『ドクター・フー』特別エピソードで英国のクリスマス気分を満喫!

クリスマスというと、日本では師走の慌ただしい空気のなか、恋人と束の間ロマンチックに過ごすイベントというイメージが強い。対して欧米のクリスマスは、家族と過ごす時間を大切にする時だといえるだろう。独り立ちしていた子どもが帰省してきたり、おじいさんおばあさんの家に孫が集まったりする。ツリーや電飾で街が華やぎ、心が浮き立つ一方、日本の正月みたいにのんびりした雰囲気もある。

 

そんなわけで、クリスマスが近づくと、家族全員がゆったりと楽しめる"定番"的な番組がテレビで放送されることが多くなる。例えば、英国ではアニメ『スノーマン』、アメリカでは人形アニメ『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』などが有名だ。「これがないと、うちのクリスマスは始まらない」という映画やTV作品が多くの家庭にはあるようで、なかには、十何年も前に録画したVHSテープを、ごそごそと引っ張りだして鑑賞する家もある。

『ドクター・フー』のクリスマス特別エピソードも、そうした時期に向けて用意された定番イベントといっていいだろう。"ドクター"と呼ばれる謎の人物が、時空間を駆け巡って冒険する本作は、昨年に50周年を迎えた英国の国民的人気番組。2005年に新シリーズとして復活して以来、クリスマスに合わせて放送される特別エピソードは、恒例行事として定着してきた。

クリスマス特別エピソードはいつもより時間枠を拡大し、スケールアップした単独のストーリーとして楽しめるようになっている。TVシリーズとしての継続性を保ちつつ、"クリスマス特番"の意味合いをもたせたエピソードになっている。

とくに、『SHERLOCK/シャーロック』で知られるスティーヴン・モファットがシーズン5で製作総指揮者になってからは、いかにもクリスマスっぽい、祝祭の気分を盛りたてるお話が作られる傾向が強くなった。同年12月25日に放送された「クリスマス・キャロル」は、モファットが脚本を手がけた特別エピソードの第一弾。日本でリリースされている『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』DVD-BOXⅠにも収録されている。

 

物語は、巨大な宇宙クルーズ船が、不思議な霧のたちこめる惑星でトラブルに遭遇するところから幕を開ける。クルーズ船には4千人を超える乗客が乗っており、墜落すれば大惨事になるだろう。ドクターのコンパニオン(旅仲間)で、新婚旅行中のエイミーとローリーも乗客に含まれている。助けに向かったドクターは、機械を使って霧をコントロールする惑星の有力者カズラン・サーディックのもとを訪れるが、カズランは「わしには関係ない」と協力を拒んでしまう。クルーズ船の墜落まであと1時間。クリスマスが訪れるまでに、ドクターは果たして自分勝手で意地悪なカズランを説得できるのか...?

一見SFっぽい設定だが、このお話はタイトルからも明らかなように、チャールズ・ディケンズ作の「クリスマス・キャロル」が下敷きになっている。「クリスマス・キャロル」といえば、これまた、この時期に舞台上演されることが多い定番の古典作品。「クリスマスなぞ、虫酸が走るわ!」とまくしたてるカズランは、まさに守銭奴のスクルージそのものだ。

ドクターはクルーズ船を救助するため、ある奇想天外な方法を使ってカズランを改心させようとする。その過程で、ディケンズの小説に出てきた「過去の幽霊」「現在の幽霊」「未来の幽霊」が巧妙なアレンジをともなって登場するので、ディケンズ版のあらましを知っておくといっそう楽しめるはず。

 

『ドクター・フー』のエピソードは、壮大なスケールとともに、英国の芳醇な文学や歴史を取り入れ、成熟したお話に仕上がっていることが多い。「クリスマス・キャロル」のエンディングはクリスマスにふさわしくハッピーな衣をまとっているが、本当は切ない、甘酸っぱい内容で、ハートがキュッと締めつけられることだろう。

本作で意地悪なカズランを演じるのは、『ハリー・ポッター』シリーズでダンブルドア校長(2代目)を演じたマイケル・ガンボン。そして、美人メゾソプラノ歌手として知られるキャサリン・ジェンキンスも重要な役を演じる。心を震わせる彼女の美声が、切ない物語をいっそう盛りたてる。

ちなみに、マット・スミスが演じる11代目ドクターを主人公とするクリスマス特別エピソードは、この「クリスマス・キャロル」を含めて計4本作られた。とくに昨年12月25日に放送された「The Time of the Doctor」は、マットにとって最後の主演作ということで話題を呼び、好評を得ている。その1ヶ月前の11月23日には、50周年記念エピソード「The Day of the Doctor」が放送されたこともあって、昨年はシリーズにとって大きな節目となった。この2話は2015年3月6日発売のDVD-BOX『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション スペシャル』に収録される。

 

そして、今年のクリスマスにも、もちろん特別エピソードが放送される。主演は現ドクター役のピーター・カパルディで、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『宇宙人ポール』『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』などで有名なニック・フロストがサンタクロース役でゲスト出演する。

サンタクロースとはいかにもベタだが、単にベタで終わらせないのが『ドクター・フー』。ユニークな趣向を凝らし、新鮮な切り口のクリスマス・ストーリーを見せてくれることだろう。また、現コンパニオンのクララ役で、かねてから降板がウワサされているジェナ・コールマンが、今後も続投するのか、それとも本当に降板してしまうのかどうかが判明するとあって、話題性も高い。

クオリティの高い『ドクター・フー』のエピソードが、これからも日本で続々リリースされることを期待したい。まず今月は、「クリスマス・キャロル」で心を温めてみてはいかがだろうか。

◇発売情報
『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』DVD情報はこちら!

『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション スペシャル』
「The Day of the Doctor」/「The Time of the Doctor」2話収録
■発売日:2015年3月6日(金)
■価格:3,800円(税抜)
■品番:DABA-4769
■JANコード: 4988111247698
■画面:16:9 スクイーズ
■音声:1.英語DD ステレオ 2.日本語DD ステレオ
■字幕:1.日本語字幕 2.日本語吹替用字幕
■本編分数(予定):本編計約140分(2話収録)
■色:カラー
■製作年:2013年
■製作国:イギリス
■ディスク:片面2層 予定
■コピーライト:(c)2015 BBC Worldwide Ltd.
■発売:株式会社KADOKAWA 角川書店&BBCワールドワイド
販売:株式会社KADOKAWA 角川書店
*デザインは、変更の場合がございますので、ご理解の上ご了承お願いします。


Photo:

Photo:『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション』(c)2014 BBC Worldwide Ltd. /『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション スペシャル』(c)2015 BBC Worldwide Ltd.