レイチェル・マクアダムス(『アバウトタイム〜 愛おしい時間について〜』『きみに読む物語』)とエリック・バナ(『ハルク』『スター・トレック』)が主演を務める映画『きみがぼくを見つけた日』(英題:Time Traveler’s Wife)が、ドラマとして帰ってきた! HBO Max版『きみがぼくを見つけた日』は、オードリー・ニッフェネガーが2003年に出版した同名の小説を原作としている。
あらすじ
主人公のヘンリーは6歳の頃から気がつくとタイムトラベルをすることができるようになっていた。しかし、自分の行きたい場所に行けるわけでもなく、何も持っていくこともできない。毎回、裸で過去や未来にタイムスリップしてしまうのだ。そしてある時たどり着いた森の中で、クレアという少女に出会う。彼女はヘンリーのタイムトラベルの話を信じ、二人はヘンリーが訪れるたびに同じ森で再会するようになるのだった。そして、ある時クレアは、自分と同じ時を生きる28歳のヘンリーと偶然出会うことになるが…。
ブラット・ピットも大注目?ドラマ版も豪華キャストが集結
小説が出版すらされていない時期にブラッド・ピットが手がける映画制作会社プランBエンターテインメントが、映画化の構想を練り始めた。そして2009年、『ミーン・ガールズ』『きみに読む物語』など、可愛らしい美貌で恋愛映画に引っ張りだこのレイチェル・マクアダムスをクレア役、『ハルク』で主演を演じ、コメディアンとしても活躍しているエリック・バナをヘンリー役に迎え映画化していた。
全6話構成のドラマ版『きみがぼくを見つけた日』では、映画よりも少し詳しく、彼ら二人の関係やタイムトラベルをした際のエピソードなどが描かれる。クレア役をローズ・レスリー、ヘンリー役を演じるのはテオ・ジェームズ。ローズ・レスリーは、『ゲーム・オブ・スローンズ』のイグリットとしても知られている。テオ・ジェームズも、『ダイバー・ジェント』シリーズの常連や、最近だと『 ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』シーズン2では強烈な印象を残していた。
脚本を務めるのは、同小説の大ファンであり、タイムトラベルを題材にした『ドクター・フー』の脚本も手掛けるスティーヴン・モファット。『ゲーム・オブ・スローンズ』でエミー賞を受賞したデヴィッド・ナッター監督とのタッグにより実現し、評論サイトの米ロッテン・トマトでは86%の評価を獲得するほどの人気作となった。
映画版では描かれなかったタイムトラベルの秘密が明らかに!
ドラマ版が映画版と大きく異なる点は大きく分けて、3点あると言える。
一つ目は、少し年老いたクレアとヘンリーが動画を回しながら過去を回想するストーリー展開になっているということ。クレアとヘンリーがそれぞれ同じことを思い出しながら、エピソードごとに違った人物に焦点が当てられる。母が亡くなってからのヘンリーと父親との関係や、幼いクレアとの思い出、親友のゴメスたちとの出会いなど。映画ではあまり描写がなかったクレアの家族や兄妹関係なども詳細に描かれている。
二つ目は、ヘンリーがタイムトラベルをしてしまう要因が映画よりも具体的に描かれていることだ。映画ではなんとなく示唆される程度であったが、ドラマではヘンリーが強いストレスを受けた時や酔っ払った時に過去に引き戻されるときが多いと発言している。さらに情を持ってしまうとタイムトラベルが辛くなることがあるので、女遊びをしているチャラいキャラクターにもなっている。
3つ目は、未来と現在のヘンリーが普通に会話をしたり、助けを求めたりと、最も簡単に接触してしまうところだ。未来の話は決してしないと決めているヘンリーだが、とても容易に未来と現在の自分たちを引き寄せ、親友たちにタイムトラベラーだと証明する場面は見えていても少し混乱してしまうほど。それによって時空が歪んでしまったり、過去が変わってしまうという心配は無用なようだ。どちらもヘンリーであり、お互いをよくわかっているからこそ、テンポの良い会話が生まれるところがクスッと笑えてしまう。
ドラマでは、ヘンリーたちは結婚し、子どもを設けるかどうか夫婦で葛藤するところまでが描かれている。なぜヘンリーが死んでしまうのか、なぜ車椅子なのか、詳しく描かれていない。その分、映画でも印象的だった、結婚への葛藤や不安が最終話では大きなテーマとして描かれている。
一方でどちらにも共通しているのは、タイムトラベルをするときは服すらも持っていけないということ。そのため盗みをする必要があり、幼いヘンリーに大人のヘンリーが方法を伝授する。ただしドラマ版では、タイムトラベルをするたびに嘔吐をし、さらには2回連続で別の場所に飛ぶこともあるという、より複雑な設定になっている。毎回具合が悪そうにタイムトラベルをする様子は、病気を患っているかのような、苦しい表情をしていた。
そして事故で亡くなった母親を、大人になったヘンリーがタイムトラベルをして見守る様子や、その事故のトラウマ、母親への特別な想いについても映画同様に描かれている。有名歌手だったヘンリーの母親の歌を、クレアの家族もよく聴いていたそう。それを知ったヘンリーは、過去の母親にクレアからの質問をし、現在のクレアがその回答をテープで聞くという前代未聞の会話形式を実現したのだ…。涙なしでは見ることができないワンシーンだ。
運命的に出会うことが決められているヘンリーとクレアは、時にぶつかりながらも、お互いを愛しているからこそ状況を受け入れ適応していく。ヘンリーが急にタイムトラベルで消えてしまうことに、クレアが驚かない姿がとても頼もしい。ヘンリーがタイムトラベルをしなければクレアとは出会うことはなかったかもしれないが、偶然図書館で出会って付き合うことになる可能性だって拭えない。
もしも、自分の大切な人がタイムトラベラーだったら、人生で起きることを運命と受け入れることができるのか。現実ではあり得ない設定ではあるけれど、クレアのように強い愛を持ち続けることができるのか、考えさせられる作品だ。
『きみがぼくを見つけた日』はU-NEXTで独占配信中。
(伊藤万弥乃)
Photo:『きみがぼくを見つけた日』© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.