シーンで流れたのは「ポップ・ゴーズ・ザ・ウィーゼル」。これは、『TNG』でデータがライカー(ジョナサン・フレイクス)と初めて出会った時に口笛で吹こうとした曲だ。ライカーも「これは本物じゃない」と明言し、あのモリアーティの“その後”が描かれることはなかった。
モリアーティの物語はこのまま放置されるのか?
『TNG』のエピソードのラストで、モリアーティは「現実世界に出られた」と信じ、カウントレス・バートロミューとともに“宇宙の旅”に出た。しかし実際は、仮想空間にすぎなかった。
そのプログラムを収めたモジュールは、その後スクリーンに一度も登場していない。エンタープライズDの破壊後も、どこに保管されたかは不明だ。
『スター・トレック/ヴォイジャー』や『スター・トレック:ローワー・デッキ』でも、モリアーティ事件は士官学校で教材として語られるが、彼の運命が正式に描かれる日は来ていない。
もし、かつての“自我を持ったモリアーティ”が真実に気づいたとすれば、再びピカードたちと対決する展開も考えられる。だが、その可能性は現在のところ低く、スピンオフとして噂になっている『Star Trek: Legacy(原題)』が実現しなければ、おそらく描かれないだろう。
(海外ドラマNAVI)
Photo:『スター・トレック:ピカード』シーズン3© Amazon Studios