ハリウッドにおけるTVドラマの評価を急上昇させた作品として間違いなく名前が挙がるであろう『ブレイキング・バッド』。2008年から2013年まで計5シーズンにわたり放送された同作は、その圧倒的なクオリティから高い評価を得た。本作をきっかけにTVドラマに対する見方が変わり、気鋭の才能たちがこぞってTVドラマに参入することとなり、数々のハイクオリティ作品が世に送り出されていくことになる。いわば海外ドラマ史において最も重要な作品の一つなのだ。そんな『ブレイキング・バッド』に出演していたキャストたちは、現在、どのような活動を行っているのだろうか?その行方を追ってみた!
ブライアン・クランストン(ウォルター・ホワイト役)

本作の主人公であり、生真面目な化学教師と凶悪な麻薬ビジネスでのし上がっていくハイゼンベルグの二足の草鞋を履いたウォルター・ホワイト。善と悪の二面性を見事な演技で演じ切ったブライアン・クランストンは、本作への出演以前、意外にもティーン作品への出演で有名な俳優だった。1980年の俳優デビュー後、もっぱらTVドラマや映画への端役出演が多かったブライアンは、デビューから20年もの月日を経て、2000年に出演した『マルコム in the Middle』で一躍人気スターの仲間入りを果たした。主人公の父親役に扮したブライアンは抜群のコメディセンスを披露し、エミー賞にも複数回ノミネートされるなど高く評価された。
そしてブライアンは2008年、『ブレイキング・バッド』のウォルター役に抜擢されると、そこから凄まじい快進撃が幕を開ける。『ブレイキング・バッド』が放送された5年間で、実に4度のエミー賞主演男優賞を受賞したほか、ゴールデン・グローブ賞や全米映画俳優組合賞も受賞。押しも押されもせぬ実力派俳優としての地位を確立していく。
その後、ハリウッドでも引く手あまたの存在となったブライアンは、映画『GODZILLA ゴジラ』(2014)、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2016)、『30年後の同窓会』(2017)などで名優の称号に相応しい圧倒的な演技を披露。2019年には『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』にて、約6年ぶりにウォルター役を再演し、ファンを歓喜させた。
また、ブロードウェイにも幾度となく出演しており、過去には2度のトニー賞受賞歴がある。舞台俳優としての評価も高いのだ。間もなく70歳を迎えようとしているブライアンであるが、近年は、シリアスからコメディまで幅広い役柄をこなしながら、「カンフー・パンダ」シリーズを初めとした作品で声優にも精力的に挑戦している。
もちろんTVドラマへの出演も顕著で、『Your Honor/追い詰められた判事』やApple TV+配信『ザ・スタジオ』におけるグリフィン・ミル役も記憶に新しい。
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アーロン・ポール(ジェシー・ピンクマン役)

ウォルターの教え子で、ハイゼンベルグのパートナーとして活躍するジェシー・ピンクマン。シリーズの箸休め的な役割も果たしており、視聴者からの人気が高かったキャラクターである。
そんなピンクマン役に扮したアーロン・ポールは、1998年に俳優デビューを飾り、主にTVドラマのゲスト出演でキャリアを積んだ。
『ブレイキング・バッド』出演後は、ブライアンと同様に人気俳優の地位を確立。人気ゲームの実写映画版となるカー・アクション『ニード・フォー・スピード』(2014)や豪華キャスト共演のアクション・スリラー『トリプル9 裏切りのコード』(2016)、米HBO製作のSFドラマ『ウエストワールド』といった話題作に主演級の役どころで出演した。
近年は、年齢が46歳を迎え中堅どころからベテランの域に差し掛かりつつあり、SFサスペンス『アッシュ ~孤独の惑星~』(2025)では円熟味の増した貫禄の演技を披露している。
また、2013年に結婚した妻ローレンとの間には、2018年に第一子となる長女が、2022年には第二子となる長男が誕生しており、公私ともに幸せな日々を送っているようだ。
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アンナ・ガン(スカイラー・ホワイト役)

ウォルターの妻スカイラー役として存在感を示したアンナ・ガンは、1992年に女優デビューを飾り、映画『エネミー・オブ・アメリカ』(1998)やTVドラマ『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』ジーン・ウォード役などで、熱心な洋画、海外ドラマファンの間ではすでに認知されている女優だった。そんなアンナは『ブレイキング・バッド』において、献身的な妻だった序盤から麻薬ビジネスの世界で貫禄を増していく終盤までキャラクターの心情の変化を体現。ベテラン女優らしい貫禄の演技を魅せつけた。
その後は、ジェニファー・ロペス主演のクライム・アクション『シェイズ・オブ・ブルー ブルックリン警察』を初めとしたTVドラマから映画、舞台に至るまで、57歳となった現在も精力的に活動中。
2024年にはApple TV+にて配信されたコリン・ファレル主演のサスペンス・ミステリー『シュガー』で印象的な演技を披露した。
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ディーン・ノリス(ハンク・シュレイダー役)

ウォルターの義理の弟にあたり、DEA(麻薬取締局)の捜査官でもあるハンク役を演じたディーン・ノリス。彼もまた1981年の俳優デビュー以来、数多くの作品で名演を魅せてきたベテラン俳優であり、『ブレイキング・バッド』出演以前から『トータル・リコール』(1990)、『ターミネーター2』(1991)、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)といった大作映画で印象的な好演を魅せていた。
『ブレイキング・バッド』出演後は、主戦場をTVドラマへと移し、スティーヴン・キング原作によるサスペンス・ミステリー『アンダー・ザ・ドーム』を初め、『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』や『LAW & ORDER: 組織犯罪特捜班』といった人気ドラマでも存在感を発揮。62歳となった現在でも、その演技の振れ幅から、名脇役としての地位を欲しいままにしている。
また、ハンクにちなんで「シュレイダー」という名を冠した自家製ビールの醸造にもチャレンジしている。
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ベッツィ・ブラント(マリー・シュレイダー役)

ハンクの妻であり、ウォルターの妻スカイラーの妹であるマリー・シュレイダーを演じたのがベッツィ・ブラント。『ブレイキング・バッド』以前にも『CSI: 科学捜査班』や『ボストン・リーガル』といった人気ドラマにゲスト出演するなど、キャリアを着実に積んでいた。
本作で一躍、知名度を高めたベッツィは、シリーズ終了後もTVドラマを中心に活躍。シットコムの『Life in Pieces(原題)』で、主人公一家の一員であるヘザー役を2015年から2019年まで務め上げ、高いコメディセンスを発揮。近年では、ミステリードラマ『セイントX』(2023)や、スピンオフ品『ベター・コール・ソウル』の最終シーズン(2022)でマリー役を再演し、ファンを喜ばせた。さらに、現在撮影中のアン・ライス原作の話題作『メイフェア家の魔女たち』シーズン3にレギュラー出演することが決定しており、今後の活躍にも期待が持たれる。
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RJ・ミッテ(ウォルター・ホワイト・Jr役)

ウォルターとスカイラーの息子であり、脳性麻痺を抱えるウォルター・ホワイト・Jr.(愛称フリン)役を演じたのがRJ・ミッテである。役柄と同様、RJ自身も軽度の脳性麻痺を抱えているが、作中のウォルター・Jr.よりも症状は軽いという。彼は、この役のために杖を使う練習をしたというエピソードが知られている。
RJの出演は、エンターテイメント業界における障害者の描写と機会について議論を巻き起こすきっかけにもなった。彼は、ハリウッドがもっと障害を持つ俳優を受け入れるべきだと積極的に訴え、障害者の認知度向上にも尽力している。
『ブレイキング・バッド』で知られるようになったRJは、その後も俳優として活動を継続。2014年には他のキャストらと共に全米映画俳優組合賞のドラマ・ミニシリーズ部門でアンサンブル賞を受賞。2019年にはジョン・トラボルタの兄として知られるジョーイ・トラボルタ監督による映画『キャロル・オブ・ザ・ベルズ/再会の日』で主演を務めた。
最新作『Westhampton(原題)』は2025年のトライベッカ映画祭でプレミア上映されたほか、『Love Me Dead(原題)』など複数の新作公開も控えている。プライベートでは、2025年10月に長年の恋人へのプロポーズが報じられ、公私ともに充実した日々を送っているようだ。
『ブレイキング・バッド』放送終了からすでに12年…。2019年に映画版を一度挟んではいるものの、それでも年月の流れを大いに感じさせる。アメリカTVドラマ史を見ても、間違いなく上位にランクインしてくるであろう名作に出演していたキャストたちは、その後も様々な作品で活躍を見せている。彼らが今後も長きにわたり、第一線で活躍し続けることを願うばかりだ。
『ブレイキング・バッド』全5シーズンはHulu、Netflixにて配信中。








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