『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』第10話レビュー、開戦の口火を切る衝撃のラスト

キングズ・ランディング(王都)では、ヴィセーリスが逝去し、ハイタワー家の思惑通り、エイゴン・ターガリエン2世が聴衆の面前で戴冠。新たな王が誕生した。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』第10話「黒装の女王」は、そんな一報がドラゴンストーン城に届けられることから幕を開ける。(※本記事は第10話「黒装の女王」のネタバレを含みますのでご注意ください)

第9話「翠の評議会」は主にヴィセーリス王の死後、キングズ・ランディングを舞台に、王妃アリセントや“王の手”オットー・ハイタワーらが、ヴィセーリスの嫡男であるエイゴン2世を鉄の玉座に据えようとする姿が映し出され、世継ぎに指名されたレイニラ陣営の様子は一切描かれることがなかった。

今回は打って変わって、主にレイニラの本拠地であるドラゴンストーン城を舞台に物語が展開。父ヴィセーリスの死を受けて、レイニラがどのように動くのかということをメインテーマとしている。

ヴィセーリス王死後のレイニラ

エイゴン2世が鉄の玉座に就いたという知らせを受けたレイニラは大きな衝撃を受ける。その影響で身籠っていた子供を死産という形で失ってしまう。やがて失意に暮れる間もなく、レイニラは正統な王位継承者であることを証明すべく動き始める。

レイニラに対して忠誠を誓う面々は、すぐにでも反乱を起こしたハイタワーの芽を摘むべく戦争を始めるべきだと進言するが、“平安王”であった父ヴィセーリスが望んだ「七王国を繋ぎとめる存在」となることを望み、理性を保ち続け、戦ではない解決法をレイニラは探ろうとする。

一方、レイニラの考えに異を唱えるのがデイモン。好戦的な彼はすぐにでも戦争を始める覚悟であり、自らの手中にある13頭のドラゴンをキングズ・ランディングへ向けて解き放とうとさえしている。このレイニラとデイモンの意見の対立が、物語を右往左往させていく。

これまでステップストーンズ諸島におけるちょっとした戦いはあったが、戦争という戦争は描かれてこなかった。本家『ゲーム・オブ・スローンズ』は主に七王国の覇権をめぐる壮絶な戦いを描いていただけに、少々物足りなさを感じるファンも多かったことだろう。今回のレイニラ陣営とハイタワー陣営の争いは視聴者にとって待ちに待った最初の大きな戦いであり、いつ開戦するのかとやきもきさせる。

バラシオン、スターク、ラニスターなどシリーズでおなじみの名前が飛び交い、いざ戦の幕開けかと思った矢先、あまりにも衝撃的な事件が起きる。

息子たちの小競り合いが再び…、開戦の口火

レイニラは息子たちに諸侯へ協力を要請する書簡を届ける任を与え、その中で次男のルケアリーズにはストームズエンド(嵐の果て城)へと赴き、ボロス・バラシオン公と交渉するよう告げる。

ルケアリーズはドラゴンのアラックスに跨り、ストームズエンドへと向かうが、そこにはすでに思わぬ先客がいた。アリセントの息子で、エイゴン2世の弟であるエイモンド。そう、かつてルケアリーズが片目を奪った相手である。

エイモンドはすでにボロス公との交渉を済ませており、ルケアリーズは不利な立場に立たされてしまう。そこで一度、母の元へ持ち帰ることを約束して、その場を立ち去ろうとした時、積年の恨みを抱くエイモンドがルケアリーズに対して宣戦布告。戦いは嵐の中、空中で展開されることになる。

“隻眼”のエイモンドがアイパッチを取った際に、青色に輝く瞳が露になったことで、ホワイトウォーカーを連想したファンも少なくないだろう。実は海外の熱心なファンの間では、ある仮説が立てられており、その中の一つにエイモンドがホワイトウォーカーたちを従える“夜の王(ナイト・キング)”と何か関係があるのではないかというものがある。

夜の王は、壁の向こう側より迫りくる“死の軍団”を率いている存在。その出自には未だ多くの謎を秘めている。誕生は数千年前に及び、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』よりもさらに遡らなければならないが、本作では「氷と炎の歌」への注釈もあることから、少なからず何らかの形で夜の王への言及が成されると考えられている。

そこでエイモンドである。夜の王はターガリエン家の血筋でないにもかかわらず、ドラゴンを操ることが出来た。すなわちターガリエン家と密接にかかわっている可能性が高く、実はエイモンドがその正体に繋がる何かである可能性が高いというのだ。

しかしながら、今回のエイモンドが見せた義眼はスターサファイアという珍しい宝石で、失った眼球の代替品としてより価値のあるものをはめ込んでいるのだろう。ここでエイモンドがホワイトウォーカーのように見える演出は意図的なものであるようにも感じるが、その真意は如何なるものかというのも、シーズン2以降のカギを握りそうだ。

ともあれ、エイモンドとドラゴンのヴァーガーが、ルケアリーズを絶命させてしまったことがきっかけで、レイニラの怒りを買うことになり、開戦の口火を切るきっかけとなってしまった。

戦いは『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2へ…

従来の『ゲーム・オブ・スローンズ』であれば、ここから戦いの行く末までを描いていたと思うが、今回は次のシーズンへとお預け…。これも『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1は、あくまでもヴィセーリス王の後継者争いを描くものであり、それがエイゴン2世で決まったという時点で、話の決着はついたということなのだろう。

さらなる争いはまたシーズン2以降の重要なテーマとなってくることが予想でき、アリセント、サー・クリストン、エイゴン2世、そしてミサリアといった今回登場しなかったキャラクターたちのその後も気がかりである。ターガリエン家の血肉沸き立つ壮絶な内戦の行く末を見届けられる日が一日でも早く来ることをわれわれ視聴者は待ち望むしかないようだ。ドラカリス!

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、U-NEXTにて全エピソードが配信中本家『ゲーム・オブ・スローンズ』も独占配信中

(文/Zash)

Photo:『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc./Photograph by Courtesy HBO/Photograph by Gary Moyes / HBO