『ウエストワールド』キャスト、シーズン2を語る~ジェフリー・ライト(バーナード・ロウ役)編~

いよいよ本日5月24日(木)23:00にBS 10スターチャンネルにてスタートする『ウエストワールド』シーズン2。難解で予測不能なストーリーで大勢のファンを獲得しているが、謎に包まれている本作や、そこから受けた影響について語ったキャストのインタビューを3回に分けてご紹介しよう。最後となる3回目の今回は、バーナード・ロウを演じるジェフリー・ライト

(本記事は、シーズン1のネタばれを含みますのでご注意ください)

――バーナードの人生には、すでに多くの紆余曲折がありました。彼の人生がどんな曲線を描くことになるのか、最初からご存知でしたか?

いや。バーナードは物語の中心となる人物で、この発見の旅に視聴者を導く案内役のようなものだ。このドラマとバーナードについて初めて(企画・製作総指揮を担う)ジョナサン・ノーランと話し合った時、僕はそう理解した。彼は探偵みたいなタイプの人物で、この物語に描かれている二つの世界に人々を連れてゆく"笛吹き男"(※笛を吹く男が大勢の子どもたちを連れていったというドイツの伝承に由来)でもある。僕は彼のそんなところに興味を持ったんだ。

舞台裏に相当するテクニカルな世界がバーナードの仕事場で、それゆえに彼はホストたちがどんな行動を取り、どんな過ちを犯すか熟知している。僕は当初、バーナードはどこにでもいる普通の男だと思っていた。彼は地味で仕事熱心なオタクで、面白味のまったくない人物だと思われている。でも、パイロット版の撮影が終わってシーズン1を撮り始めてから、バーナードも自分が置かれている現実の本質や、自分という存在について発見する旅をしているということに初めて気づいたんだ。それって、すごくクールなことだと思ったね。

 

――バーナードに関する衝撃の事実に視聴者は大いに驚きました。あなたもですか?

まあね。でも、手がかりはたくさんあった。それほど前のことではないけど、パイロット版をもう一度観たんだ。この物語がどんな始まり方をしたのか思い出したくてね。シーズン2に繋がる興味深いヒントもいくつかあった。(クリストファー&ジョナサン・)ノーラン兄弟は本当に頭がいいよね。

――次に何が起きるのか予想してみることはありますか?

先を読もうとするのはもう止めたよ。そんなことをするのは無駄な努力だからね。このドラマには元の資料となるものがなく、ジョナサンとリサ(・ジョイ)をはじめとする脚本家たちは自分たちのイマジネーションから物語を生み出している。物語の展開が人々の期待より少し整然としすぎていてスローなのは、それが原因でもある。これは脚本家たちがゼロから創作した物語で、コンピューターの出番も多い。彼らは腕がいいし、ジョナサンは元プログラマーだから今まさに起こっているテクノロジーの進化に順応している。彼はテクノロジーの進化に関する文化にも見解があり、どんどん進化する最先端のデジタルテクノロジーにも関心を持っているんだ。これは非常によく考えられたビジョンで、しっかり練り上げられたビジョンが見事に具現化されている。それだけではなく、多くの情報が含まれているんだ。

 

――物語の中心人物だったフォード博士は、シーズン1で死亡しました。あなたが以前のインタビューで話していたように、現在のリーダーはバーナードなのでしょうか?

いや、僕は「バーナードは自分が現在のリーダーだと思っている」と言ったんだ。少なくとも僕はそう思っているし、実際にそうなのかもしれない。バーナードは我々が知っている登場人物の中で、あの世界で使われているテクノロジーの本質を最もよく知っている。人間でもありホストでもある彼は、それについてユニークな見識も持っているんだ。だから、知識の面では彼がリーダーだと言ってもいいかもしれない。

でも、彼はシーズン1の終盤で頭に銃弾を撃ち込まれているから、認識力は万全の状態ではないし、それによって新たな事態が生じることにもなる。彼は自分自身の能力と格闘している最中なんだ。シーズン2では認識力を試される事態がほかにも起きる。前シーズンでもそうだったように、彼は発見の旅の途中なんだ。旅は続いているのに、彼の能力は以前と同じではない。危険は増しているが、バーナードの能力は低下しているんだ。

 

――現実というものの本質と作り上げられた現実の本質について何か感想をお持ちですか?

バーナードと彼の半生について、興味深い感想を何度か聞いたことはあるよ。人間らしさや人間の行動について探求するという経験は、俳優にとって非常に興味深いものだった。俳優は演技をする時に人間の行動を反復しているが、ホストたちもそれと同じように人間の行動を複製している。このドラマに説得力があるのは、それが我々の日常的な行動のメタファーにもなっているからだと思う。俳優であろうがなかろうが、人間は世界という舞台で生きる演者なのだから。だからこそ、人々はこのドラマの設定に夢中になっているんじゃないかな。

視聴者がホストたちに共感と親近感を抱いたのは、シーズン1のストーリーがホストたちの視点から描かれていたからだと僕は思っている。人々は自分が置かれている現実の本質や自分がその一部となっているループについて、それが外的要因によって押しつけられたものであろうと、自ら選んだものであろうと、時として疑問を感じるものだと思う。僕が思うに、我々は誰しも自由になることを求めている。どんな自由を望んでいるかは人それぞれで、何らかの枠の中にある自由に安心感を覚える人もいるだろう。

僕はバーナードに共感を抱く人たちから何度か面白い感想を聞かせてもらった。中でも特に興味深かったのが、サンフランシスコで行われたヒューマン・ライツ・キャンペーンのイベントで僕がLGBTQの団体から表彰された時に聞いた感想だね。そのイベントでスピーチをした後、男性同士のカップルが会いに来たんだ。結婚している年長の男性と若い男性のカップルだった。その年長の男性が、「カミングアウトするまで長年にわたって二重生活を送ってきた者として、私はあなたが演じているキャラクターに強く共感している」と言ってくれたんだ。彼は「バーナードと私には共通点がある。それは自分ではない何かに外見だけはならざるを得ないけれど、それが本当の自分とはまったく違う自分だということを自覚している点だ」と言っていた。社会を欺く仮面と本当の自分を隠す仮面という二つの仮面を被っていた彼は、他者と接する時に常に違う自分を演じてきた。その話には強く心を動かされたよ。

 

――"意識の覚醒"というジョナサンとリサの着想は、社会問題に対する新たな意識が芽生え始めている今の世の中を意識したものなのでしょうか?

意識とは何か、人間には自己決定をする能力があるのか、人はいつの時代もそういった疑問と格闘している。自由意思というものは本当に存在するのか、それとも幻影なのか? それは古代から続く永遠の謎だ。ジョナサンが興味を持っているのは人工的な自由意思というもので、政治的な意識とは別ものだと僕は思っている。でも、彼が関心を寄せてきたテクノロジーとその進化に関する問題は今まさに現実化していて、その点は時代に即していると言えるだろう。

彼の興味の対象になっているのはテクノロジーの進化が引き起こす社会的な問題や、誰がどのような意図でテクノロジーを利用するのかということだと思う。シーズン2にも引き継がれているけれど、それがこのドラマのテーマの一つなんだ。誰がどこでテクノロジーを利用しているのかということは、前シーズンですでに判明している。シーズン2では、その意図が解明されることになるだろう。

 

――あなたが出演した新作映画『O.G.(原題)』の撮影は、服役囚たちがいる本物の刑務所で行われていましたね。その時の経験によって刑罰制度に対する考え方が変わったそうですが、そのことについて詳しく説明してください。

あれほど過酷な環境で映画の撮影をしたことは一度もなかった。かつてないほど強い衝撃を受けたよ。こういう問題に関心を持っている人たちはすでに知っているだろうけど、生まれる前から刑務所に行くことを運命づけられているような人たちが確実に存在するんだ。誕生した時点で運命が決まっているという点は、このドラマのホストたちと共通している。どんなに選択肢が多くても、成功に繋がる道は10のうち一つしかない。だが、生まれ育った環境や階級によって、その道に行き着く可能性は下がってしまう。

犯罪や刑事司法に関する話題に偏見はつきものだが、一部の人たちが思っているほど人種の問題が強く影響しているわけではないと僕は思っている。刑務所に入ることになった原因が、幼少時のトラウマに関係していることもある。育児放棄や虐待、暴力がトラウマになっている場合もあるし、両親が薬物やアルコールの依存症で子どもの面倒を見なかったというケースも多い。犯罪者は逃れられない過酷なループの中で生きてきた。彼らのトラウマはとても理解できるものだったし、かなりヘビーだった。彼らを苦しめてきたのはトラウマだけではないんだ。

受刑者たちは深刻で凶悪な罪を犯したが、彼ら自身も大きなダメージを受けてきた。同情すべきだと言っているわけではないよ。僕が言いたいのは、我々は彼らの身の上を理解して、どうすればほかの人たちが彼らと同じ道を辿らないで済むかを考えるべきということだ。社会にはあらゆる犯罪に対する連帯責任があると僕は思っている。犯罪者は誰もいない場所で罪を犯すわけではないのだからね。

『O.G.』で経験したことには、俳優としても人間としてもショックを受けた。僕は自分の身を危険にさらすことなく、刑務所で自分を教育することができた。そういう機会に恵まれる人は少ないけれど、みなさんにも学ぶという目的を持って刑務所を訪れてみてもらいたい。僕たちは6週間にわたって、一日あたり13時間も刑務所で仕事をしたんだ。もし国会議員の全員がそれと同じことをすれば、社会は今より利口で健全、かつ安全になるし暴力も減るだろうね。

『ウエストワールド』シーズン2は、BS10スターチャンネルにて本日5月24日(木)23:00より独占最速放送。

Photo:『ウエストワールド』シーズン2
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