こんなにも違いがあった!海外ドラマで知る日米医療現場の現実

医療ドラマというと、犯罪、法廷ものと同じように海外ドラマでは人気のジャンルだ。特にアメリカ製作のものは、古くは『ER 緊急救命室』をはじめ『グレイズ・アナトミー』『グッド・ドクター 名医の条件』『シカゴ・メッド』『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』など大ヒットと呼ばれるシリーズがたくさんある。

そんな医療系海外ドラマを見ていて、「あれ?そういえば日本の病院となんか違うかも…」と思った瞬間はないだろうか。今回は、そんなアメリカの医療ドラマを元に、日本とアメリカのリアルな医療現場での、何気ない違いに焦点を当てて紹介してみよう。

 

自由の国アメリカ!ド派手なネイルも大丈夫!

「ドラマだからこんな派手なネイルをしているナースがいるんだよね」と思った人もいるかもしれない。だが、アメリカでは現実に派手なネイルをしている医療従事者はいる。もちろん医療科や担当にもよるだろうが、基本的にはお咎めはなしだ。ネイル自体は、マニキュアではなくシールの人などもいるようだが、結構長い爪の人もいて、「これで仕事ができるのかな」と思うこともある。

日本でも薄いピンク色のネイルをしている人はいるかもしれないが、アメリカの医療従事者の指先を見て驚く人は多いだろう。同様に、髪型なども人種や宗教等の関係もあるので、特に決まりがない場合も多い。

夜でも運行するアメリカのドクターヘリ、対して日本は?

ドクターヘリの登場は医療ドラマには欠かせない見せ場ともなるシーンだ。昼夜を問わず、24時間飛び回るアメリカのドクターヘリだが、実は日本では朝から日没までと昼間しか稼働が認められていない。

このことには諸事情があるようだが、海外ドラマでよく見る、“夜のドクターヘリでの救命・治療シーン”は、アメリカならではのものなのだ。遠隔地の住民でも、いつでもドクターヘリが来てくれるという安心感はある。だが、その後の医療費のことを考えると少し不安に思うかも知れない。

医療ドラマの金字塔『ER 緊急救命室』シーズン2の第7話「地獄からの救出」で、医師であるダグ(ジョージ・クルーニー)が少年の治療を行うシーンがある。こちらはドクターヘリではなくニュースヘリだが、夜間の悪天候の中を飛ぶヘリコプターのTVクルーが、ダグの治療を生中継するというドラマならではのショッキングな演出で、記憶に残っている人も多いだろう。

24時間面会OK!年齢制限もないアメリカの病院

どのドラマでも、常に面会人が気軽に病室を訪ねたりしていることを不思議に思った人はいないだろうか。これはドラマだからではなく、アメリカでは基本的には24時間面会が可能だからだ。もちろんICUにいる患者やコロナ禍の時など例外もあるが、日本のように時間の制限や予約のシステムはない。

また、日本では基本的に兄弟であっても中学生以下は面会を禁止している病院が多いが、アメリカではそのようなルールもない。ドラマで兄弟や友達らが、手術後すぐの患者に面会に来ているシーンもあるが、これはドラマだからではなく普通のこと。

NICU(新生児集中治療管理室)であっても、家族は24時間いつでも自分たちの赤ちゃんを見にくることができる。

そもそも順番が違う!後からやってくるアメリカドクターはおしゃべりも得意?

日本では受付後、名前や番号を呼ばれたらドクターが待っている部屋に呼ばれて診察が始まる。一方アメリカでは受付後、診察室で患者が待っていて、後からドクターらが入ってくる。そして最初に対応するのはナースやレジデントで、最後にドクターが登場するというパターンだ。

『グッド・ドクター 名医の条件』を生み出したクリエイター、デイヴィッド・ショアが手がけた『Dr. HOUSE -ドクター・ハウスー』。本作でも、レジデントが最初に患者の診察を行い、後から白衣を着ず杖を持ったドクター・ハウスが、ズカズカと部屋に入り患者に暴言とも言える口調で診察を行うが、このお決まりシーンを覚えている人も多いだろう。

シーズン3の第4話「カーペット闘争」では、『ゴシップガール』のブレア・ウォルドーフ役で知られるレイトン・ミースターが、ハウスのストーカー患者として出演。ハウスが診察室に入るや否や、笑顔で近寄り必要がないのに服も脱ぎ出しハウスを困惑させる。この時の二人の駆け引きのような会話も面白いが、海外ドラマのドクターは、患者とよく話す。診察に関係ないことも色々話すので、“これはドラマだからだ”と思うかもしれないが、実は現実社会でも、ペラペラ話すドクターは多い。

筆者がお世話になっているドクターたちも、自分の家族のことやこの病院に来た経緯、趣味の話など、聞いてもいないのにどんどん話してくる人ばかりで、これはやはりお国柄の違いとも言えるだろう。決して“ドラマだからおしゃべりドクターの設定にしている”というわけでもない。

普段何気なく見ている医療系の海外ドラマ。実はそんな些細なところでも、日本との違いを知ることができる。もし海外で病院のお世話になることがあったら(ないほうがいいが)、「ああ、ドラマでもそうだったな」と思い出すこともあるだろう。

(文/Erina Austen)

Photo:『グレイズ・アナトミー』(C) ABC Studios 『グッド・ドクター 名医の条件』©Sony Pictures Television Inc. and Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 『ER 緊急救命室』TM & (c) Warner Bros. Entertainment Inc.