視聴数No.1!満足度93%『The Boys ザ・ボーイズ』は、なぜこんなにも人々を魅了するのか?

アメリカのレビューサイトRotten Tomatoesで平均オーディエンス満足度93%を獲得し、Amazonオリジナルドラマ史上最高の視聴数を叩き出した異色のヒーロードラマ『ザ・ボーイズ』。日本でも大ヒットした同作は、なぜここまで視聴者を魅了し、高い評価を受けたのか。様々なデータや時代の流れ、さらには筆者独自の観点を加味しながらその秘密に迫る。

あらすじ:巨大企業ヴォートに雇われた選ばれし7人のスーパーヒーローたち。彼らは、"セブン"と呼ばれる最強チームを結成し、日々、市民の平和を守るため尽力していたが、いつしか欲と名声に溺れ、腐敗の一途をたどっていた。そんなある日、家電ショップ勤務の若者ヒューイが、セブンの一人 Aトレインの暴走によって恋人の命を奪われる。謝罪もなく誠意のない対応に怒り狂ったヒューイは、同じくセブンのメンバーに家族を奪われた元FBIのビリーに誘われ、自警団"ザ・ボーイズ"を結成。堕落したスーパーヒーローにリベンジを開始する!

【ヒットの要因①】
R指定上等!過激な原作を妥協せずに再現

「こんな腐ったスーパーヒーロー、俺たちが許さねぇ!」なんだかシノプシスを読むだけでアドレナリンが沸いてくるが、『プリーチャー』のガース・エニスと『Happy!』のダリック・ロバートソンによる超過激な同名漫画を妥協することなく忠実に再現した本作は、"R指定付き"ドラマとして配信。肉片が飛び散るバイオレンスやヒーローらしからぬ禁断のエロスなど、若年層に迎合しない容赦なき描写が次々と飛び出し、その潔さから、原作ファン、そして既存のヒーローものに辟易していた大人層の心を一気に鷲掴みにした。

ちなみに、シーズン1第2話「始動」では、セブンのリーダーであるホームランダーがヴォート社の重役マデリンに誘発され、ビルの頂上で自慰行為に耽るシーンを撮影したそうだが、さすがにスタジオ側から「カットするように」と要請されたとプロデューサーのエリック・クリプキが証言(海外掲示板サイトRedditのQ&Aコーナーより)。このエピソードからも、スタッフのキャラクター表現に対してタブーを作らないチャレンジ精神が見て取れる。

【ヒットの要因②】
徹底的にスーパーヒーローの「闇」を活写

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アベンジャーズの面々やバットマン、スーパーマンなど世界的に有名なアメリカン・ヒーローたちも決して清廉潔白とは言い切れない。その生い立ちや若気の至り、様々な葛藤や後悔などみんな黒歴史を抱えて生きているが、最終的には前を向いて力を合わせ、人類の平和のために命を懸けて戦うところに帰結する。

だが、本作はそういった定石を全て覆し、とことん悪の道へ堕ちていくもの、プライドばかりが先立つもの、さらには能力を保持するために薬漬けになるものなどヒーローの邪悪な部分を徹底的に描写する。中には正義と不義の狭間で揺れるまともなヒーローも存在するがチームとしては崩壊寸前。まさに裏切りや陰謀が渦巻くドロドロの状態だが、その(スーパーヒーローだけれど)欠陥だらけの人間臭さこそが本作の真髄であり、他と一線を画す魅力だと言える。

【ヒットの要因③】
『半沢直樹』『梨泰院クラス』に通じる復讐劇

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選ばれしスーパーヒーロー軍団"セブン"を抱えるヴォート社。本来は市民のために正義を尽くし、幸せな暮らしを提供することが使命だが、力を持ちすぎたことで慢心し、自分たちの野心を追求するあまり、善良な市民の苦しみに目を向けなくなる。

"ザ・ボーイズ"はそれぞれの復讐心と正義を胸に刻みながら、知力を尽くした作戦と仲間の絆、そして最後まで諦めない執念で巨大企業の精鋭チームに勝負を挑む。まさに弱者が大企業に立ち向かう大ヒットドラマ『半沢直樹』(TBS系)や『梨泰院クラス』(Netflix)の構図を彷彿とさせ、視聴者の心のツボを大いに刺激する!

【ヒットの要因④】
キャラが濃い&対決軸がわかりやすい

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物語の軸は、セブン率いるヴォート社vs.元FBIのビリー率いる"ザ・ボーイズ"というわかりやすい設定。その対立構図の中で双方のリーダー、ホームランダー、ビリーを筆頭に濃厚なキャラクターたちが激しくぶつかり合う。それぞれ異なった特殊能力でダイナミックに戦うスーパーヒーローたち、そんな彼らに無謀な挑戦を仕掛ける"ザ・ボーイズ"の面々...それぞれに苦悩や葛藤、恨み辛みはあるが、善悪入り乱れて戦うさまは配信ドラマの域を超えたスケールの大きさだ。映画『シックスセンス』の元名子役ハーレイ・ジョエル・オスメントが巨漢を揺らし、怪しげな超能力者を演じる姿も必見!

 

<キャラクター紹介>

●ザ・ボーイズ

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ウィリアム・"ビリー"・ブッチャー(カール・アーバン)
元FBI捜査官でザ・ボーイズのリーダー。ホームランダーに妻を奪われたことからスーパーヒーローを憎むようになり、"ザ・ボーイズ"を結成する。

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ヒューイ・キャンベル(ジャック・クエイド)
家電ショップで働く青年。恋人をAトレインとの衝突事故で失い落ち込んでいたところ、ビリーに誘われザ・ボーイズに加入。のちにセブンのスターライトと恋仲に!?

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マーヴィン/マザーズミルク(ラズ・アロンソ)
あだ名はMM。非行少年たちの保護・更生を生業とし家族と幸せに暮らしていたが、旧友ブッチャーに再会し、ザ・ボーイズに引き入れられる。

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フレンチー(トマー・カポン)
フランス出身のアウトロー。幻覚剤を常用し、銃の密輸入を主な生業としている。キミコと心を通わせるも、マザーズミルクとは犬猿の仲。

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キミコ(福原カレン)
言葉を話せない日本人女性。謎の強化剤"コンパウンドV"の密売人に監禁されていたところをザ・ボーイズに救出され、彼らと行動を共にする。

●セブン(スーパーヒーロー軍団)

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ジョン/ホームランダー(アントニー・スター)
自己中心的かつ冷酷非道なセブンのリーダー。目から赤色のレーザーを出し、空中を飛び、優れた透視能力と聴覚能力、銃弾を弾き返す強靭な肉体を持つパーフェクト・ヒーロー。

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ケビン/ディープ(チェイス・クロフォード)
7つの海の支配者を名乗るスーパーヒーロー。水棲生物と会話ができ、腹部のエラで水中でも呼吸ができる。スターライトへのセクハラ疑惑で社会的立場を失う。

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Aトレイン(ジェシー・T・アッシャー)
高速移動能力を持つスーパーヒーロー。強化剤"コンパウンドV"を常用し、能力をなんとか死守。ヒューイの恋人を誤って殺害し怒りを買う。

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ブラック・ノワール(ネイサン・ミッチェル)
漆黒のコスチュームに身を包んだ寡黙な覆面ヒーロー。シーズン1ではあまり見せ場がないが、茶道やピアノを嗜む姿が描かれる。シーズン2での活躍に期待。

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クイーン・メイヴ(ドミニク・マケリゴット)
アマゾネス風のコスチュームがセクシーな女性ヒーロー。トラックにぶつかっても傷一つ付かない驚異の身体能力を持つ。正義感はあるが長い物に巻かれる傾向がある。

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アニー/スターライト(エリン・モリアーティ)
電気を操り、手から光弾を放出するなど、強烈な特殊能力を持った新人ヒーロー。殉職したランプライターに代わってセブンに加入。アニーとしてヒューイと出会い恋心を抱く。

●ヴォート・インターナショナル
マデリン・スティルウェル(エリザベス・シュー)
ヴォート社の副社長。社の権威を強化するために軍との契約を推進。ホームランダーの担当マネージャーも兼務しており、彼とは隠蜜な関係にある。

●CIA
スーザン・レイナー(ジェニファー・エスポジート)
CIA副長官。ビリーの元同僚。ザ・ボーイズの活動をサポートしたい反面、ヴォート社の強大さに及び腰なところも。

●スペシャルゲスト
ヒュー・キャンベル(サイモン・ペグ)
息子のヒューイを優しく見守る父親。

メズナー(ハーレイ・ジョエル・オスメント)
相手と握手する事で心理を読み取る超能力者。

 

【ヒットの要因⑤】※多少のネタバレあり
シーズン2への期待、そしてシーズン3製作決定!

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【関連記事】『The Boys』シーズン2のみどころをクリエイター&キャストが語る

セクハラで左遷されたディープの去就、心臓発作で入院中のAトレイン、スターライトとヒューイの恋の行方、ホームランダーとビリーの直接対決の結末などなど、シーズン1で起きた出来事がシーズン2でどう回収され、発展していくのか? また、ホームランダーの存在を脅かす新キャラクター、ストームフロント(アヤ・キャッシュ)の登場!

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さらにはヴォート社がセブンを主人公にしたスーパーヒーロー映画『Dawn of The Seven』を製作する新展開も用意され、今から期待に胸が膨らむばかり。シーズン2を観る前からシーズン3の製作決定という朗報もあり、ますます『ザ・ボーイズ』から目が離せない!

【関連記事】『The Boys』ビリー・ブッチャーのショートフィルムが配信へ!

『ザ・ボーイズ』待望のシーズン2(全8話)は、Amazon Prime Videoにて9月4日(金)より第1話~第3話まで配信開始、第4話以降は毎週金曜日に新エピソードを配信。さらに、本作の舞台裏などについて知ることができるアフターショー『Prime Rewind:「ザ・ボーイズ」の裏側』も好評配信中だ。

Photo:Amazon Prime Video『ザ・ボーイズ』/公式Twitterより