『ドクター・フー』などで知られる敏腕クリエイターのラッセル・T・デイヴィースが、Netflixドラマ『私のトナカイちゃん』について物申しているとDeadlineが伝えている。
Netflixのやり方を非難
『ドクター・フー』のみならず『英国スキャンダル ~セックスと陰謀のソープ事件』や『2034 今そこにある未来』など数々の大ヒット英国ドラマを手掛け、最近では『NOLLY ソープオペラの女王』も話題を呼んだ英国が誇るクリエイター、ラッセル・T・デイヴィース。業界での存在感も増している彼が、Netflixドラマ『私のトナカイちゃん』について意見を述べたことが話題を呼んでいる。
4月頭に配信された『私のトナカイちゃん』は、実際にあったストーカー事件を題材にした全7話のリミテッドシリーズ。配信後オンライン上ではストーカーとして描かれたマーサというキャラクターのモデルになったのは誰か様々な憶測が飛び交うことに。フィオナ・ハーヴェイという人物であると特定される中で、関係のない人々も誤って非難の的になってしまう事態がおきた。
このように、実際の当事者たちをオンライン上で特定できてしまうやり方をしたNetflixをデイヴィースは非難。The Timesの取材に応じた際、同作が英BBCで放送されていれば、より厳密な編集コンプライアンス・プロセスを遵守することになっただろうと自身の見解をシェア。これまでにBBCのコンプライアンス担当者と骨の折れるような仕事経験のあるデイヴィースは「コンプライアンスや編集ポリシーによって頭がおかしくなりそうなこともあるけれど、夜はしっかりと眠れる」とコメントした。
'Doctor Who' Writer Russell T Davies Says BBC Would Have Been "Much Stricter" About Disguising 'Baby Reindeer' Identities https://t.co/2JvcmGznlE
— Deadline Hollywood (@DEADLINE) May 9, 2024
NetflixのUKシニア・パブリック・ポリシー部門を統括するベンジャミン・キングは、「物語に登場する実際の個人が特定されないようすべての合理的な注意を払った」と声明を発表。
「突き詰めるところ、視聴者の行動をコントロールすることは極めて難しいことは明らかで、とりわけソーシャルメディアによってすべてが増幅する世界では困難だ」と話した他、「私いち個人としては、物語をつくることを許可せずにリチャードを黙らせる決断をした方がよかったと考える世界を心地いいとは思わない」と自身の見解も明らかにした。
デイヴィースのみならず、他の業界人も意見を述べており、元TVプロデューサーで作家としても知られるリチャード・オズマンは『私のトナカイちゃん』がNetflixのコンプライアンス患者0号になるだろうと、ポッドキャスト番組『The Rest Is Entertainment(原題)』でコメント。
「突然の大ヒット作が登場すると、何が起きるかという興味深い例。そのヒットの基盤に少しでもほころびがあれば、それはすぐに大きくなる」と話すオズマンは続けて「コンプライアンスやアフターケアなどに当てられる予算は、万が一の事態に備えてなんだ。これはまさに“万が一”の典型的な例だね」と述べた。
配信前はあまり話題にのぼっていなかった『私のトナカイちゃん』だが、爆発的ヒットを記録し、配信開始以来5,400万回以上視聴されているとのこと。3週連続で最も視聴された英語作品になっており、予想外の成果を残している。
(海外ドラマNAVI)
Photo:© 2022 Netflix, Inc.