1990年代に放送され、テレビドラマの歴史を変えたとも言われるミステリードラマの金字塔『ツイン・ピークス』。ローラ・パーマー殺害事件を軸に展開する本作は“犯人探し”が最大の魅力だが、実のところクリエイターのデヴィッド・リンチとマーク・フロストは明確な犯人を決めていたわけではなかったという。
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『ツイン・ピークス』のローラ・パーマー事件は謎解きが早すぎた!?
鬼才デヴィッド・リンチが手掛けて1990年代に一大ブームを巻 …
アイデア待ちで犯人名は空白のままスタート

スコット・メスローによる著書「A Place Both Wonderful and Strange: The Extraordinary Untold History of Twin Peaks(原題)」によると、リンチとフロストはシリーズ開始時点で、ローラを殺害した犯人を決めるつもりはなかったとのこと。フロストは、「それは明確なクリエイティブ上の決断でした。早い段階で決めてしまうと、自分たちの可能性を狭めてしまうと感じていたのです。後になって、もっと面白いアイデアが浮かぶかもしれないと思っていました」と振り返っている。
ただし、最終的に犯人を明かすかどうかについては、リンチとフロストの間で考え方に違いがあったようだ。フロストはいずれ事件を解決しなければならないと思っていたが、リンチは特に解決する必要はないと考えていたそうだ。
シーズン1が終わりに近づくにつれ、放送局のABCも犯人公開のタイミングを気にし始めていた。しかし、リンチとフロストはシーズン最終話で答えを示すどころか、さらに多くの謎やクリフハンガーを追加。フロストは、「ABCが本当にローラ殺害の真相を知りたければ、シーズンを更新するしかない構成にしたのです」と語っている。

そして、無事シーズン更新を勝ち取り、最終的にローラ殺害犯として明かされたのが、父親リーランド・パーマーだった。リンチは後年、「私たちは分かっていました。でも製作中は、ほとんど口にしませんでした。ただ、かなり早い段階から彼だろうと思っていたのです」と説明している。フロストも、「シーズン1の撮影前から、私たちは同じ考えに辿り着いていました」と述べつつ、「ただ、それは“恐ろしく悲惨な虐待”の物語になることを意味していました」と振り返っている。
興味深いのは、キャストたちにも犯人が知らされていなかった点だ。リンチとフロストは撮影中、出演者たちに“誰が犯人だと思うか”をそれぞれ書かせ、封筒に入れて保管していたという。
ジャコビー博士役のラス・タンブリンは、「しばらくの間、自分がローラを殺したのではないかと思っていました」と告白している。彼がリンチに「ジャコビーが犯人なのか?」と尋ねたところ、「まだ決めていない」と返されたという。ラスは、「彼は、犯人かもしれないという感覚を持ったまま自然に演じてほしかったのだと思います」と語っている。
ジェームズ役のジェームズ・マーシャルは、「彼ら自身がまだ決めていないと思っていたので、自分も特に推測しませんでした」と回想。オードリー役のシェリリン・フェンは、「自分が犯人じゃないことだけは確認したかったです」と話しており、ホーク役のマイケル・ホースは、「デヴィッドのことだから、木が犯人でもおかしくなかった」と冗談交じりに振り返っている。

そして、リーランド役のレイ・ワイズは真相を知らされた瞬間について、「デヴィッドが私の膝を叩いて、“レイ、君なんだ。最初からずっと君だった”と言ったんです」と明かしている。しかしレイ自身は、「“いやいや、そんなはずはない。今思いついたんだろう”、と心の中で思いました」と苦笑しながら回想している。
殺人犯が不明のまま製作された『ツイン・ピークス』の予測不可能なところこそが、本シリーズが今なお唯一無二の不穏さと熱狂を生み続けている理由かもしれない。(海外ドラマNAVI)







