推理作家コリン・デクスターが生んだキャラクターで、ミステリーの本場イギリスでシャーロック・ホームズを凌ぐ人気を誇る「モース警部」。そんな彼の若き日の活躍を描く大ヒットドラマ『刑事モース~オックスフォード事件簿~』のキャストインタビューを2回に分けてお届けしよう。今回は、主人公エンデバー・モースを演じるショーン・エヴァンス。完璧ではないモースの魅力や、本作独自の要素について語ってくれた。
――若い頃のモース役のためのオーディションに来るよう言われた時、どんな気持ちでしたか?
話が来た時、僕は国外にいたんだよね。エージェントから電話があって、「モースを演じるのはどう?」って聞かれたんだけど、「分からないな。今まで一度もシリーズを目にしたことがないから!」って答えたんだ。あとで原作小説を買って全部読んだから、それが僕にとって初めて触れたモースになるんだよね。そして帰国してから脚本を読んで気に入ったんだ。オーディションというよりも、番組が望む通りの形になるよう取捨選択していったというのが近いかな。与えられたものをそれにふさわしい、最高のものにしたい。そんな熱意が実を結んでいれば嬉しいよ。
――あのモースを演じるんだというプレッシャーのようなものはありましたか?
いや。なぜなら、正直に言うと、このキャラクターについて全く知らなかったから。モースのドラマがあることは知っていたけど、その元が小説であることも分かっていなかったんだ。でも、結果的にはそれで良かったと思う。先入観なしに作品に取り組めたからね。
さっきも話したけど、出演の話があった時にはアメリカにいたから、まず原作を読むことから始めたんだ。おかげで、想像力を大いに働かすことができたよ。やるべきことがあっても、クリエイティブな面で不安があると本領を発揮できないものだから、そういった要素は極力避けるべきなんだ。僕の"ボス"は視聴者なわけで、この番組のことは理解していたけど、視聴者とつながるためにはモースというキャラクターと自分を結びつける必要があった。面白いと思ったのは、小説のモースは必ずしも幸せな人間ではないということ。僕らはそんな人物が若い頃からどんな風に成長していくのか、その過程をどうやって描くかを考えているんだ。
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――モースという人気キャラクターに対してメディアが寄せる関心の高さについてはどう思われますか?
嬉しい驚きだったよ。これだけ人気が高いのはいいことだよね。だって誰も関心を持ってくれなかったら、そもそも作品を作る意味がないんだから。今でも覚えているのは、パイロット版のプロモーションで写真撮影をしていた時のことだよ。"これで衣装が決まったから、作品の感覚がつかみやすくなって良かった"なんて呑気に考えてたら、(翌日に各紙が作品のことを大きく取り上げているのを見て)ビックリしたね。
――小説で描かれているよりも若い頃のモースとは、どんな人物ですか?
僕らが描こうとしているモースは、世間から少しズレている人物だよ。犯罪捜査に関して優れた能力を持っているけれど、自分の過去からはうまく抜け出すことができない。そんな彼は頭の中で様々なことを考えていて、それは素晴らしいことであると同時に、良くないことでもある。素晴らしい面としては、モースが人や犯罪について細かいことまで観察し、そこから真実を導き出して正義をもたらすことができる点だ。その一方で、モースは私生活においては人付き合いが苦手で、非社交的なことで苦労している。彼は独り立ちしようとしている途中なんだ。あと、彼のようなタイプだと、周囲よりも自分の方が優れていると感じてしまうんだろうね。
――なぜモースはこんなにも愛されるのでしょう?
モースは刑事として大事な資質である想像力、知性、好奇心を兼ね備えている。『刑事モース』ではその資質がまだ発展途上な状態だけどね。僕らは素晴らしいストーリーを、うまく伝えていかなければならない。とはいえ、モースに関する功績は、ひとえに原作者のコリン・デクスターにあると言うべきだろうね。コリンなしではこの作品は生まれなかったんだから。僕らはもちろん自分のやるべきことをやっているけれど、キッチンカウンターに座ってキャラクターを想像するというのは本当に特別なことだよ。僕らが『刑事モース』でやろうとしていることをコリンはとても喜んでくれている。それが僕にとってはすごく嬉しいんだ。
――モースとサーズデイ警部補の関係は?
少しずつ発展しているところだよ。二人の関係を「父と息子みたいなもの」と表すのは簡単だけど、実際はもっと面白いんだ。サーズデイはちょうど、仕事に費やす時間とその取り組み方を変えようとしている。そして彼は、モースに何かしらの影響を与えたいと考えているんだ。モースには優れた能力があるけれど、未熟な面もあるからね。単に頭が良ければOKなら、モースはすぐトップへ昇れる。でも実際には誰か導いてくれる存在が必要なんだ。それによってサーズデイとの関係がより面白くなるんだよ。
――本作の撮影で特に楽しいのは?
1960年代の舞台はとにかく素晴らしいね。女性たちが着飾って、男性たちがスーツを着ているのを見るのも楽しいよ。しっかりとしたスタイルを持つことは、作品にとっていいことだ。そして製作チームと衣装デザイナーはどのエピソードも同じだけど、各エピソードを担当する監督たちにはそれぞれ独自の視点があるから、毎回異なるひねりが加わる。何かしら新しい要素が追加されるんだ。それに、オックスフォードは本当に特別な場所だよ。建築物も街並みも、そこで暮らしている人たちもね。
次回は、モースの上司、フレッド・サーズデイ警部補を演じるロジャー・アラムのインタビューをお届け。お楽しみに!
Photo:『刑事モース~オックスフォード事件簿~』 (C) Mammoth Screen Limited 2011 All rights reserved. Licensed by ITV Studios Global Entertainment. (C) ITV/Mammoth (c) Mammoth Screen Limited 2016