鬼才デヴィッド・フィンチャー(『ハウス・オブ・カード 野望の階段』『セブン』)も惚れ込んだ英国ミステリードラマのリメイクとなるAmazon Original『ユートピア~悪のウイルス~』が10月30日(金)より独占配信中。カルト系コミック「ユートピア」に心酔する4人のファンが、地球上で起きる大災害を予見する原稿の存在を知ったことで、謎を解明し、悪のウイルスの蔓延を防ぎ、世界の終わりから人類を救おうとする...というストーリーだ。クリエイターを担うのはギリアン・フリン(『ゴーン・ガール』『KIZU-傷-(別題:シャープ・オブジェクツ)』)。キャストにはジョン・キューザック(『ハイ・フィデリティ』)、レイン・ウィルソン(『ジ・オフィス』)、コーリー・マイケル・スミス(『GOTHAM/ゴッサム』)らも名を連ねる。
そんな注目作のキャストたちのインタビューを5回に分けてご紹介! 今回登場するのは、4人のコミックファンのうち、変人を演じたデスミン・ボルヘス(ウィルソン・ウィルソン役)とリーダー格のジェシカ・ローテ(サマンサ役)。撮影現場の雰囲気やお気に入りのシーンについて語ってもらった。
――あなたたちの醸し出すケミストリーが素敵でしたが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
デスミン:本編で見てもらったものは、愛にあふれていた撮影現場の縮図なんだ。僕らキャストはみんなギリアン・フリンの大ファンで、共演者とも直接の知り合いではなくてもその仕事は知っていてファンだった。そして全員がエゴとは無縁で作品のために協力したんだ。憧れの存在だったジョン・キューザックもレイン・ウィルソンも本当に素晴らしい人たちだよ。そんな人たちに囲まれた最高の環境で、僕らは叫んだり逃げたり撃ったりしながら、シカゴ自慢のフルーツを食べていたんだ。
ジェシカ:希望の大切さや困難に立ち向かうというメッセージが含まれた素晴らしい作品に参加できてラッキーだった。誰でも特別な人間になれる。信念に従って世界を変えることができるのよ。参加した全員がストーリーに惚れ込み、自我を出すことなく毎日全力を尽くしたの。私にとって初めてのアンサンブルキャストだったけど、リハーサルの時からワクワクする現場で、作品に心血を注いだわ。毎日の撮影が終わった後で、デスミンがビールとバーガーを片手に脚本について語ってくれたりもしたの。この作品では家で勉強しなければならないこともたくさんあったけど、みんなで美しい友情を築くことができた。信じられないような経験ができて幸運に思うわ。
デスミン:現場では危険なこともあったんだ。みんな恐れ知らずで、感情的あるいは肉体的に難しいことも臆せずチャレンジしていたからね。スタントも何度か自分たちでやったよ。
ジェシカ:そうだったわね。スタントをした後、「面白いからもう一回!」なんて言ったりしてね(笑)
デスミン:(笑)
――お気に入りのシーンは?
ジェシカ:ちょっと欲張った回答になってしまうんだけど、一つはウィルソンの家の庭にある地下壕のシーンね。サマンサたちの絆を感じられるから。第2話に出てくるんだけど、実はあれが最初に撮った場面なの。その時からすでに共演者のことが大好きになっていたので、一緒に演じられることにワクワクしたし、とても才能のある人たちであることが分かったのがお気に入りの理由ね。
あと、コミコンでサマンサが男たちに一席ぶつシーンも大好きよ。大きな世界に飛び込んでみんなを救う使命を果たさないと、と説くのは彼女らしさが出ているから。ギリアンによって書かれた美しいモノローグをモノにするのは素敵な経験だった。
デスミン:お気に入りのシーンはいくつもあるけど、僕は父を早くに亡くしているから、父親とのシーンにはいつも特別な感情を覚えるね。まるで父親がよみがえってきてくれたように感じるんだ。(父親役の)リチャード(・コトフスキー)との共演シーンではウィルソンがどんな人間かが垣間見えると思う。彼はすごく頭がいい一方で、誰かに邪魔をされるとすねてしまうような子どもっぽいところもあるけど、父親のように気心の知れた相手となら殻を破ることができるんだ。
撮影していて楽しかったのは、クリストファー・デナム演じるアビーとの場面だね。あのシーンの撮影には2日間、一日あたり8時間かかった。今では良き友でもあるクリスのことはニューヨークで実際に顔を合わせる前から10年以上知っていてファンだったんだけど、人としても俳優としても尊敬している相手との共演シーンは疲れると同時に気分が高揚するものでもあった。これまでで一番リアルな演技ができたと思う。
――お二人が演じるキャラクターはあるコミックに熱中しているオタクですが、あなたたち自身がハマっているものは?
ジェシカ:私は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」が大好きなの。みんなもやるべきだと思う。チームの作り方や問題の解決法、創造性などについて学ぶことができるから。私自身は夫に誘われて始めたの。最初は「あなたのことは愛してるけど、それはちょっと...」って感じだったけど、実際にやり始めたら夢中になっちゃった。私のキャラクターは巨大なカメで、グロックという名前なの。すごく力が強いけどおバカさんで、ドウェイン・ジョンソンを崇拝してるのよ(笑)
デスミン:僕はシェフにすごく興味があるんだ。俳優になっていなければ自分もシェフになっていたと思うよ。誰かのおなかを美味しいもので満たしてあげたいんだ。大好きだった祖母とよく台所で過ごしていたのが影響しているんだろうね。彼女には人として大事なことを教わったんだ。ある時、妻と結婚前に行ったサンタバーバラのイタリアンレストランで、メニューを見ずにシェフのオススメを頼んだことがあるんだけど、とても楽しかった。次にどんな料理が来るのか分からなくて、届いたものがどれも素晴らしかったからね。心躍る体験だったよ。
――あなたたちが演じるキャラクターはどちらも思いがけない展開を迎えますが、それについて知った時の心境は?
デスミン:ウィルソンとサムに何が起きるかはもちろん知っていた。僕らが築いてきた素晴らしいケミストリーのことを考えると、第2話の脚本を読んだ時はショックだったし悲しかったよ。でも、もちろんどんな作品なのかは分かった上で参加しているわけだからね。本作のオリジナルは最初の3話しか見ていないんだ。デヴィッド・ケリーの演出もウィルソン役のアディール(・アクタル)の演技も素晴らしかったけど、僕自身のものを作り上げたかったから。
ジェシカ:序盤の展開を知った時はショックだったし悲しかったけど、それによって誰も安全じゃないということが示せたと思う。完全な悪人も完全な善人もいなくて、混乱していて厄介で面白くてダークな世界は、人生みたいに悲劇的なの。そんなところをギリアンはとても見事に捉えているわ。英国版もよくできているけど、彼女はそこに多くの人間性をもたらしているの。オリジナルではサムは存在しなかったから、そんなキャラクターをギリアンが生み出してくれたことに感謝している。起こるべき展開だったし、あれによってキャラクターの一人ひとりが成長することができた。
――本作に出てくるウイルスの話題は、新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威に苦しむ現在では非常にリアルなテーマです。それについてはどう思われますか?
デスミン:奇妙な偶然の一致だよね。劇中で描かれていたことが、今実際に起きているなんて不思議な気分だよ。こういう状況で特に怖いのは、何が次に起きるかが分からない中で孤立していることによって精神的にまいってしまうことだ。僕らは経済的にも精神的にもつらい状況にあるから、情報をきちんと教えてもらうことが重要だろうね。そして、怖くもあるけど面白くもある本作を見て、束の間でも現実を忘れてもらえればと思うよ。
ジェシカ:この作品を通して、みんなに希望や団結心を届けられればと思うわ。私たちは一人ひとりでは無力に感じたり失敗もするけど、力を合わせれば世界を変えることができるの。とても力強いメッセージだと思う。
――本作にはひねりやサプライズが満載ですが、そういうものの名手であるギリアン・フリンとの仕事はいかがでしたか?
ジェシカ:とにかく最高だった。デスミンの口癖なんだけど、ギリアンの関わっている企画があれば、中身を読んだり質問したりする必要はなくて、とにかく受ければいいの。彼女はとても頭が良くて謙虚で優しくて仕事熱心な人よ。これまで私が会った誰よりも、いい意味でひねくれた発想をするけどね(笑) 本作において彼女はオリジナルから絶対に必要な要素を抽出し、もともと見事だったストーリーにさらに磨きをかけ、新たなキャラクターに命を吹き込んだ。ギリアンは製作総指揮も務めていたからいつも現場にいて、時には私たちに自分の気づいたことを教えてくれるんだけど、その指摘はいつも的確で大きな助けになった。才能豊かな人と働けて最高だったわ。
デスミン:ジェシカも話していたけど、ギリアンの企画なら、まだオファーされていなくてもイエスと言うべきなんだ。出られなかったら心底ガッカリしていただろうね。僕はデヴィッド・フィンチャーのファンでもあるから、彼が関わっていた時の企画がHBOの予算の関係で実現しなかったのは残念だ。でもAmazonにおいて実現し、これまでに会った誰よりも賢くて思いやりがあり思慮深く才能がある女性によって作られたことに感謝しているよ。
ちなみに、本作には多くの女性が関わっている。メインキャストである(ジェシカ・ハイド役の)サーシャ(・レイン)や(ベッキー役の)アシュリー(・ラスロップ)のほか、ショーランナーはギリアンだし、製作者をはじめとしたスタッフとして大勢の女性が参加している。おかげで準備も撮影もとてもスムーズに進んだよ。これまで一緒に働いた男性陣を悪く言うわけじゃないけど、この業界では女性や有色人種の声が不足しがちだ。だから今回こういう作品に関われたことは特別な経験になったよ。
ジェシカ:デスミンが言ってくれたことに追加すると、私たちのバージョンではオリジナルに比べてギリアンが女性ならではの視点を持ち込んでくれたと思うわ。どのキャラクターに関しても感情と人間性が強まったと思う。特にサーシャが演じるジェシカ・ハイドは見事な進化を遂げているわ。これは、ギリアンでなければできなかったでしょうね。
『ユートピア~悪のウイルス~』(全8話)は10月30日(金)よりAmazon Prime Videoで独占配信中。
Photo:
Amazon Original『ユートピア~悪のウイルス~』