映画の都ハリウッドには、世界中からスターになることを夢見て、俳優の卵たちが押し寄せる。そんなハリウッドの若手俳優たちにとって登竜門として知られているのが、ディズニー・チャンネルだ。ティーンから絶対的な支持を集めるディズニー・チャンネルで人気を博せば、その後のキャリアは安泰だと言っても過言ではない。ではなぜ、ディズニー・チャンネルは若手俳優たちの登竜門と呼ばれるようになったのか? その理由を語る上で、欠かせない一人の俳優…それがザック・エフロンだ。
遡ること16年前、ディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー『ハイスクール・ミュージカル』が放映され、全米で社会現象を巻き起こす。それまではブリトニー・スピアーズやジャスティン・ティンバーレイク、ヒラリー・ダフといった歌手たちがブレイクする傾向にあったディズニー・チャンネルで、俳優たちへの注目度を高めたのがザック・エフロンだった。
現在、年齢的にもキャリア的にも中堅俳優となりつつあるザックは、アイドル俳優からいかにして脱却を遂げたのだろうか? ここでは彼の俳優人生を振り返りながら、そのパーソナルな一面にも迫ってみる。
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父親に才能を見出され、母親の送迎でオーディション会場へ
ザック・エフロン(本名:ザッカリー・デイヴィッド・アレキサンダー・エフロン)は、1987年10月18日アメリカ・カリフォルニア州サンルイスオビスポにて、発電所でエンジニアを務める父親と同じ発電所で秘書をしていた母親の間に生まれた。
幼い頃は家族でドライブをすることがよくあったといい、カーステレオから流れてくるラジオに耳を傾け、音楽に親しんだ。幼きザックは初めて耳にする音楽でもすぐに覚え、口ずさむようになる。その才能に彼の父は驚かされ、ショービジネスの世界に身を置くことを予言したという。
そして、ザックはティーンになり、自ずとハリウッドを目指すように。しかし、ハリウッドから少し離れた所に住んでいたため、オーディション会場に向かうには母親の送迎が必要だったのだ。
ザックは母親に頼み込み、学校帰りや休日にオーディションを受け続けるが、なかなか役をもらうことができない。毎回、落ち込んだ表情を魅せる息子を不憫に思った母は期限を設ける。期間内に一つでも役をもらえなければ、きっぱり諦める―。だが、この難局にくじけず、ひたすらオーディションを受け続ける。そして、ついに初めての役を手にすることになる。
ほんの小さな役柄であったが、2002年のTVドラマ『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』への出演が決まる。主要キャラクターのサイモンの子供時代を演じたザックは繊細な演技を披露。
ここから『ER 緊急救命室』『堕ちた弁護士 ~ニック・フォーリン~』『CSI:マイアミ』といった人気ドラマへのゲスト出演で着実に経験を積んでいく。2004年のTV映画『Miracle Run(原題)』では自閉症の双子の一人を好演し、ヤング・アーティスト・アワードにノミネートされ、同年スタートのTVドラマ『Summerland(原題)』では準レギュラー的な役割を果たす。
『ハイスクール・ミュージカル』で大ブレイク!人気俳優の仲間入り
映画『ザック・エフロン in ダービースタリオン』(2005)で主演を務め、安定した演技を魅せたザックは、ついにブレイクの瞬間を迎える。2006年にディズニー・チャンネルで放映されたオリジナル・ムービー『ハイスクール・ミュージカル』の主演に抜擢されたのだ。
同作でミュージカルに挑戦しようとするバスケ少年トロイ・ボルトンを演じたザックは、全米ティーンから大注目の存在となり、作品はたちまち社会現象を巻き起こす大ヒットを記録。
しかし、この大ヒットにザックは納得していなかった。劇中で使用されている歌声は彼のものではなく、自身の出演が決まる前にすでに曲が完成していたこともあり、ザックは高音パートを出すことができなかったから。不甲斐なさを感じていた彼は作品が大ヒットしても素直に喜べないところがあったというが、続編の『ハイスクール・ミュージカル2』(2007)、『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』(2008)ではしっかりと自身の歌声を披露。後に納得できたと語っている。
アイドル俳優として大ブレイクを果たしたザックは、トニー賞受賞のブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『ヘアスプレー』(2007)ではリンク・ラーキン役に抜擢されるなど、ミュージカル俳優としての需要が高まっていく。
そのため、当時、大ヒット映画『フットルース』のリメイク版への主演や、歌手デビューの噂なども流れ始めるが、かねてより様々な役柄を演じたいという望みがあったため、これらのオファーを一蹴。代わりに、インディペンデント映画『僕と彼女とオーソン・ウェルズ』(2008)やファンタジー・コメディ『セブンティーン・アゲイン』(2009)など、自身のアイドル的イメージを払拭するかのような作品へ多く出演するように。
そんなザックのキャリアに転機が訪れたのは、2010年のことだった。映画『きみがくれた未来』で弟を事故で亡くし、未来に希望が持てないでいる主人公を好演し、シリアスな演技ができることを証明する。
以降、ニコラス・スパークス原作の映画『一枚のめぐり逢い』(2012)、ニコール・キッドマン&マシュー・マコノヒーと共演したサスペンス・スリラー『ペーパーボーイ 真夏の引力』(2012)、歴史ドラマ『パークランド ケネディ、真実の4日間』(2013)など自身の演技の幅を計るかのような挑戦を続けていく。
ザックは自身と同じく映画『タイタニック』でアイドル的人気を獲得し、その後オスカー俳優にまで上りつめたレオナルド・ディカプリオをこよなく尊敬している。レオもまた、同作出演後、同じようなロマンス映画には出演せずに、新境地を開拓し続けた。そのキャリア形成をイメージしているのだという。
一時の低迷期を経て再ブレイク!コメディ俳優としての道を歩みだす
それでもキャリアは順風満帆とはいかなかった。挑戦し続けた2010年から2013年までの期間というのは、興行的にも苦戦する作品が多くなり、『ハイスクール・ミュージカル』世代のファンたちも成長するにつれて、人気も下火になり始めてしまったのだ。
そんなザックに再ブレイクの時をもたらした作品が『ネイバーズ』(2014)。同作は閑静な住宅地で巻き起こるおしどり夫婦と学生グループの壮絶なバトルを映し出したコメディ映画だが、ザックは騒音をまき散らす学生グループの首領的存在であるテディを演じている。
それまでのキャリアでもコメディ演技を披露する機会はあったものの、がっつりコメディ作品というと意外にも同作が初めてで、その類まれなるコメディセンスを発揮して魅せたのだ。その演技にはどこか狂気性のようなものも感じさせ、面白いだけではない常軌を逸した表情の数々で新境地を開拓した。
ここからコメディ俳優としての道を歩み始めたザックは、『ダーティ・グランパ』(2016)、『ネイバーズ2』(2016)、『ウェディング・フィーバー ゲスな男女のハワイ旅行』(2016)、『ベイウォッチ』(2017)などでスマッシュヒットを記録し続ける。そして、コメディ俳優として人気を博したザックは、2017年、『グレイテスト・ショーマン』でミュージカル映画へ電撃復帰を果たす。
『ハイスクール・ミュージカル』でのブレイク以降、頑なにミュージカル作品には出演してこなかったザックだが、作品、キャラクターに惚れ込み、再びミュージカルに挑戦しようという決意を固める。久しぶりに目にする彼のパフォーマンスからは、『ハイスクール・ミュージカル』時代とは異なる大人な印象を大いに受け、終始、抜群の歌とダンスを披露して魅せた。
ザック・エフロンの現在…アイドル俳優からハリウッドのトップ俳優へ
ザックの演技への飽くなき探求の日々は続いている。映画『テッド・バンディ』(2019)では「シリアルキラー」の語源ともなった凶悪犯テッド・バンディ役に扮し、『ネイバーズ』の頃から垣間見えた狂気と聴衆を魅了するカリスマを混在させた見事な演技を披露。
さらに、6月17日(金)より公開となったスティーヴン・キング原作のホラー映画『炎の少女チャーリー』では、キャリア史上初めて“父親”の役柄にも挑戦している。
パイロキネシスと呼ばれる発火能力を秘めた娘を支える父親アンディ役に扮しており、どのように演じ切るのか要注目だ。
今後は1980年代に人気を博したファミリーコメディ『スリーメン&ベビー』リメイク版への出演が決定しており、さらに活躍の場を広げていくことだろう。また、『ハイスクール・ミュージカル』への復帰に意欲を見せているとの情報もあり、ファンの注目度は増すばかり。
ザック・エフロンの恋愛遍歴!結婚は?
最後にザックの恋愛遍歴についてだが、かつては『ハイスクール・ミュージカル』で共演したヴァネッサ・ハジェンズと交際し、“ザネッサ”の愛称で親しまれるパワーカップルぶりを発揮していたことで有名。
2010年の破局以降は、女優のリリー・コリンズやミシェル・ロドリゲス、モデルのサミ・ミロといった女性たちと浮名を流し、アレクサンドラ・ダダリオ(『ベイウォッチ』で共演)やレベッカ・ファーガソン(『グレイテスト・ショーマン』で共演)らとの交際疑惑もあり、共演者キラーとして知られている。
2020年から2021年にかけてはオーストラリアで出会ったウェイトレスと真剣に交際中と伝えられたが、およそ10カ月で破局を迎えている。ハリウッド屈指の人気イケメン俳優が結婚する日は、先のことになりそうだ。
(文/Zash)
Photo:ザック・エフロン公式Instagramより(@zacefron)/映画『ハイスクール・ミュージカル』© 2021 Disney/『ヘアスプレー』© PAUL J FROGGATT/FAMOUS/『ネイバーズ』© Capital Pictures/amanaimages/『炎の少女チャーリー』© 2022 UNIVERSAL STUDIOS. ALL Rights Reserved.