法廷ドラマにはまろう! 『アリー』『ボストン』『プラクティス』対決!?

 

法廷ドラマは大人のミステリーだ。「容疑者は本当に犯人なの?」といういわずもがなの疑問はもちろん、「どこからが犯罪で、どこまでなら情状酌量の余地がある?」「もし自分が被害者の立場だったら、容疑者を許せる?」「逆に容疑者の立場だったら、どーする?」などなど、平素はほとんど使わない脳の場所を使って考えてしまうので、うたた寝をする間もありゃしない、グイグイと物語に引き込まれていってしまう。

そんな大人のオモチャ、いやミステリーである法廷ドラマの世界で「カリスマ」と呼ばれているのが、脚本家でありプロデューサーのデビッド・E・ケリー。これまで『LA・ロー』『アリー my Love』『ザ・プラクティス』など数々の法廷ドラマを手がけ、1999年のエミー賞では、最優秀コメディシリーズを『アリー my Love』が、最優秀ドラマシリーズを『ザ・プラクティス』が同時に受賞するという快挙を成し遂げた。そんな彼の近年の代表作の中から、3人の主役弁護士を比較してみた。

『アリー my Love』
キュートな顔立ちにスレンダーボディ、生足にタイトなミニスカート、恋するハートに妄想するアタマ。これまでにない女性弁護士キャラとして90年代後期に颯爽と現れ、センセーションを巻き起こしたのがアリー・マクビール(キャリスタ・フロックハート)だ。ハーバード大の法学部卒だけあって頭の回転も早く、感情的になると早口でまくしたてる。ハイピッチで炸裂するオンナの本音が、男の胸に深く鋭く突き刺さる。正義感も強く、優秀な弁護士だが、ただ「真実の愛」と「ソウルメイト」を探し求めて悪戦苦闘するラブ・ライフの方に彼女の気持ちの重点が置かれているため、恋愛がうまくいってないと仕事に影響が出る恐れがあり、そこが弱点といえば弱点。もっとも、私生活でのアリーことキャリスタは、インディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)と婚約しているようなので、そういった心配は無用か...。

『ザ・プラクティス』
ラブコメなアリーとは打って変わって、こちらはハードボイルドな熱血法廷ドラマ。主人公ボビー・ドネル (ディラン・マクダーモット)が立ち上げた法律事務所は、殺人事件の容疑者の刑事裁判などの弁護を主に担当しているので、自ずと会話も殺気だってくる。1時間を通して怒声や罵声が聞こえないエピソードは殆どなく、まさにそこは「真剣30~40代しゃべり場」。容疑者のために、寝る間も惜しんで、知力と術数の限りを尽くして裁判で戦う。そして、不利な状況を覆して奇跡的に裁判で勝ったとしても、釈放された容疑者がまた殺人を犯して逮捕されてしまうこともある。そんな不本意な状況に苦悩するボビー。う~ん、劇画タッチ。繊細で同情心のあるボビーは、法廷ではとても情熱的で、無実の罪で捕らえられた容疑者にとっては頼れる兄貴。でもマジメすぎるせいか、仕事ですべきことと自分のモラルとの狭間でしょっちゅう頭を抱えており、壊れてしまいそうでちょっと心配だ。

ボストン・リーガル
常にポーカーフェイスでジョークを飛ばし、ぬらりくらりとつかみどころがなく、まるで妖怪ぬらりひょん。それがこのドラマの主役、敏腕弁護士アラン・ショア(ジェームズ・スペイダー)だ。特にガッツイてる風にも見えないのに、周りの美女が次々に彼に惚れてしまうアランのモテ男っぷりは、年中ソウルメイト探しで右往左往しているアリーの敵ではあるまい。また、自分が信じるクライアントのためなら、非合法的な手段をも平気で用いる(たとえば、知り合いの娼婦に頼んで、相手の恥ずかしい写真を入手し、脅迫したりする)ことができるアランの超然とした態度は、前述のボビー君の悩みを軽く飛び越えてしまった感がある。それでいて、容疑者のために裁判で敢然と戦う姿勢は、アリーやボビーに勝るとも劣らない。アラン・ショアは、デビッド・E・ケリーがこれまでに生み出した中で、最強の弁護士かもしれない。

アラン・ショアが活躍する『ボストン・リーガル』は、『アリーmyラブ』の甘さと『ザ・プラクティス』の苦みを兼ね備え、アイリッシュ・コーヒーのようなコクがあり、見終わった後は心が温まるような気がする。今年の9月から5シーズン目を迎え、これがファイナルになるかも?という噂もあるが、この素晴らしいデビッド・E・ケリーの世界が、この先もまだまだ続くことを願ってやまない。

デビッド・E・ケリー手がける法廷ドラマ、あなたのベスト1はどれ?

アリー my Love
FOX Life HDで8月3日(日)スタート!
毎週日曜日 9:00~、21:00~<吹替え版>
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