【海外ドラマ入門】ミュージカルドラマとしても青春ドラマとしても楽しめる『Glee』

音楽が好きで、とにかく元気が出る海外ドラマを見たいなら『Glee/グリー』がおすすめです。アメリカでは社会現象を巻き起こすほど大ヒットした作品であり、楽しいミュージカルの中にも考えさせられる深いテーマが織り込まれていて見ごたえがあります。この記事では、そのあらすじや、魅力の数々を解説していきます。

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◆ヒエラルキーに挑んだ作品

『Glee』はアメリカのTVドラマで、20世紀フォックス テレビジョンで制作され、全121話が放送されました。キャストにはすでにブロードウェイで有名なミュージカル俳優となっていたリア・ミシェル、ダレン・クリスのほか、本作でブレイクしたコーリー・モンテースなどを起用。また、オリヴィア・ニュートン=ジョンやブリトニー・スピアーズ、グウィネス・パルトローといったスターがゲスト出演する回もあり、音楽ファンや映画ファンを楽しませてくれます。

タイトルである「glee」とは、チーム一丸となり歌とダンスの芸術性を競い合うパフォーマンスのこと。歌唱力とダンスの表現力が同時に求められる高度な分野ですが、本作登場以前、アメリカの高校でgleeの人気はあまり高くありませんでした。『アメリカン・パイ』などの学園ドラマに描かれているように、同国の高校では体育会系生徒がヒエラルキーの頂点に君臨しており、文化系生徒は迫害の対象だったのです。本作でglee部に所属している生徒たちも様々な理由でつまはじきにされています。しかし、gleeのパフォーマンスに没頭するうち、他人の目を気にせずに生きる喜びに目覚めていきます。アメリカの実情を描きながらも前向きなストーリーだったからこそ、多くの視聴者の心をつかんだのでしょう。

◆造語「グリークス」を生み出し社会現象に

劇中では「geek」(ギーク)という言葉が登場します。これはマニアやオタクを意味する言葉であり、主に蔑称として使われてきました。実際、『Glee』の登場人物のほとんどは、学園生活で居場所がありません。ヒロインのレイチェルは服装も音楽の好みも古臭い女の子で、体育会系生徒からすれ違いざまにジュースをかけられるなど、酷いいじめを受けています。そんなレイチェルをはじめとしたキャラクターがglee部に入って自己表現の場を手に入れ、才能を開花させていく姿に全米のgeekたちは自分を重ね合わせたのでした。

やがて、「geek」と作品名を合わせた「グリークス」という造語が誕生し、ファンの愛称となっていきます。本作はアメリカで社会現象になり、劇中で使われた楽曲を収めたサントラは、全米のアルバムチャートで3作品連続1位を獲得。楽曲もシングルチャートでベスト10ヒットとなるなど、大反響を呼びます。キャストが実際に作中の楽曲を歌う全米ツアーも開催され、各地でソールドアウトと大盛況。ツアーの様子は2011年に『glee/グリー ザ・コンサート 3Dムービー』というドキュメンタリー映画になり、映画界でもヒットを飛ばしました。そしてついにはファッションブランドまで生み出すなど、『Glee』はアメリカ文化に新しい1ページを書き加えていくのです。

◆熱血教師が復活させ、悪役は鬼コーチ

本作の舞台はオハイオ州にある架空の学園、ウィリアム・マッキンリー高校。この高校では強豪のアメフト部と、女子生徒の憧れチアリーディング部が大人気で、文化系の部は隅に追いやられています。特に合唱部は不人気で、廃部の危機を迎えていました。かつて合唱部のエースだった教師、ウィル・シュースターは同部をよみがえらせようと自ら顧問になり、gleeを行う「ニュー・ディレクションズ」として再出発を図ります。入部したのは学園のはみ出し者ばかりですが、ウィルの熱血指導のもと、彼らは徐々にgleeの楽しさに目覚めていきます。

やがて、アメフト部のスターだったフィン、学園のマドンナであるクインといった面々も加わり、層を厚くしたニュー・ディレクションズは全国大会を目指して数々の大会で快進撃を始めます。そんな彼らの前に立ちふさがったのはチア部顧問のスー・シルベスター。あらゆる姑息な手段を使って同部を廃部に追い込み、チア部に予算を回させようと画策します。そうした障害にぶつかりながらも、ニュー・ディレクションズが絆を深めていくのが主な見どころ。もちろん、毎回披露される見事なパフォーマンスも外せない魅力でしょう。

◆見どころは何と言っても音楽!

ミュージカルドラマということもあり、作中の音楽には注目! ミュージカルというと、懐メロや古典的な雰囲気の楽曲を歌うイメージかもしれませんが、『Glee』で流れる楽曲は最新のヒット曲が中心。リアーナ、マルーン5、ケイティ・ペリー、カーリー・レイ・ジェプセンといった日本でも人気のあるアーティストの楽曲がアレンジされて本作を彩ります。もちろん、ビートルズ、クイーン、エアロスミスといったレジェンドの楽曲も披露され、新旧ヒット曲がバランス良く配置されています。

「いくら曲が良くても歌う側が良くなくては意味がない」と感じる人も心配無用。『Glee』キャストはミュージカルの舞台で鍛えていたり、厳正なオーディションを勝ち抜いたりと、実力は折り紙つき。例えば、レイチェル役のリアが歌う「パレードに雨を降らせないで」はミュージカル『ファニー・ガール』のカバーですが、並大抵の歌唱力でマスターできる曲ではなく、一流ミュージカルスターの底力を堪能できるナンバーです。本作に欠かせないダンスパフォーマンスもトップレベルで、ブリトニー役のヘザー・モリスなど実績のあるダンサーがレギュラー出演しています。

◆本作でブレイクしたキャストにも注目

『Glee』がきっかけで大ブレイクしたキャストもいます。たとえば、ウィル役のマシュー・モリソンはミュージカル界の人気俳優でしたが、実写作品では目立った実績を残せていませんでした。「かつてミュージカルスターを目指しながら少年少女を教える」ウィルはマシューにとってまさにハマリ役であり、一気に知名度を上げました。ワイルドな容姿で人気を博したパック役のマーク・サリングとともに、本作でのブレイクをきっかけに歌手デビューを果たしています。

スー役のジェーン・リンチは個性派女優として映画ファンから認知される存在でしたが、本作のおかげで一般的な人気を獲得。その後、ブロードウェイでミュージカルデビューを飾るなど、マシューとは逆のコースで仕事の幅を広げました。

「期待の若手」の一人でしかなかったクイン役のディアナ・アグロンも、本作でその美貌が人々の目に留まって、ロバート・デ・ニーロやミシェル・ファイファーと共演するまでになりました。シーズン4から登場したブレイク・ジェナーはその後、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』で映画初主演。無名時代の彼らが初々しい演技を見せる点も、本作を楽しむ上での注目ポイントでしょう。(海外ドラマNAVI)

Photo:『Glee/グリー』
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