そこまでやる? それとも当然? 子供に関する《ちょっと変わった&厳しい法律》

ドラッグで有罪になり、児童法律相談所での奉仕活動を命じられたエリート企業弁護士が、問題を抱える子どもたちを弁護しながら人間として成長していく姿を描くリーガルヒューマンドラマ『堕ちた弁護士 ~ニック・フォーリン』。『メンタリスト』のヒットとサイモン・ベイカー人気を機に、12年前の秀作が再評価されたカタチ。タイトルも『メンタリスト』を想起させる『ヒューマニスト ~堕ちた弁護士~』に改められた。

『ヒューマニスト ~堕ちた弁護士~』の主人公ニックは、《有名企業がクライアントの法律事務所》《子どもたちを助ける児童法律相談所》という対照的な世界で奮闘。本作では、勝手が違いすぎて戸惑う彼の様子も描かれるが、私たちにとってはアメリカの法律そのものが驚きの対象になることも!? ここではそんな中から、ニックの案件にもあるかもしれない《子ども(未成年者)にまつわる法律》をいくつか取り上げてみたい。

まず基本。「アメリカで《オトナ》は何歳から?」

日本の成人年齢は20歳。タバコもお酒もハタチから。アメリカの大半の州では18歳が法定成人年齢で、タバコもおおむね18歳から。でも、アルコールは21歳にならないと購入・所持ができない。お酒メインの飲食店(バーやクラブ)、ホテルのカジノエリア(※ギャンブルも21歳から)など、厳密に言えば、21歳未満が足を踏み入れただけで法律違反な場所もある。しかし、全ての州が「子どもが飲酒・喫煙すること自体」を禁じているかというと・・・?

「買える」年齢と「飲める」「吸える」年齢は違う!?

実は21歳未満がお酒を飲み、18歳未満が喫煙しても(合法ではないが)法律違反にならない州が! そうした州では、保護者と同伴かプライベートエリア内(自宅とか)・またはその両方であれば、例外的に違法とはみなされない。アルコールを注文する際やタバコを買うときにはいちいちIDをチェックするクセに、「家で親と一緒なら、飲酒・喫煙はイリーガルじゃない」っていうのはなんとも微妙・・・。

ちなみに、保護者の監督下であれば飲んでも違法にならないのは、ビール産業で有名なウィスコンシン州(※2013年4月現在)。とはいえ、コレはあくまで例外。ウィスコンシンでも、購入・所持と同様に飲酒可能年齢も21歳以上なので、いらぬ誤解を避けるためにもカラダのためにも、とりあえず米国内では(どこにいようと)お酒はやっぱり21歳から。

日本の「ふつう」がアメリカでは「虐待」?

「《蒙古斑》を知らないアメリカ人看護師に赤ちゃんへの虐待を疑われた」的なエピソードは、日米文化の違いを表す都市伝説・・・かと思いきや、意外とある話。知人にも、「娘の蒙古斑を"叩かれたことによる青アザ"と思い込んだシッターが通報、ソーシャルワーカーの調査が入った」というニューヨーク駐在の日本人がいた。子どもの手をはたいて注意したり、腕を引っ張って歩かせようとしたりするお母さんの姿は、日本じゃ日常茶飯事。だが、コレをアメリカでやったら児童保護局や警察に通報される可能性大。それどころか、大声で子どもを叱るとか目の前で夫婦ゲンカをするだけでも「精神的に威圧して恐怖を与えた」「環境が良くない」との理由で虐待とみなされる場合が! アメリカ旅行の際は、自分の子への接し方にも注意。日本と同じ感覚で子どもを叱ると大変なことになりかねない。

ついでに言うと、【異性の子どもと一緒にお風呂に入る】【赤ちゃんの裸の写真を撮る】のも、日本ではよくあることだがアメリカでは性的虐待にあたる。実際、「娘が幼稚園の作文で『パパと一緒にお風呂に入る』と書いたら父親が逮捕された」「父親が娘(乳児)を入浴させている写真を現像に出したら、店が警察に通報した」というちょっと哀しいケースも…。

「子どもをひとりにしない」のが鉄則!

アメリカでは、屋内外を問わず12歳以下の子だけで行動させてはいけない。
【子どもだけで留守番】
【友達の家や習い事に一人で歩いて行かせる】
【モールやレストランのプレイランドで遊ばせている間に親が買い物や食事】
【外出時、お店などのトイレに一人で行かせる】
のも、基本的にはダメ。

「鍵っ子」「夜遅くに塾から一人で帰宅」とか、バラエティ番組の『はじめてのおつかい』とかはまず考えられない。クリーニングをピックアップする数分ですら、小さい子を車内に残しておくのはNG。もしパトロール中の警官に見つかれば逮捕もありうる。「『どっちが子どもの送り迎えをするか』で夫婦がモメる」「幼い我が子を置いて働きに出ていたシングルマザーが、子どもを里子に出されそうになる」などのくだりがドラマで頻繁に登場するのも、こういう法律が存在するから。

「相応の年齢で、緊急事態に的確な行動ができる」など一定の条件を満たせば、12歳以下だけでの留守番や登下校などは認められる州もあって、細かい規定はエリアごとに違う。だが、十分な英語力がない(いざというとき助けを呼べない)時は、13歳以上でも一人にしてはいけない場合もある。観光客も例外ではないので、子ども同伴でアメリカに滞在する時は気をつけたいところ。

自分のクルマの中でも気が抜けない!

喫煙者に厳しいカリフォルニアをはじめ、いくつかの州では、自家用車でも18歳以下が乗る車内では禁煙になっている。これは副流煙から子どもを守るためだが、乗車時の子供の安全を目的とした法律はほかにも。クルマの座席に年齢・体重に合わせた補助シートを取り付けるのはあたりまえ。出産後は、迎えの車(後部座席)にベビーシートがないと退院させてもらえないし、多くの州では13歳にならないと助手席にも座れない。確かに、小学生以下の子が助手席にいるシーンはあまり見ないような?

ハリウッドならでは?「子役」のための法律

映画の都・ハリウッドを擁するカリフォルニア州には、未成年者である子役を守る法律が。1920年代の子役スター:ジャッキー・クーガンが、稼いだギャラ全てを親に浪費され訴訟沙汰になったのをきっかけに制定されたのが《California Child Actor"s Bill》、通称《クーガン法》。子役の財産と人権を守るために作られたこの法律により、雇い主には、その子役が成人するまでギャラの一部(15%)を信託財産として積み立てる義務が課せられている。今ではニューヨーク・ルイジアナ・ニューメキシコなど、他州にも同様の法律が存在する。

また、カリフォルニア州の児童労働法には、
「生後15日未満は撮影に使ってはいけない」
「生後1か月未満の乳児を出演させる場合、小児科医の許可が必要」
「生後6カ月までは、100フート燭(約1076ルクス)以上の照明を30秒以上当ててはいけない」
「健康や学業に支障が出ないよう、撮影現場に家庭教師や看護師を常駐させる」
などの細かい規則も!

1日の撮影・拘束時間も次のように制限されている。
●生後15日~6か月未満・・・[実働]20分・[拘束]2時間以内
●生後6か月~2歳未満・・・[実働]2時間・[拘束]4時間以内
●2歳~6歳未満・・・[実働]3時間・[拘束]6時間以内
小学生以上になると、平日は撮影の合間に勉強と休みの時間も設けなければならず、さらに複雑に...。

こんな具合に法律で撮影時間が限られているため、現場で重宝されるのが「双子」の子役。ルックスが同じだから、撮影できる時間は単純に倍。特に、なかなかいうことをきいてくれない赤ちゃん時代は、コンディション(機嫌)のいいほうを使えば撮影もスムーズ。

『フルハウス』でミシェルを演じたオルセン姉妹をはじめ、マディソン&ミランダ・カラベッロ(『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』マリー役)、ベイリー&ライリー・クレガット(『Raising Hope』ホープ役)、ブレナン=ケイン&ブレーク=アレキサンダー・ジョンソン(『シェイムレス 俺たちに恥はない』リアム役)など、撮影スケジュールが過密なテレビシリーズで、赤ちゃん役に双子がキャスティングされることが多いのは必然といえる。アーロン・スペリング製作のファミリードラマ『7th Heaven』では、かつて、双子の役を四つ子が演じていたこともあった。

 

土地柄を反映? 異色の法律あれこれ

連邦制のアメリカでは、各州が独自の法律(州法)を持っている。それぞれに地方色があるのが面白くもあり、混乱を招くところ。州外から来た人が「ココでは違法」と逮捕されて慌てふためく・・・というシーンもしばしば。最後に、「なぜそんな法律が?」的なものを挙げてみよう。

「子どもは奇妙な髪型をしてはいけない」(テキサス州某市)
「州の許可を得ず、母親が娘にパーマをかけさせるのは違法」(ネブラスカ州)
「理髪師が『耳を切っちゃうぞ』と子供を脅すのは違法」(インディアナ州某郡)
「未成年者にタトゥーを入れたら軽犯罪」(テネシー州)
「女の子は6歳になったら裸に近い格好で走り回ってはいけない」(デラウェア州某市)
「男性(18歳以上)の車に少女(17歳以下)が靴・靴下を履かずに同乗していたら法廷強姦」(インディアナ州)
「教会で礼拝中にげっぷをした子どもの両親は逮捕」(ネブラスカ州)
「未成年者に手錠を販売するのは禁止」(ニュージャージー州)
「10歳以下の子どもは大人の同伴者がいないと墓地に入ってはいけない」(ニューハンプシャー州)
「子どもは、保安官の許可なくハロウィンの仮面をかぶってはいけない」(カリフォルニア州某市)

いったいどんな事件や訴訟がきっかけで、こんなピンポイントすぎる法律が生まれたのか?もはやそっちのほうが気になる・・・。『ヒューマニスト ~堕ちた弁護士~』をはじめとするリーガルドラマや犯罪捜査モノに限らず、法律がらみのシーンや法律を背景としたやりとりはたびたび目にする。日本で暮らしているだけでは、あまり接点のない異国の法律。でも、ちょっとした基礎知識さえあれば、今よりもっと海外ドラマが楽しめるようになるはず!

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