TVシリーズでは、視聴数やキャストの出演可否の意思、時にはその時の社会状況など、さまざまな要因が打ち切りの要因となり得る。特に、2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、更新が決まっていたシリーズでさえ先行きが不透明な状態に。最近では、絶賛されていた『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』が急遽打ち切りとなってしまった。もちろん、TVシリーズだけではなく、映画(公開延期が多発)や大規模イベント(中止やオンライン配信へ切り替え)にもその影響は及んでおり、業界全体が依然として不安定な状況下に置かれている。
今回は、現時点で新型コロナウイルスの影響により打ち切りが決まったTVシリーズをご紹介しよう。(米Entertainment Weeklyより)
『ザ・ソサエティ』(Netflix)
本作は現代版「蠅の王」と言われる作品で、大人が忽然と姿を消した裕福で平和な街を舞台に、戸惑いながらも必死に生き抜こうとする高校生たちを描くサスペンスドラマ。2019年5月にシーズン1が配信され、同年7月にはシーズン2の製作が決定していた。脚本もすでに執筆済みだったとのこと。
Netflixの幹部は、『ザ・ソサエティ』と、同じく打ち切りが決まった『ノット・オーケー』のパフォーマンスには満足していた一方で、制作スケジュールの不確実性や大規模キャストのニーズと可用性のバランス、パンデミックによる予期せぬ予算の増加を考慮して打ち切りを決断したという。
このニュースを受け、主人公アリー役のキャスリン・ニュートンはベッカ役のギデオン・アドロンとのInstagram Liveの中で「ショックだった」とコメント。9月に製作が始まる予定だったことを明かし、ギデオンは「私たちはすぐに戻れると思っていたのだけど...。実際にはクリフハンガーのまま終わることになってごめんなさい。そんなことはしたくなかったのに」とファンに伝えた。
『ノット・オーケー』(Netflix)
チャールズ・フォースマンによるアメコミをドラマ化した『ノット・オーケー』は、父親を自殺で亡くした後に突然スーパーパワーを覚醒させた17歳の少女シドニーが、友人や同級生を巻き込みながら、思いもよらない方向へ事態が進んでいく様がユーモアを交えながらダークに描かれる。今年2月から配信が始まり、正式な発表はなかったものの水面下ではシーズン2製作が決定し、脚本もすでに完成して、製作に入る準備が整っていたという。
Netflixは声明で「『ザ・ソサエティ』と『ノット・オーケー』のシーズン2は製作しないという難しい決断をしました」と発表。「コロナウイルスによりこの決定を下さなければならなかったことを非常に残念に思っています。また、『ノット・オーケー』のクリエイターであるジョナサン・エントウィッスル、クリスティ・ホール、ショーン・レヴィ、ダン・レヴィン、ダン・コーエン、ジョシュ・バリー、『ザ・ソサエティ』のクリエイターであるクリストファー・キーサー、マーク・ウェブ、そして世界中のユーザーのために番組製作に尽力してくれた全ての作家、キャスト、クルーに感謝しています」と述べた。
クリエイターのエントウィッスルは、Instagramに「この発表を受け、私とクリスティ・ホール、そして『ノット・オーケー』のキャストとクルー全員から、すべてファンに心から感謝します。コロナは本当に最悪なものです...。Netflixで『このサイテーな世界の終わり』と『ノット・オーケー』を製作できたことを誇りに思います」と綴った。
『スタンプタウン』(ABC)
作家グレッグ・ルッカによる同名グラフィックノベルが原作で、オレゴン州ポートランドを舞台に、元軍人でギャンブル好きな女性探偵デックス・パリオスが、ギャンブルの借金に追われながらも弟の面倒を見つつ、軍での経験を活かして事件を解決していく姿を描いたシリーズ。『アベンジャーズ』シリーズや『ママと恋に落ちるまで』のコビー・スマルダーズが主演を務め、ジェイク・ジャクソン(『New Girl ~ダサかわ女子と三銃士』)、マイケル・イーリー(『ALMOST HUMAN/オールモスト・ヒューマン』)、カムリン・マンハイム(『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』)らTVシリーズでお馴染みの面々が脇を固めた。
今回の打ち切りについて、ABCは製作のタイミングとスケジュールの問題を理由に挙げている。伝えられた情報によれば、制作のABC Signatureは他のプラットフォームでの続投を検討しているとのこと。
本作のプレミア時、コビーはEWの取材で「彼女(デックス)は私が今まで読んだどのキャラクターとも違う。それが本当にワクワクすることだった」とコメントし、「飲み過ぎとギャブル癖のある破天荒な人だけど、同時に、彼女は本質的に善人で、誰かを助けたいと思うとても真っ直ぐな人」と演じる役について話していた。
『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』(Netflix)
1980年代後半から1990年まで実際に放送されていた女子プロレス番組からインスピレーションを得た本作は、ロサンゼルスを舞台に仕事のない女優が女子レスラーとして、夢をつかむための最後のチャンスに賭ける姿を追うコメディシリーズ。昨年8月にシリーズファイナルとなるシーズン4への更新が発表されていたが、残念ながらこのまま幕を下ろすことに。
クリエイターのリズ・フラハイヴは「コロナウイルスのせいで、多くの人が亡くなりました。それは国家的な悲劇でありそこに尽力すべきですが、ウイルスはこの作品をも終わらせました。Netflixは『GLOW』の最終シーズンの製作を取りやめました。女性を題材にしたコメディを作り、彼女たちの物語を語り、そしてレスリングもするという自由を私たちは与えてもらえました。ですがもうそれは消えてしまったのです。今、世の中では本作のキャンセルよりも、もっとひどく重大なことが起こっています。ですが、それでもあの15人の女性が一緒にいるところを見られないのは残念です。キャストや勇敢なスタッフたちと別れることになり、寂しく思います。最高の仕事でした」とコメントしている。
『ビカミング・ア・ゴッド』(Showtime)
『スパイダーマン』シリーズのヒロインメリー・ジェーン(MJ)・ワトソン役で知られるキルステン・ダンストが主演、アカデミー賞で作品賞含む3冠を達成した映画『アルゴ』を手がけたジョージ・クルーニーが製作総指揮を務める本作は1992年の米フロリダ州オーランド市郊外が舞台。主人公のクリスタル(キルステン)は最低賃金のウォーターパークで働きながら、いつか貧乏暮らしから抜け出すことを夢見ていた。夫のトラヴィスも人生の成功を夢見てネットワークビジネス「FAM」に熱中しているが、まだ下層下級の会員。「FAM」の活動に反対するクリスタルだったが、とある事件をきっかけに自身もまた「FAM」と深く関わり始め、上級階級を目指す...というストーリー。
2019年8月に米Showtimeで放送スタートし、放送からわずか1カ月でシーズン2の製作が決定した話題作だった。放送局のShowtimeは、打ち切りの理由としてパンデミックの影響を挙げているが、制作を外部のSony TVに一任していたこともあり、シリーズの製作を続ける場合はコロナウイルスの感染防止策にかかる費用に加え、追加のコストとライセンス料を負担しなければならなかったため、このことも理由になったと考えられている。
コロナウイルスの影響により打ち切りが決まった作品は現時点で7作品(ここで紹介した作品以外に日本未放送の2作品有り)。そのうち6作は女性が主人公だったこと受け、コメディアンのアシュリー・レイは「なぜキャンセルに直面しているのが女性主人公の番組ばかりなの」とツイート。「複雑で多様な女性キャラクターについての作品は長寿だったのに、今はもうなくなってしまったの?」と問いかけた。
まだまだ終わりが見えない世界的なパンデミック。今後のエンタメ界がどうなっていくのかも気になるところだ。
(翻訳/Ai Ono)
Photo:
Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ソサエティ』シーズン1は独占配信中/Netflixオリジナルシリーズ『ノット・オーケー』シーズン1は独占配信中/『スタンプタウン』(c) ABC Studios/Netflixオリジナルシリーズ『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』シーズン1~3は独占配信中/『ビカミング・ア・ゴッド』(c) 2019 Sony Pictures Television Inc. and Showtime Networks Inc. All Rights Reserved.