アメリカでは、今でも国家・社会・司法制度などに根深く存在する人種問題。2020年に起きた「ジョージ・フロイド事件」以降、“#Black Lives Matter”などSNSなどでも人種差別抗議運動を目にすることが増えたが、日本に住んでいると他人事のように感じてしまう人も多いのではないだろうか。
ここでは、アメリカにおける人種差別の歴史や現状を知り、考えるきっかけになる海外ドラマ作品を厳選して紹介する。
『ボクらを見る目』
アメリカでもっとも知られた冤罪事件のうちのひとつ「セントラルパーク・ファイブ」と呼ばれた若者5人を実話ベースで描く衝撃作。
1989年4月のある朝、ニューヨークのセントラルパーク内で瀕死状態の白人女性が発見される。強姦され、頭蓋骨まで損傷していたという悲惨さからアメリカ中で犯人の逮捕を望む世論が高まるなか、当時14歳から16歳の黒人とラテン系の少年5人が逮捕される。
政治的なプレッシャーを感じていた警察上層部は、弁護士や保護者を付けないまま少年たちに自白を強要し、彼らを犯人に仕立て上げていく。証拠もないまま有罪判決を受けた彼らは、それぞれ7年~13年間にわたり服役。
2002年に無罪が認められ、2014年にニューヨーク市と全面和解に至るまでの25年間を人種差別によって奪われた彼らの物語は、米司法制度における壊滅的な偏見を知り、先入観で判断することの恐ろしさを痛感させられる。
また、米大統領になる前の不動産王だったドナルド・トランプが当時、テレビで人種差別発言を繰り返し、少年たちの死刑を求める新聞広告を掲載していたことなども描かれる。
『親愛なる白人様』
白人の多い米名門大学に通う有色人種の学生たちを描くダーク・コメディ。2014年の映画『ディア・ホワイト・ピープル』のシリーズ版。
黒人社会における色差別、階級、アクティビズムなどがテーマとなっていて、白人の多い環境で黒人がどのように見られているのか、どのように自分を構成しなければならないのかを、コメディタッチで痛烈に風刺する。
全4シーズンがNetflixにて配信中。
『ウォッチメン』
DCコミックスの同名原作から34年後の架空世界が舞台。後日譚として原作の世界観を壊さずに、人種と刑事司法制度についての政治ドラマとして脚色された。
本作では、ロバート・レッドフォードが米大統領となり、社会が一気にリベラル派の波に飲まれる2019年のオクラホマ州タルサでの人種的緊張を取り巻く事件「タルサ人種虐殺」にフォーカスが当てられている。
大衆は黒人を擁護する政権に反発し、第7機兵隊と呼ばれる白人至上主義のテロ組織が横行。覆面警官シスター・ナイトことアンジェラ・エイバーというアフリカ系の女性(レジーナ・キング)を主人公に、テロと戦う覆面の警察たちが描かれる。
『ウォッチメン』はU-NEXTにて配信中。
『インセキュア』
20代最後の歳を迎えた主人公イッサの目を通して、現代の黒人が経験している様々な人種問題や社会問題を描く。
友情も、仕事も恋も頑張る"普通の黒人の生活"を見せると同時に、黒人が日常的に直面するマイクロアグレッションや人種的緊張のリアルを自然に浮き彫りにしている。
全5シーズンが、U-NEXTにて配信中。
『THE WIRE/ザ・ワイヤー』
ボルティモア市警察殺人課の白人刑事ジミー・マクノルティが麻薬組織の捜査を目的とする特別チームに配属されるところから始まる刑事シリーズ。
元警察記者のクリエイターが元殺人課の刑事である執筆パートナーの体験を基に、構造的な人種差別や、麻薬戦争、教育制度が与える影響についての現実をハードコアに、リアリズムに徹した表現で描き批評家から絶賛された。
ブレイク前のイドリス・エルバ、ドミニク・ウェスト、ジョン・ドーマンらが出演し、黒人社会の圧倒されるような状況を包括的に描く。キャストの大半は黒人が演じているが、これはボルチモアの人口構成を正確に反映している。
全5シーズンが、U-NEXTにて配信中。
(海外ドラマNAVI)
Photo:©Netflix