ミサイル攻撃で亡くなったスタッフも…ウクライナドラマ『続・囚われの愛』を買い付けた小竹氏にインタビュー!

2019年にウクライナの大手テレビ局STBで放送されると、熱狂的なファンを生み、たちまち大ヒットを記録した『囚われの愛~Love in chains~』。その続編『続・囚われの愛~Love in chains~』の日本初放送を6月に控えているが、この度本シリーズをウクライナから買い付けた小竹晃子氏のインタビューが到着した。

――『囚われの愛~Love in chains~』との出会いは?

テレビ番組や映画のマーケットで、以前から付き合いのあるウクライナの会社から「こういうシリーズがありますが」と紹介を受けました。そこでトレーラーを見て、日本の「おしん」のような、山あり谷ありの波乱万丈なストーリーが日本人にも受け入れてもらえるのでは、と思い買い付けました。苛酷な農奴制という歴史的事実をベースにしたドラマであり、骨格のしっかりとした作品だと思いました。

――ドラマの舞台となるのは、19世紀のクリミア戦争終結後のロシアです。2014年にはクリミア併合もありました。やはりこのような歴史的背景を意識して作られたのでしょうか。

はい。本作は原作のないオリジナルストーリーですが、フィクションでありながら、これまでのウクライナの歴史や出来事が大いに影響したシリーズであることは現地のスタッフから聞いています。

 

 

――Season1~3が、東欧で大ヒットした理由はなんだと思われますか?

ウクライナのスタッフからは「ヒットのコツが分かれば苦労しないよ」と言われましたが(笑)どの国に住んでいても、自由を手に入れて愛する人と幸せになりたいという願いは世界共通のものです。シリーズのドラマ作りとしてうまいなと思ったのは、白が黒、表が裏、最後には善が悪にさえなる逆転、どんでん返しの手法でした。こうしたこともヒットの理由ではないでしょうか。

――Season3まではポーランドでも放送されていて、大人気だったと伺いました。Season4の放送はいつになるのでしょう。

ポーランドの放送日程は未定ですが、放送することは決まっています。韓国は今春放送を予定しています。その後、チャンネル銀河でSeason3とSeason4を合わせた続編として6月から日本初放送となります。

――ウクライナでは、まだ放送は予定されていないのでしょうか。

まだ決まっていません。Season3までは放送済みなので、続きを待っている視聴者はたくさんいると思いますが、現在ウクライナのテレビ番組はニュース番組やファミリー向けのコメディやアニメが中心で、まだこうしたドラマを放送できるようなゆとりのある視聴状況ではないようです。

――Season4の制作中にロシアによるウクライナ侵攻が始まってしまったわけですが、完成までの経緯を教えてください。

撮影は残り5セッションというところで侵攻が始まりました。ウクライナでは撮影の続行が困難だということで、ポーランドで撮影を再開したようです。制作スタッフは全員ウクライナ人だったのですが、出演者の中にはロシア人の俳優もいました。ですが、ロシア人の俳優は降板し、ウクライナ人の俳優を代役に立てたと聞いています。もう一つ大事なことは、Season4も含め、これまではロシア語で制作されていましたが、急遽、Season4は後からウクライナ語の吹き替えになりました。吹き替えをつけるにはお金も時間もかかりますが、どうしてもウクライナ語で制作するというウクライナ人としての強い想いを感じます。言葉はまさに、民族のアイデンティティなのだと教わりました。

――本来はいつ頃完成するはずだったのでしょうか。

本来は2022年9月末には完成している予定でした。しかし、ウクライナ侵攻によってスケジュールが遅れ、実際に完成したのは2023年の1月になりました。

――多くの困難を乗り越えて完成した本作ですが、ポーランドによる助けが大きかったと聞きました。

はい、撮影場所をポーランドに移したこともそうですし、もっと切迫した問題として、俳優さんたちが避難しなければいけない状況になったときも助けてくれたと聞いています。

 

 

――ウクライナの街並みやお屋敷のほか、衣装もクオリティが高く、その美しさがとても印象的でした。

ウクライナのスタッフは、そこに大きな誇りを持っているようです。我々にだってこんな美しいドラマが作れるんだぞ、というプライドを感じます。教会や貴重な歴史的建造物、貴族たちが住んでいるお屋敷などは実際の建物で撮影しています。

実はすごく悲しい出来事があり…あの美しい撮影場所を確保するために尽力してくれたロケーション・マネージャーの方が、今回の戦争で兵士として戦い、ミサイル攻撃を受けて亡くなったそうです。彼のあだ名は「台風」だったそうで、きっとエネルギッシュで力強い方だったんでしょう。大事なスタッフを戦争で失い、残されたスタッフやキャストは大変なショックを受けたそうです。そういうこともあり、Season4の冒頭にはウクライナのために戦っている兵士や、亡くなった方々への献辞がつけられています。これは日本語の字幕をつけて放送します。

――主人公・カテリーナの強さとはどこにあると思いますか?

彼女の強さは、まず自分にも世界にも正直であり続けることができる、そして愛する人を信じること、そして正義を求める気持ちにある、とウクライナのスタッフから聞いています。まさに今、ウクライナ人は彼らの正義を求めて戦っているわけです。そういう部分は、ドラマと現実がリンクしている部分だなと思います。実は、カテリーナはウクライナそのものの象徴ではないかという気がしています。

――侵攻によって、作品の脚本などに影響を与えるようなことはあったのでしょうか。

すでにほとんどの撮影を終えていましたが、侵攻があり、最後の部分のストーリーを変更しました。これまでの歴史の中で、いつかロシアが攻めて来るというような危機感は、ウクライナの国民の心の中にあったのだと思います。それは、Season4の時代設定が、アレクサンドル2世の暗殺を契機に、ウクライナでも農奴制廃止を含む変革の動きが高まった重要な年である1881年を選んだことにも表れています。自由であることへの強い想いやロシアに対する警戒心があったから、このような物語が作られたのではないでしょうか。

――続編の放送ができないかもしれないとは思いませんでしたか?

Season4が完成する前に購入を決めていたので、本当に完成するのかどうか心配でした。ミサイルが落ちてくるような状況で、果たして制作ができるんだろうかと、とても不安な何週間かを過ごしました。一時は、もし完成しなくてもウクライナへのカンパだと諦めようとも覚悟しました。でも、同じく購入を決めていたポーランドテレビの方と話をする機会があり「スタッフたちは避難していて大丈夫」と聞いたので少し安心しました。そして遂に完成するわけですが、もう執念ですね。絶対に完成させるんだ、という強い意志を感じました。今は、彼らの勇気と意志の強さにすごく感動していますし、困難の中でもギブアップせずに作品を作り上げた彼らのことを誇りに思います。今回インタビューを受けるにあたってウクライナのスタッフから制作時の状況やその時の気持ちを聞き、改めて日本の皆さんにこのドラマを届けるというとても貴重な仕事をさせてもらったと感じています。

――そんな大変な想いをしながらやっと完成し、日本で放送されることになりました。いま、制作陣はどんなお気持ちなのでしょうか。

まずは安堵しかなかったようです。やはり、約束したものをきちんと届けるという、使命感が強かったようです。それから、こんなメッセージもいただきました。

「ロシアからの本格的な侵攻が始まったのは2022年2月24日ですが、我が国の戦争はクリミア併合に始まり8年以上続いており、その辛さは日本の方たちも含めて多くの国の方が理解してくれていると思います。私たちの人生に影響を与えたこの戦争が、本作の脚本に影響を与えないはずはありません。昨年、戦争が起こってしまいましたが、本来我々は「愛と裏切り」そして「自由や幸せを求める気持ち」を表すストーリーを作りたかっただけなのです。しかし、侵攻後はチームとしてあらゆる困難を乗り越えてこのシリーズを完成させたいとの思い、戦争にも負けないぞという思いがいっそう強くなりました。自分たちのためだけではなく、このドラマを愛してくれている視聴者の皆さんのためにも、どうしても完成させたかったのです」

――最後に、日本の視聴者に向けてメッセージをお願いいたします。

歴史的な事実・背景をふんだんに盛り込んでいるドラマだからこそ、単なる恋愛物語で終わることなく説得力のある力強い作品になっている『囚われの愛』をぜひ、ひとりでも多くの方にご覧いただけることを願っています。

そして、ウクライナのスタッフからもメッセージを預かっているのでお伝えします。

「ドラマを通じて、皆さんに喜びや楽しさをお届けしたいと思っています。シリーズをご覧いただき、ありがとうございます。そして、ドラマによってもっとウクライナを知っていただくことが、私たちへの大きなサポートになるとご理解いただけたら幸いです」

『続・囚われの愛~Love in chains~』放送情報

チャンネル銀河にて日本初放送
6月28日(水)スタート
(月曜日~金曜日)24:00-25:00
スカパー! 第1話無料放送 ※予定

(海外ドラマNAVI)