『ツイン・ピークス』のローラ・パーマー事件は謎解きが早すぎた!?

鬼才デヴィッド・リンチが手掛けて1990年代に一大ブームを巻き起こし、今もなおカルト的な人気を誇る『ツイン・ピークス』。同作でリンチとともにクリエイター・製作総指揮を務めたマーク・フロストが、「ローラ・パーマー事件は謎解きが早すぎた」と語っている。米Varietyが報じた。

リンチは「謎を解くべきではない」と主張するも…

『ツイン・ピークス』シリーズは、ドラマとして3シーズン(リミテッドシリーズ含む)続き、劇場版映画も作られた上、少なくとも6冊の公式本がリリースされた。熱狂的な支持を受け、放送開始から30年以上経っても語り継がれている。同シリーズは、テレビ史上最大の謎の一つ、「誰がローラ・パーマーを殺したのか?」から始まったが、残念ながらシーズン2第9話でその謎が解けたことが作品の終焉を早めた。特に、同作を放送していた米ABCの当時の親会社キャピタル・シティ社の幹部が、この特異なシリーズを激しく嫌うようになったことで終焉はいっそう早まることに。

「デヴィッドはいつも"(ローラの)謎を解くべきではない、これは永遠に謎のままにしておくべきだ"と言っていた。彼は正しかったかもしれないと思う自分がいるよ」と、問題のエピソードの脚本を執筆した一人であるフロストは語る。1990年4月から1991年6月までABCで放送された『ツイン・ピークス』は、1960年代に同局で放送されていた『ペイトン・プレイス物語』のようなソープ的な田舎町のドラマと、リンチのシュールレアリスムが融合。ストーリーテリングからキャラクターが徐々に明かしていく側面、イメージ、雰囲気に浸るために、型にはまったプロットから逸脱することを恐れず、クリエイターの特異な感性を存分に発揮した作品となった。

フロストが先日、Varietyのインタビューに応じて以下のように答えた。「(ローラ・パーマー事件の謎解きは)間違いなく早すぎた。だが、ABCからまるで銃を頭に突きつけられているような状態だったんだ。犯人を明かさなければ、彼らは制作資金を止めるつもりだったと記憶している。彼らは、シーズン2の開始早々に犯人を明かすよう望んでいた。でもデヴィッドはいつも、"(ローラの)謎を解くべきではない、これは永遠に謎のままにしておくべきだ"と言っていた。彼は正しかったかもしれないと思う自分がいるよ。少なくとも(全22話の)シーズン2いっぱいは犯人を明かさなくても許される範囲内だったと思う。シーズンの最後までは、あのダイナミックなストーリーで簡単に乗り切ることができたはずだ。しかしあの当時、まだ時代は1992年で、全国放送のTV局作品で、局のトップに逆らうのは難しかった」

さらにシーズン2の出来についてはこう話した。「謎解きまでの全体的な展開にはとても満足している。最初の9話までは、シーズン1に劣らない出来だと思う。一部の俳優たちのプライベートな人間関係のせいで、うまくいかなかったストーリーもあったがね」とフロスト。これは、シェリリン・フェン(オードリー・ホーン役)が2014年に明かした話を指しているものと思われる。当時カイル・マクラクラン(デイル・クーパー捜査官役)と交際していたララ・フリン・ボイル(ドナ・ヘイワード役)が、クーパーとオードリーが関係を深めるという展開に不満を漏らしていたことのようだ。

根強い人気を誇る『ツイン・ピークス』は25年後にリミテッドシリーズも制作されたが、今後新たに何かが作られる可能性はないとフロストは語る。「結末には満足している。デヴィッドは私にこう念を押した。”過去に戻って歴史を弄んではいけない。歴史というものは刻まれているものだ“と。そう考えると、ある意味でクーパーの悲劇的な欠点が明らかになった。常に正すべき過ちがあり、救うべき誰かがいると彼は考えている。だが、人生はそれほど単純ではない。そのような強大な力に干渉すると、予期せぬ結果を招くこともある。だから、この作品の幕を下ろすのはふさわしいと思った。絶対にないとは言い切れないが、今のところ今後については何も話は出ていない」

『ツイン・ピークス』シーズン1~2、『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』、『ツイン・ピークス The Return』はU-NEXTにて配信中。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Variety