ヒットメイカーのテイラー・シェリダンがParamountと離別！前例のない大金で引き抜き

ケヴィン・コスナー主演の『イエローストーン』、ビリー・ボブ・ソーントン主演の『ランドマン』、ジェレミー・レナー主演の『メイヤー・オブ・キングスタウン』、シルヴェスター・スタローン主演の『タルサ・キング』など、数多くのヒットドラマを手掛けてきたクリエイターのテイラー・シェリダン。これまでは米Paramount+が彼の作品を独占的に製作・リリースしてきたが、そんなシェリダンが他社に引き抜かれることが判明した。米Deadlineなど複数のメディアが大々的に報じている。

AmazonやNetflixとの争奪戦を制したのはNBCUniversal

Paramount+最大のヒットメイカーであるシェリダンの引き抜きは、前例のない10億ドル（約1520億円）規模にて実現。関係者によれば、ドラマ製作に関する5年間の新契約は2029年に開始（映画製作はそれ以前の2026年スタート予定）は、多作なシェリダンが米NBCと米NBCUniversalのストリーミングサービス、米Peacock向けに20の作品を製作するという計画を実行すれば、クリエイター／エグゼクティブ・プロデューサー料、脚本料、バックエンド（裏方）報酬としてこの金額が支払われる仕組みだという。この契約には番組枠の保証も含まれており、これは事実上、ドラマの製作保証に等しい。

シェリダンの現在のParamount+との契約は2028年に終了する。同社のテレビ部門幹部であるシンディ・ホランドと、シェリダンが所属するParamount TV Studiosのスーパーバイザーであるダナ・ゴールドバーグがシェリダンに冷たかったのに対し、他社からのアプローチは活発だった。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーCEOのデヴィッド・ザスラフは、故ジェームズ・ディーンが映画で着用したカウボーイブーツをシェリダンにプレゼントしたこともあるほどだ。そしてシェリダンの新契約に関しては、Amazon/MGMとNetflixも争奪戦に加わっていた。

『イエローストーン』では主演ケヴィン・コスナーとの長年にわたる確執が、ケヴィン演じるジョン・ダットンの突然の死と最終シーズン後半のストーリーラインからの排除という形で決着したように、シェリダンには自由にやらせるのが一番だ。1990年代半ばにもともと俳優としてキャリアをスタートさせたシェリダンは、脚本家転向後に手掛けた番組12本すべてが大ヒットし、Paramount+のヒットメイカーとしての地位を確立した。シェリダンの協力者であり製作パートナーでもあるデヴィッド・グラッサーも、自身の制作会社101 StudiosとともにNBCUniversalへ移籍する。グラッサーは同社と映画・テレビ番組のファーストルック契約を締結しており、Paramountとの現行の契約を履行した後、来年早々に開始となる予定だ。

シェリダンは自身のプロジェクトを自らの手で実現させる姿勢を採っている。その一環には、撮影地として使用するテキサス州の牧場2ヵ所への投資や、番組で使用されるその他の制作資産の取得も含まれる。俳優としてほぼ無名だったシェリダンは、今後のことをこう語る。「人生の最初の37年間は妥協し続けてきた。俳優を辞めた時、自分の物語は自分のやり方で語る、と決めたんだ。そしてその物語を望む誰かを見つける——見つけられなければディナーシアターで朗読するだけだ。でも妥協はしない。妥協などありえない」

一方Paramount+は、テック企業OracleのCEOラリー・エリソンの息子であるデヴィッド・エリソンCEO率いるSkydance Mediaによる買収が84億ドル（約1兆2770億円）で行われた8月以降、大規模な変革を遂げている。合併後の経営陣は20億ドル（約3040億円）のコスト削減を実現すると約束しており、そのコストカットの一部は人員削減によって達成される見込みだ。すでに米国内でおよそ1000人の解雇が発表されており、それと同時にシェリダンの台頭を支えた中核幹部陣のほとんどが同社を去った。今回のシェリダン離脱にもこのような現状が関わっているかもしれない。彼が手掛ける現行のドラマにすぐには影響しないかもしれないが、2029年以降の動向は気になるところだろう。

テイラー・シェリダン作品はParamount+（パラプラ）にて配信中。（海外ドラマNAVI）

参考元：米Deadline①、米Entertainment Weekly、Deadline②