Amazon製作による異色スーパーヒーロードラマ『ザ・ボーイズ』。セレブのような人気と政治家のような影響力を持つ“ヒーロー”の中には、ヒーローとは程遠い極悪非道なものもいる。そんな彼らの裏の姿とそれを暴こうとする集団、ボーイズの戦いを描いている。今回、主人公の一人ビリー・ブッチャーを演じるカール・アーバンと、『スーパーナチュラル』のディーン役で知られ、シーズン3からソルジャーボーイ役で参戦するジェンセン・アクレスにインタビューを実施した。
(※本記事はシーズン2のネタバレを含むのでご注意ください)
『ザ・ボーイズ』シーズン3では、ブッチャーの決断が仲間たちの運命も左右する
――シーズン3では、ブッチャーもスーパーヒーローのような力を持っているような描写になっています。その点について少しお話をお聞かせください。
カール:クリプキが描くこのシーズン3のブッチャーは、段々と自分がどういう人間なのか気がついていきます。それゆえに、ヒューイをはじめ皆に正しい道にいるようにと思っています。ですが、シーズン2でベッカがあのようなことになり、ブッチャーは絶望の淵に突き落とされます。そこでスーパーヒーローたちと対等になろうとある決意をするわけですが、結局それは自分が滅ぼそうとしているそのものになってしまうことを意味するのです。そして、そのブッチャーの決断によって、彼自身だけでなく取り巻く仲間たちの運命も左右するような予期せぬ状況になっていきます。
――ブッチャーはなぜコンパウンドVを使用するようになるのでしょうか。ホームランダーのようなパワーのある息子ライアンに近い存在でいたいからですか。
カール:いいえ、そういう理由ではありません。ブッチャーはホームランダーがライアンを見つけ出すのは時間の問題だとわかっています。さらに、ホームランダーとブッチャー以外、ブッチャーの周りはみんな幸せなので、それにもイライラしています。それでブッチャーはそのような行動をとっていき、最悪の展開になっていきます。
――非常に強烈なキャラクターであるブッチャーを演じるにあたっての思いや役作りについて教えてください。
カール:いい質問ですね。ありがとうございます。ブッチャーを演じるのはとても楽しいです。視聴者がブッチャーを見て楽しんでいるよりも、ブッチャー自身がもっと楽しんでいると思います。白黒はっきりしない側面がたくさんあるキャラクターを演じるのはいつでも楽しいですね。
難しい点は、おそらく彼のダークな側面です。シーズン2で妻ベッカを失いますが、そのようなつらいことに直面する部分もありますし。彼には様々な側面があり、演じていてとても面白いです。
――本作の面白さは、現実社会を反映している部分にあると思います。作り話の世界でありつつも時にはリアルすぎるシーンもありますね。シーズン3でも、このような社会を反映するシーンやセリフで、シーズン2までになかったものがあれば教えてください。
ジェンセン:そうですね。クリエイターのエリック・クリプキは本当に素晴らしいです。作中のキャラクターや世界観、物語を通して現実社会の政治や社会問題など様々なことを描いています。
シーズン3は1年前に撮影したのですが、彼の思い描いていたものは今の2022年の社会に即したものになっています。彼は水晶玉で占って未来を見ていたのかもしれないですが(笑)、本当に“今”にピッタリな内容になっています。シーズン3でもこれまでのように、そのような風刺を感じとることができると思います。クリプキはどうやってこのような内容を思いついているのだろうと思うばかりです。
――本作はオリジナルのコミックがありますね。お二人は原作を読まれたことはありますか。それとも、この作品の脚本だけに集中するため、あえて読まないようにしていますか。
カール:いい質問ですね。実は最初にクリプキから「この作品は原作とはかなり変わる」と伝えられていました。もちろん、原作を見てみることもできますが、ドラマ版は根本的な設定から異なる部分があります。例えば、原作のボーイズは最初からコンパウンドVを使用していますが、ドラマ版ではシーズン3で初めて使うようになりますしね。ですが、ブッチャーというキャラクターの素材やDNAのような部分においては原作を意識しています。
ジェンセン:同じですね。原作を読まないようにと言われていたので、そうしました。台本を読んでキャラクターを作り上げるというのが、クリプキが求めていることだと思ったので。
ジェンセン・アクレスは撮影初日に全員の前で全裸に!?
――ジェンセンに質問です。参加した撮影初日の様子を教えてください。
ジェンセン:とても印象的な初日でした。クリプキとは『スーパーナチュラル』での長い付き合いがあります。彼が手がけるこの『ザ・ボーイズ』も、もちろん大好きでしたし、すごい作品だという感想もシーズン1が出て見た時、彼に伝えました。そして、その2年後、キャストの一人として参加することになったので、とても思い入れはありました。もちろん、参加できて嬉しかったですし、少し緊張もしました。人の家にお邪魔するゲストのようなちょっとした緊張です。
でも、それもすぐになくなりました。というのも、撮影初日にスタッフ全員の前で全裸にならないといけなかったので(笑) よく、「緊張したら、周りの人間が全員裸だと思えばいい」と言いますが、自分の場合は逆で、私がみんなの前で裸になったんです(笑)
カール:あの日はとても寒かったから、ジェンセンは大変だったはず。
ジェセン:そう! そうだった!
カール:あの時はヒューイ役のジャック・クエイドも全裸になったんだ。二人とも裸で頑張っていたよね。
ジェンセン:そうだった。でも、ジャックと一緒に同じ場所で、同時に裸だったわけじゃないだ(笑) 別の場所で、別の時間に、それぞれで裸だったんです。楽しい良い思い出です。おすすめします。
カール:今も僕たち全裸だけどね!(音声インタビューだったため)
ジェンセン:(大爆)
――ジェンセンに質問です。クリプキとの再タッグ、そして演じるソルジャーボーイというキャラクターについて教えてください。
ジェンセン:クリプキとまた一緒に仕事ができて光栄です。彼は一人の人間としても素晴らしく大切な友人でもありますが、同時に類まれな才能に溢れているクリエイターですから。
ソルジャーボーイは、過去から来たスーパーヒーローで、新しいキャラクターなのに周りより年を取っているという設定ですから、少し役作りが大変でした。
でも、他のキャストやスタッフの皆が、素晴らしくこの作品作りに集中していたので、そのような中で今回参加できてとても嬉しかったです。皆がどのシーンも完璧にやってのけ、どのキャラクターもそれぞれ個性が際立っています。そういう点を描くのがクリプキや脚本家チームは非常に長けているのです。皆さんに早く作品を見てもらいですね。
――ヌードシーンが多い本作ですが、(映画やテレビの撮影現場でセックスシーンやヌードシーンなどを専門に扱う)インティマシー・コーディネーターは起用されていましたか。
ジェンセン:インティマシー・コーディネーターはいました。とりあえず、忘れたくても忘れられないようなものを見てしまった、とだけ言っておきます(笑)
カール:皆見ましたよ(笑)
――シーズン3でブッチャーがライアンにある言葉をかけますが、あの時のブッチャーの心情はどういうものでしょうか。
カール:あの後のヒューイとのシーンで、ブッチャーは本音を語っています。その発言でブッチャーがどういう人間なのかが描かれていると思います。悲劇的なのはブッチャーにはライアンを守るという責任がありますが、それは彼が果たそうとしている目的に相反することでもある点です。ブッチャーは、ライアンが最低の人間に育てられるのは良くないとわかっていますし、実の父親のようになって欲しくないと思っていますからね。
『ザ・ボーイズ』シーズン3は、2022年6月3日(金) よりPrime Videoで独占配信スタート。初回3話一挙配信、以降毎週金曜日に1話ずつ配信。(取材・文/Erina Austen)
Photo:『ザ・ボーイズ』©Amazon Studios