現在ハリウッドでは全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)によるストライキが進行中で、それにより作品の制作が困難に陥っている。そんな状態を鑑みてか、イギリスでは文化・メディア・スポーツ省が、映画・テレビ業界が抱える問題の調査に動き出した。
ハリウッドや国内の問題に学び…
米Deadlineによると、英国のテレビ・映画業界は世界でも有数の規模を誇り、昨年は63億ポンド(約1兆1400億円)が制作費に費やされたという。しかし、多くの業界と同様にこの国でも問題が生じており、さらに現在は米両組合のストライキによる影響も受けている。
7月20日(木)に文化・メディア・スポーツ省が、「英国を世界的な作品の制作地として維持・強化するには何が必要なのか、また、どのように独立系映画制作部門を支援するのが最善であるかを調査します」と声明を発表。同様の調査が最後に実施されたのは、約20年前となる。
その調査の議題となるのは、WGAとSAG-AFTRAのストライキで大きな争点となっているAI(人工知能)の台頭のほか、近年におけるシネワールド(ロンドンに本拠を置く、世界で2番目の規模を持つシネマチェーン。2022年に破産申請)の再編と大手チェーンの崩壊に伴う英国映画のスキルや保持、課題など。業界関係者らは9月19日までに、以下の質問に回答して提出するよう求められている。
●映画・テレビ番組の制作において、英国は世界的にどの程度魅力的か?
●英国のインディペンデント映画制作部門が直面している現在の課題は何か?
●英国における映画・テレビ番組の制作を奨励するために、さらに何ができるか?
●英国の映画興行部門が直面している問題とは?
●英国の映画・テレビ番組が来たる未来に適応できるようにするために、業界と政府は何ができるか?
文化・メディア・スポーツ省の今回の動きには、一連の質問に答えた業界の生の声をもとに、取り組むべき問題を絞り込んで対応し、現在ハリウッドが直面している状態を回避しながら、問題の早期解決に努めようとの姿勢がうかがえる。
同省のキャロライン・ディネネージ委員長は、「大手映画館チェーンが直面した財政問題は、英国の映画遺産の保護と促進の重要性を浮き彫りにしました。その一方で米国の俳優と脚本家によるストライキは、スキルを適応させ、AIの課題に対応する上で先手を打つことの重要性を示しています。現在の課題は、英国の経済と文化、そして世界の舞台における英国の力にとって非常に重要な産業を維持・強化するために、業界と政府が将来を見据えた取り組みを行うことです」と訴えている。
英国では、コロナ禍で苦境に立たされたライブハウスやコンサート会場、映画館や劇場に政府から巨額の支援金が投じられており、米国よりも文化・芸術に対する支援が手厚い印象を受ける。今回の調査も、そういった取り組みの一環だと考えられそうだ。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Deadline
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