悪霊の仕業か、罪逃れの偽証か...司法心理学者が事件に挑むサイコミステリー『Evil』

悪魔にひょう依されたと述べ、有罪を逃れようとする被告。被告のまわりで起きる怪奇現象のナゾを、心理学者は解明することができるのか? サイコミステリー『Evil(原題)』は『グッド・ワイフ』のクリエイターが贈る米CBSオリジナル・シリーズ。9月下旬から放送開始した話題作だ。

「霊のしわざ」は偽証なのか?

司法心理学者・クリステン(カーチャ・ヘルダース『ウエストワールド』)の任務は、被告の精神の面から犯罪事件を検証すること。カトリック教会の司祭見習いであるデイヴィッド(マイク・コルター『ルーク・ケイジ』)から依頼を受けた彼女は、悪魔に取りつかれたという男と対面。犯行当時は悪魔に身体を乗っ取られていたと男は述べ、故に責任能力がないと主張する。

もともと信仰心のないクリステンは、悪霊や超常現象などの主張を偽証と断定し、看破を目指す。とはいえ、目の前で男が突如奇怪な行動に走ったり、検証のため悪霊が棲むという家に足を踏み入れたりした際には、さすがに彼女の表情も恐怖に歪むことになる。逃げ出したい衝動を抑えつつ、クリステンは犯罪心理学の知識を総動員。悪霊と聞けば一も二もなく信じてしまうデイヴィッドを尻目に、卓越した科学的見識をもって被告の証言の矛盾を暴く。

スリルだけではないスリラー

スリラー色の強い本作『Evil』は、刺激的な映像を求めている視聴者を満足させることだろう。ベッドの上、夢か現かも判然としないなか、黒い影がクリステンに迫るシーンは恐怖そのもの。心拍数が上がるこうした場面もさることながら、緊張のシーンで披露される予想外のウィットも魅力だと米Varietyは述べている。霊的な存在が初めて画面上に姿を現す瞬間、まったく予期しなかった展開に驚くことだろう。

スリルだけの一本調子な作品ではないと評価するのは米Hollywood Reporterも同じだ。前述のシーンを好例として挙げるほか、シリーズ後半で勢いを増すユーモアにも感心している。恐怖と笑いを織り交ぜた野心的なトーンの作品であり、毎話展開するミステリアスなストーリーに期待できる。

多面的なキャラで引き込む

ドラマの中心はクリステンとデイヴィッドのコンビであり、この二人のキャラクターがしっかりと描かれているために自然と内容にも興味が湧いてくる。現場ではプロ意識の高いクリステンだが、家ではまた別の顔が。ローンの支払いは遅れがちで、仕事から帰ればアルコールで一息つくのがお決まりのパターン、とVarietyは紹介している。気の緩んだ一面がほどよい親近感をもたらしてくれる。

デイヴィッドの方も存在感たっぷりで、仕事上のパートナーであるクリステンと男女の関係になるか否かで絶妙に視聴者の気をもませる。さらにはHollywood Reporterによると、超常現象を究明する彼自身が内面に霊的な存在を宿しているようだ。今後の展開にどう影響するか気になるところだ。

科学が超常現象にメスを入れる『Evil』は現在米CBSでシーズン1が放送中で、シーズン2への更新もこのほど発表された。同じ製作者による『グッド・ワイフ』はNetflixで視聴可能、デイヴィッド役のマイクも本作に麻薬王ルモンド・ビショップとして登場している。マイクが主演を務めるMarvel ルーク・ケイジはNetflixで全2シーズンを、クリステン役カーチャ出演の『ウエストワールド』はAmazon Prime Videoで全2シーズンを配信中だ。(海外ドラマNAVI)

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