実話を元にしたミニシリーズ『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』が4月20日(土)22:00よりAXNミステリーにて放送される。同作は、38歳にして英国自由党の党首となったジェレミー・ソープが、同性愛が違法とされた時代にひそかに付き合っていた元恋人ノーマン・スコットの殺害計画を立てたとされるスキャンダルだ。英BBCで製作され、ヒュー・グラントとベン・ウィショー競演で魅せる本作の放送を記念し、主演二人のインタビューをお届けしよう。第2回はノーマン・スコット役のベン・ウィショー。演技の極意や、犬や馬との悲喜こもごもな共演について語ってくれた。
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――あなたが演じたキャラクターについて教えてください。
ノーマン・スコットは、本作の冒頭でジェレミー・ソープと初めて出会った時はとても若かった。一方のジェレミーは当時すでに自由党の議員で、そのカリスマ性と地位にノーマンは魅せられる。ノーマンは行き場のない根無し草で、ウィットと想像力、そして人々の同情心を買うことで生き延びていたんだ。だけど、僕自身がノーマン・スコット、別名ノーマン・ジョシフについて思うのは、とても強い人間ということだね。彼は本当にたくましいんだ。
――ノーマン本人に会ったのですか?
ああ。監督のスティーヴン・フリアーズと一緒に、撮影が始まる直前のロンドンでね。あの一連の出来事について彼自身から話を聞き、語らい合えたことは本当に素晴らしかった。彼はすごく面白くて、頭が良く、いたずら好きなんだ。一緒にいて楽しい人だよ。それって大きな意味を持つんだ。彼の身に起きたことは本当に恐ろしいことだけど、ノーマンは笑い飛ばしている。凄いことだよね。
――ノーマンとジェレミーの関係とは、どういうものだったのでしょう?
ある意味で、彼らの関係はとてもバランスが悪かった。ジェレミーは非常に大きな力を持ち、地位も業績も手にしていたが、ノーマンはそのいずれも持たなかった。だが別の次元では、彼らはとてもウマが合ったんだと思う。二人とも頭が良くて面白く、成功したいと考えていたからね。
――出演を決めた理由は?
ラッセル・T・デイヴィースの書いた脚本が気に入ったからだよ。ストーリーに魅了されたんだ。この件について僕はそれまで聞いたことがなかったけど、不条理であり茶番とも言える二人の関係に切り込み、何が起きたのかをしっかり描いていたからね。
――ジョン・プレストンの原作は読まれましたか?
撮影に入る前に読んだよ。実は今もまだ持っているんだ。数十年にわたる長い話なのにジョンはいろんな出来事をとてもうまくつないでいて、すごく参考になるよ。それを、ラッセルが原作と同じポーカーフェイスのユーモアと、同じ人間ドラマの味付けによって脚色しているんだ。本作はある種のダークコメディ、あるいはブラックコメディと言えるだろうね。それと同時に、何かしら悲劇的なものも含んでいる。
――実際に起きたことのシリアスな要素と面白い要素を切り分けるのは大変でしたか?
僕はいつもこう考えるようにしてるんだ。俳優にできるのは、そのキャラクターが見たように忠実に完璧に演じることだとね。だから、もしあるシーンが面白いのならそれはもともと面白いからであって、僕たちが実際よりも面白くする必要はない。人生は時として非常に面白かったり変わっていたりするものだけど、実際に起きたことと違うものを生み出すことはできない。シリアスなことが実はとても面白かったり、面白いことが実はとても悲劇的だったり感情を揺さぶられるものだったりする。そんな風に複雑に混じり合ったものが僕は大好きなんだ。
――フリアーズ監督たちとの仕事はいかがでしたか?
ずっとスティーヴンの作品のファンだったんだ。彼はストーリーテリングやカメラワークについて本能的に考えている。始終、編集された完成版を頭の中に思い描いているのだと思うよ。
脚本を執筆したラッセルの作品も10代の頃から好きだった。彼の書いたものはとにかく素晴らしいから、役者は脚本を信じて飛び込めばいいんだ。句読点の一つひとつに至るまで考え抜かれているからね。そしてシーンの多くに喜劇と悲劇の両方の要素がある。実に見事だよ。
――ヒュー・グラントとの共演はいかがでした?
ヒューと共演するのは大好きだよ。素晴らしい俳優だからね。ずっと前から尊敬しているんだ。美しく繊細なコミックパフォーマーである彼が、ジェレミー・ソープのように少し影のある役を演じるのを見るのはとても刺激的だった。彼は多くのアイデアを持ちながらも自由で、かつ思慮深い。そして自分の思うような演技ができるまで決して諦めないんだ。
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――このスキャンダルについて何か驚いたり、見方が変わったりしたことはありましたか?
もし僕が新聞や本でこのことを読んでいたらノーマンに同情しただろうね。俳優としては、ノーマンのことはもちろん同情するけれど、ジェレミーにも同情するよ。同性愛者である彼は時代のせいで正直に生きることができず、ひどく苦しんだわけだからね。それぞれの人物の視点から見てみれば、どちらも独自の問題を抱えており、独自の考えがあったんだ。
――ヒューはソープとして大変身しましたね。それについてどう思われますか?
眼の色が変わったのはちょっとした驚きだったね。ヒューは素敵な青い眼をしているけれど、ジェレミーの眼は茶色だったから。あれによってヒューの顔が一変したよ。もちろん内面も、いつものヒューとは大きく変わっていた。まるで別人だったよ。ジェレミーのやつれた顔の感じも見事に出していたしね。
――ところで、本編を見ているとノーマンは犬や馬が好きなようですが、あなた自身は動物好きですか? 本作では多くの動物と触れ合っていましたね。
うん、動物は大好きだよ。ノーマンが飼った最初の犬、ミセス・ティシュを演じたベラはとてもお利口だったね。お行儀が良くて、見事な"子役"だったよ。大抵の場合はね。一日のある時間帯になるとちょっと眠たくなっちゃってたけど(笑)
それと、ノーマンの馬を演じたピノキオもいる。彼は驚くぐらいに知的で経験豊かだったよ。どんな時でも「アクション!」の声を聞くと、すぐさま役に入り込むんだ。凄かったね。ただ、彼も我を忘れたことがある。雌馬が近くにいて、ピノキオが接近した時にすごく興奮したんだよ。その時は集中できなくなっていたようだから、撮影をパパッと済まさなくてはならなかった。でもそれ以外は、とてもプロフェショナルだったね。
あと忘れちゃいけないのが、グレートデーンのリンカ。正直なところ、とても複雑な体験だったよ。実はリンカは3匹いたんだ。まずダーシー。たしかこの子は午前中までしか持たなかった。その後、代わりとしてマノンとオリーヴがやってきた。本編を見た人はリンカが一匹と思っていただろうけど、実際には3匹が演じていたんだ。グレートデーンはとても美しいけど、雨が嫌いだし、同じことを2度繰り返したがらないからね。でも、誰だってそうだよね? すごく共感するよ。本当に優美な生き物だ。
――グレートデーンとのシーンについてもう少し話してもらえますか?
最も難しかったのは、グレートデーンとのシーンの多くが雨の中での撮影だったことだね。雨のシーンは、カメラに雨がしっかり映るように、霧雨ではなくどしゃ降りであることが多い。グレートデーンは雨が嫌いだから、僕たちは励ましたり周りを駆けさせたりしてご機嫌を取ろうとしたけど、相手はやる気を失って地面にべったり座り込んでしまったり、車の中に戻りたがったり、雨の降っていない場所に行きたがったりしたんだ。大変ではあったけど、とても美しい生き物だから僕自身は何でも許しちゃうよ。
『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』(字幕版)は4月20日(土)22:00よりAXNミステリーにてスタート。
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『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』
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