『ヴァンパイア・ダイアリーズ(以下V.D)』での登場から、その圧倒的な存在感を放ち、全米で瞬く間に人気者となった「クラウス」ことニクラウス・マイケルソン。最強ヴァンパイアのオリジナルズ一族の中でも唯一、狼人間とヴァンパイアの特性を兼ね備えた存在・最初のハイブリッドである彼が中心となり、兄イライジャ、妹レベッカ、そして他のヴァンパイアたち、さらには魔女や人狼たちが種族の誇りと存亡をかけてニューオーリンズの街で大暴れするのが本作『オリジナルズ』だ。
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『オリジナルズ』は、『V.D』のスピンオフ。当然のことながら『V.D』を観ていなくても十分楽しめる大人のエンターテイメント作品であることに間違いはないが、やはり一番のオススメは、先に本家『V.D』のサードシーズンまでを観てからこちらの『オリジナルズ』をじっくり鑑賞して頂きたい。
『V.D』『オリジナルズ』を通して、クラウスは常に人を支配し、自分のエゴのために大殺戮を繰り返す。だがその一方で、まだ人間だったときの「思いやり」や「情」を垣間見せることがある。その一瞬の表情に惹きつけられ、彼の魅力にやられてしまう女子は多いのではないだろうか。
時にずる賢そうな笑みを浮かべてみたり、また時には相手に拒絶されたり、否定されたりした際にはすごく悲しそうな表情をするクラウス。傲慢に振る舞う一方で、心の奥底では「自分の好きな人からは好かれていたい」という、どこか子どものような心を抱えたまま生きているクラウスの魅力と、その周囲の主要キャラクターについて詳しくみていこう。
1.どうしてクラウスを嫌いになれないの?
嫌いになれないどころか、先で述べた通りスピンオフで主役を張るほど大人気のクラウス。クラウスを演じるジョセフ・モーガン(英国出身)の、クールかつ愛嬌ある表情がキャラクターにさらに深みと親しみを与えているところも大きいだろう。だが何度も言うがクラウスは基本的に「傲慢極まりない」ため、友達も少なく、みんなにひたすらビビられている。部下からの人望も無い。また、卑劣な行いが過ぎて、魔女や人間、他のヴァンパイアたちからとにかく怒りを買ってしまう。しかも千年以上に渡って生きているので、各時代のさまざまな場所で度々「激」がつくほどの惨劇を起こす。特に魔女たちからは疎まれることが多く、周りから信頼されていないという...完全に孤立しているにもかかわらず、でもなぜか主役が務まるというとても面白いタイプの主人公だ。
そんな"俺様系"の独裁者となってしまったクラウスだが、実はそれには彼にしかわからない、辛い過去があった...。
クラウスがヴァンパイアになるのは10世紀頃。大きな力を持つ魔女の母・エスターによって、兄弟たちみんながヴァンパイアになる魔法(呪い)をかけられる。またクラウスは、イライジャやレベッカの父マイケルの子ではなく、母エスターが狼人間との間に身ごもった子だったという事実をつきつけられる...。つまりクラウスは自ら望んで人狼になったわけでも、ヴァンパイアになったわけでもない。母の不貞とそれを許せない父から虐待されるという、何とも親の身勝手な振る舞いにより、散々な目にあいながら、それを乗り越えて生きているというのが実際のところなのだ。
自分と同じハイブリッドの軍団を形成することに執着する(その作戦で狙われることになったのが『V.D』でのエレナである)クラウスだが、残虐行為を繰り返しながらも、イライジャとレベッカとの絆、『V.D』でのステファンとの友情に希望を持ちながら生きているようにも見える。そう、クラウスは実はとても孤独で寂しがり屋の青年なのだ。
『オリジナルズ』は、そんなクラウスの子どもを狼人間ヘイリーが身ごもってしまう...というところから物語が始まる。果たしてこの結末やいかに...。
2.『オリジナルズ』のキャラクターたちからみたクラウス像
・マルセル(ヴァンパイア)とクラウスの関係
かつて農場でマルセルが奴隷として虐待されていたところをクラウスに助けられる。幼少期に家族から虐げられる辛さを知っていたクラウスにとっては、自分とその姿が重なり、放ってはおけなかったのだろう。血は繋がってはいないが、マルセルはクラウスにとって弟か息子、というような存在。ニューオーリンズでは、オリジナルズ兄妹が街から出て行った後、約100年間マルセルがリーダーとして君臨するようになる。マルセルはオリジナルズには力では勝てないと知りつつも、戻ってきたクラウスたちに逆らったり、服従したりを繰り返す。また、マルセルは基本的にはやさしい心の持ち主。こどもに残忍な行いはしない。
・ヘイリー(狼人間)とクラウスの関係
狼人間種族のヘイリー。クラウスとは「出来ちゃった」的なことで子どもを身ごもることになるわけだが、お互いそこまで愛し合っているということではないようだ。むしろクラウスのことは信頼していない。ヘイリーはクラウスの子がお腹の中にいても、クラウスの兄イライジャに惹かれてしまったりと、結構奔放な関係を続けていく。クラウスもヘイリーとイライジャが好意を寄せあっていることは知っているが、それに対してそれほど躍起にならない。クラウスはヘイリーのことは「ウルフガール」などからかったような呼び方をするが、自分の子どもの母親であるということで、多少の敬意は芽生えていくようだ。この兄弟とヘイリーの微妙な三角関係は、『V.D』 のそれよりも、極めて大人であるように見える。
・ダヴィーナ(魔女)とクラウスの関係
ダヴィーナからしてみると、クラウスは自分のボーイフレンドや友達を傷つける最悪の存在。最初からクラウスへの嫌悪感は強い。クラウスもダヴィーナに対してはキツいあたり方をする。これはダヴィーナの持つ強力な魔力を脅威に感じているクラウスならではの敬遠対応なのだろう。そう、クラウスは、自分にとって脅威になるもの、自分の意思に従わないものを極端に敵対視する傾向がある。クラウスは拒絶されることや、背かれることが大嫌いなのだ。そしてダヴィーナのクラウスを憎む気持ちが、オリジナルズ兄妹にとっての大敵を蘇らせるのだった...。
・カミーユ(人間)とクラウスの関係
お互い気になっているのに、好きって言えない...それがこの二人の関係。カミーユにとって、クラウスは「ひどい人」、という半面、ある時にはその存在が心強かったり、とにかくなんだか放っておくことが出来ないというような複雑な存在だ。(=気になってしまう、好きなのかも!という存在。)クラウスもカミーユに対しては明らかに敬意を払った対応をしている。(好きなんだけど、でも拒絶されるのが怖いから近くにいられない...)聡明でまっすぐなカミーユ。二人の関係がどうなっていくのかも気になるところだ。
3.The Originals
まとめとしてはやはりイライジャ・クラウス・レベッカ、この3人のことを語っておきたい。魔女×人狼×ヴァンパイアの全面戦争というスーパーアクションの演出の中にある神髄は、タイトルの通り、「The Originals」。イライジャ、クラウス、レベッカの切っても切れない千年以上に渡る絆と宿命の物語をじっくりと楽しんでほしい。
この3人の話は、特に第16話と最終話に凝縮されている。レベッカとマルセルによって仕組まれた過去の裏切りを知ったクラウスは激怒し、レベッカの心臓に杭を打ち込もうと墓地で妹を追い回す。兄イライジャは、弟が可愛い妹を殺そうとするのを全力で止めようとする。いくら説得しても怒りを鎮められないクラウスに、遂にレベッカが本音をぶつける。「昔の兄さんは優しかった。絵や音楽を愛し、私をいつも笑わせてくれて、プレゼントもくれた。私は兄さんみたいになりたいと思っていたのに...。なんでこんなふうになっちゃったの!」と...。
妹の裏切りを許せず怒りに溢れたクラウスが、この本音でぶつかってきたレベッカにどう対応したのかが、今シーズンのハイライト!
実際のところ、クラウスは『V.D』でもキャロラインに絵をおくっていたし、このイライジャ、レベッカとの墓地エピソードの後、キャンバスに向かって絵を描いてみたりする。誰の助言にも耳を傾けない「自分最強」主義のクラウスだが、妹レベッカにぶつけられた本音について、少し反省しているようにも見えるのだ。また、レベッカだけはクラウスを幼かったときのまま、「ニック」と呼んでいるし、イライジャも「ニクラウス」と呼んでいることも、他人とは違う、この兄妹の歩んできた歴史を物語る素敵なポイントだ。
雄弁で交渉好きな兄たちに比べ、感情的で男に惚れっぽく、まだあどけなさや危うさが残っているレベッカ。妙齢の人間に対して「あの小娘」と生意気な口調でいってみたり(いや、実際千年以上生きているわけだから十分年上なのだが)、そうかと思えば、自分を気にかけてくれる者をすぐに信頼してしまったり...。レベッカは本当は普通の人間の女の子として自由に生きたかったのだと思う。無茶をすることはあっても、イライジャ、クラウスにとって、情が深くてとても可愛い妹なのだ。そしてレベッカも、兄二人のこと、自分たちの未来のことをちゃんと考えている。
また、イライジャの常に紳士的で家族のために貫く確固たる姿勢にも頭が下がる。ヘイリーと惹かれあっていても、ヘイリーがキスしようとしても、立場を重んじ自分を律する場面があるのだが(ここがサルバトーレ兄弟のデイモンとは違う)、そのあたりはクラウスやヘイリーたちに比べ、節操が有り過ぎるというか、窮屈にさえ感じる。だがそれこそが、この兄弟の威厳と歴史の象徴でもある。いつも荒くれ者のクラウスを戒めようとはするものの、クラウスが落ち込み、迷うときには必ずクラウスの強さを称え、勇気付けるのだ。自分よりも弟妹の幸せを常に優先するイライジャにも、いつか必ず幸せになってほしい。
兄弟関係、親との確執など、映画やドラマで描かれることは多い。この『オリジナルズ』一家の物語は、愛憎という言葉だけではカタをつけられない、とても深くて広い壮大な歴史とパワーのもとに繰り広げられ、続いていく。クラウスをはじめオリジナルズ兄妹の魅力を、そして、美しい魔女たちや、強靭なヴァンパイア、さらにはワイルドな狼人間たちが種族の誇りと存亡をかけて一大勢力争いを繰り広げる『オリジナルズ』! まだ観ていない方、この年末年始・冬休みには、絶対に観て欲しい!
『オリジナルズ』シーズン1は、現在好評レンタル/オンデマンド配信中
■DVDコンプリート・ボックス(¥14,300+税/11枚組全22話収録)発売中
■ブルーレイコンプリート・ボックス(¥16,200円+税/4枚組)12月17日(水)発売開始
発売元 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
Photo:『オリジナルズ』
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