
12年間続く大人気犯罪捜査ドラマ『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』。昨年末にはアメリカ本国で新スピンオフ『NCIS: New Orleans』もスタートし、まだまだその人気は衰えることを知らない。先日のマーク・ハ―モンとゲイリー・グラスバーグのインタビューに続き、今回は『NCIS』に欠かすことのできない名物キャラ、ディノッゾを演じるマイケル・ウェザリーと、その相棒マクギーを演じるショーン・マーレイが登場!
−−今シーズン、ディノッゾとマクギーのそれぞれのロマンスの行方はどうなるのでしょうか?
ショーン:僕は、デライラとマクギーの関係をとても気に入っているんだ。デライラを演じる女優のマーゴ・ハーシュマンは素晴らしいよ。また彼女が登場するのを願っている。デライラはドバイでの仕事を選んで去ってしまったけど、2人は遠距離恋愛を続けているんだ。だから、ドバイのエピソードとか、彼女がこっちに来るとかで登場するのを願っているよ。
マイケル:僕らはみんな彼女を気に入っているよ。トニーの恋のお相手ポーラ・キャシディ(ジェシカ・スティーン)は、マジック・ショップで爆死してしまったけどね。つまり、ディノッゾに惚れられるとそういうことになるってことさ(笑)。武器商人の娘ジャンヌ・ブノワ(スコッティー・トンプソン)なんか、イスラエルから戻ってこなかったしね。ディノッゾの世界と付き合うのは大変なんだよ(笑)。でも、今シーズンは何かあるんじゃないかと思っているよ。
−−これまでで一番思い出深い瞬間、または思い出に残っているシーンは何ですか?
ショーン:すべてが混ざってしまっているけど、好きな瞬間とシーンはあるよ。
マイケル:僕も。
ショーン:何?
マイケル:マーク・ハーモンに人工呼吸したこと。ずっと思い出に残るものだよ(笑)。
ショーン:いまだに彼の味が口に残っているんだろうね(笑)。
マイケル:「最もセクシーな男1987年版」の味は忘れられないよ(笑)。
ショーン:どのシーズンか忘れちゃったけど、セクハラのセミナーにみんなで出席するシーンがあった。そして、やることなすことすべてセクハラに触れるものだった。このドラマがなぜ面白いのかを集結したようなシーンだったから、ずっと印象に残っているんだ。
マイケル:犯罪捜査ドラマでセクハラのセミナーのシーンが出てくるなんてまったくもって面白いよね。
−−マイケルはダイエットに成功しましたが、ダイエットするように言われたのですか? それとも役作りですか?
マイケル:体型について、誰から何も言われなかったよ。ダイエットしたのは、自分でそうしようと思ったから。ゲイリー・グラスバーグ(クリエイター)が僕の控え室に来て、「君が随分太くなったから、君を使うのが難しくなっている。ロマンティックなシーンを作るのが困難になってきた」なんて言ったりはしなかったよ。「頼むからダイエットしてくれ」とも言われなかった。ただ、ダイエットしようと思って痩せただけ。でも、まだまだだよ。細くなったとは言えないよ。痩せたのは、去年の夏にトライアスロンのトレーニングをしたからなんだ。ジャバ・ザ・ハット(『スター・ウォーズ』シリーズに登場する超肥満体のキャラ)からボバ・フェット(同シリーズに登場する賞金稼ぎ。マッチョ体型)になったワケだ。ちなみに、今朝も海で泳いできたよ。毎週日曜は水泳、土曜は90分ほどボクシングをするんだ。ショーンはボクシングをやったことある?
ショーン:随分前にちょっとだけね。
マイケル:ボクシングをやって気づいたのは、僕は人を殴るのが好きじゃないってこと。かなりの嫌悪感を抱くんだ。だから、母に聞いたよ。「僕らはアイルランド系だけど、人を殴るのに嫌悪感を抱く人が親戚にいる? 遺伝かな? それともアイルランド人にはそういう特性があるのかな?」ってね。そうしたら「特性だね」って言われた。アイルランド人には2種類のタイプがあるんだ。好戦型と逃走型。前者はみんな聞いたことあるよね。僕は後者なんだ。逃げる方。対立しているのを見ると逃げ出す。ジャガイモがうまく育たないなら、別の場所に逃げたのと同じだよ(アイルランド人のアメリカへの大量移民のこと)。僕は逃走型で、それを誇りに思うよ。でも、母はきっとこれを聞いて怒るだろうね(笑)。
−−長年同じキャラを演じていますが、どんなことに興味を引かれますか?
ショーン:マクギーの成長ぶりに興味をそそられるよ。新しい脚本を読む度に、どんな冒険をするのかワクワクする。いつも僕は驚かされ、興味を引かれるんだ。脚本は撮影の2日くらい前にならないと渡されないから、急いで読んで、そこに飛び込む。それもワクワクの要因の一つだろうね。
マイケル:僕はできる限り予想できないようにし続けるのが好きなんだ。朝、車を降りるとき、まるで掟のように3つの言葉を頭に浮かべる。「何でもあり」そして...
ショーン:砂の箱の掟(ルール)だね。
マイケル:そう、オレンジ色の部屋の砂の箱の掟だよ。蓋が開いていれば、何が入っているかワクワクすることはないだろう?
−−お二人が演じるキャラはどんなタイプのエージェントだと思いますか?
マイケル:パイロット版を作っている時、ドン・ベルサリオ(クリエイター)に「君の声が聞こえない」って言われたから、「音声マンに言って、ボリュームを上げてもらいましょう」って答えたんだ。そうしたら「違うよ。そういう意味じゃない。君のキャラの考えが伝わってこないんだ。つまり、彼がどんなヤツなのかが感じられないんだよ。私がこの脚本を書いた時、彼の声が聞こえた。でも、今はそれがクリアに聞こえない」って言われた。パニックになったよ。「ああ~、クビになるんだ。この仕事がもの凄く必要なのに......」って思った。
そうして、ディノッゾについて事細かく、手順を追って再考してみた。ボルティモアから来た殺人課の刑事で、イタリア系アメリカ人で、彼の直感は街での経験から来るもので......ってね。そこで、ギブスとは対照的なヤツになれば面白いんじゃないかって考えた。ギブスは虚栄心がまったくない男。あの髪型を見れば分かるだろ(笑)。彼は、着るものや髪に時間をかけるタイプではないのは明らか。だからそれとは対照的に、虚栄心の塊で、部屋に入る度にそこに映った自分の姿を見て髪をチェックする男にしたらどうだろうって思ったんだ。服装にもちょっと小うるさいヤツにしたら面白いだろうってね。
そうすることで、人が自分をどう見ているかを気にしている性格で、実は弱くて不安な心を持っていることが分かる。そして、あのユーモアのセンスで人を楽しませる。彼は単に虚栄心の塊で底の浅い軽いヤツだと誤解されるけど、そんな軽いヤツだったら、こうして12年もドラマに登場し続けられないよ。マクギーは随分変わったよね。スーツから皮ジャンとジーンズ姿になった。ファッショニスタになったよね(笑)
−−演じるキャラから何を学びましたか?
マイケル:ディノッゾから何を学んだかって? 何も学ばないよ(笑)。長年一緒にいるヤツだけどね。ヤツが大好きで、気に掛けているから、「もっと自分のことを真剣に考えろよ。もっと真面目になれよ」って思っている。「あの軽くておちゃらけな性格はどこから来たんだ?」って思って鏡を見ると納得するんだ。
ただ、僕は(彼とは)正反対だよ。このドラマの出演は、俳優という職業としては滅多に得られない「安定」を与えてくれる。14歳から寄宿学校で育った僕は、毎年、部屋替えがあった。そして、俳優になってからは、仕事がある場所が自分の居住地になった。『ダーク・エンジェル』の時はバンクーバー(カナダ)に住んでいた。犬を飼いたくても無理だった。次の仕事がドイツになったり、オーストラリアになったりしたら犬はどうするんだ? そんなワケで、ディノッゾはとても大切なんだ。このドラマのお陰で僕は家族を持つことができた。自分の土台を作ることができた。それはお金には変えられない、何よりも素晴らしいものだよ。翌日も仕事があるというのが明確なのは自信にもつながるんだ。
−−お2人は長年の同僚ですが、お互いの好きなところ、気に入らないところを教えて下さい。
マイケル:僕から始めるよ。ショーンは、子役からキャリアをスタートさせた。10代の頃にロバート・デ・ニーロやベット・ミドラーといった才能ある人たちの仕事ぶりを間近で見た。本番中に起きる彼らの魔法を見て育ったんだ。そして、ショーンがこのドラマに足を踏み入れた時、若手だけどすでにベテランだった。だから、彼は常に準備万端で撮影に臨む。ショーンが準備不足な時を見たことがないよ。彼のプロ意識は、僕やマークを超えるものだよ。でも、その一方で、お楽しみの余地も残している。それこそが毎日を楽しくさせてくれるものなんだ。ショーンと一緒に仕事ができるのは栄誉であり、特別なことだよ。さ、どうか僕についても良いことを言ってくれよ(笑)。
ショーン:マイケルとの初めての共演シーンを覚えているよ。マイケルはいきなりビル・マーレイが乗り移ったように走り回りだしたんだ。「窓に石を投げる」というだけの設定だったのに、いきなり大がかりなアドリブのシーンになった。後ろ向きで走ったりして、アメフトをするように石をパスしてきた。そういうのは脚本にはまったくなかったから、僕はその場に立ち尽くしてすっかり困惑してしまった。でも、分かったんだ。それこそがマイケルが作り上げてきたディノッゾのキャラなんだってね。それからというもの、僕らは楽しいことを一緒にたくさんやってきた。残念ながらそれらのほとんどはカットされてしまったけどね。でも僕らが一緒に仕事をするのをどんなに楽しんでいるかはみんながよく知っているよ。
−−マイケルは今後も監督をする予定はありますか?
マイケル:最後に僕が監督したのは、シーズン10の「Seek」というエピソードで、爆発物探知犬の話だった。昨シーズンも監督をしようと思ったけど、いろいろなことがあってできなかったんだ。実は、監督をする代わりに、制作会社を立ち上げた。何人かの仲間と一緒にね。2人の子どもや素晴らしい妻、NCISのキャストやクルーと一緒にいないときは、そっちの方にエネルギーを費やし、集中していた。監督をするというのは、ものすごいエネルギーが必要で、制作の過程にもいろいろと影響する。準備のためにディノッゾの登場シーンをかなり減らさなきゃいけないからね。メガホンを執って、ディノッゾのキャラにいきなりなりきる......。いつかマイケル・ランドン(TVドラマ『大草原の小さな家』シリーズの主演・監督・プロデューサー)のようになれるといいなって思っているよ。
(海外ドラマNAVI)
Photo:Instagram(@ncisverse)