
名作ドラマ『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』のトニー・ソプラノ役にジェームズ・ガンドルフィーニ以外の俳優を想像するのはほぼ不可能だ。しかし、同作のクリエイターであり、前日譚映画の脚本も担当したデヴィッド・チェイスは当初、ジェームズにはマフィアのボスを演じるにふさわしい迫力が足りないのではないかと心配していたという。
ジェイソン・ベイリーによるジェームズの伝記「Gandolfini: Jim, Tony, and the Life of a Legend(原題)」に書かれている内容を、米Vultureが紹介している。
ジェームズ・ガンドルフィーニ、一年以内に失業すると考えていた!?
「なんてこと、トニー・ソプラノはここにいるわ!」と、当時ジェームズのマネージャーであったナンシー・サンダースは、『ザ・ソプラノズ』の脚本を読んだ直後に叫んだという。その後、サンダースの紹介でジェームズの映像を見たチェイスは、「彼は素晴らしいと思う。一つ気になるのは、彼が(マフィアのボスとして)十分に脅威的に見えるかどうかだ」とサンダースに問いかけた。
『ザ・ソプラノズ』の主人公トニー・ソプラノは、マフィアのボスとして冷徹でカリスマ的な面を持ちながら、父親、ボスとして家族や組織のことで悩むあまり精神科に通うこともある複雑な人物。一方、当時のジェームズは映画界を主戦場としており、主役を演じたことはまだなかった。
果たして、ジェームズはトニー・ソプラノ役にふさわしい俳優なのか? そんなチェイスの疑念を、サンダースは即座に払拭。「もしあなたが、“彼は少し太り気味だ”とか “髪が薄くなっている”と言うなら理解できる。でも、彼には十分な威圧感がある。この人こそ、あなたが探しているトニー・ソプラノよ」と強調した。
マネージャーのお墨付きとはいえ、ジェームズ自身も当時は懐疑的だったようだ。「俺なら問題なくトニーを演じることはできる。でも、どうせ自分は選ばれないだろう。制作側はもっと見た目のいいイケメン、最近テレビでよく見かけるアイルランド系っぽい顔の俳優を選ぶと思っていたよ」と本の中で回想している。
その後、ジェームズとチェイスは顔を合わせ、ジェームズが脚本を読んだ時にチェイスは「彼はこの役にぴったりだ」と確信することになった。
ちなみに、それまでドラマにほとんど出たことのなかったジェームズは、HBOドラマの主役という仕事にあまり魅力を感じていなかった。「映画をやりたくて君(サンダース)のところに来たのに、HBOのドラマだって? どんな放送局なのかすら知らないよ」と不満も漏らしていたという。しかしサンダースはこの作品の可能性を見抜いていた。「ジム、聞いて。これは私が今までに読んだテレビ、映画、舞台の脚本の中で最高の出来よ。約束するわ、これはやる価値がある。テレビ業界を変えるものになるわ」と説得。それでもジェームズは「自分は一年以内に失業するだろう」と考えていたようだが、サンダースに背を押されて渋々トニー役を引き受けることに。
結局、トニー・ソプラノ役がジェームズにとって当たり役となったのはご存知の通り。彼の力強い存在感と深みのある演技は『ザ・ソプラノズ』を単なるマフィアドラマ以上のものにし、全6シーズンにわたって主演を務めたジェームズはエミー賞を3度、ゴールデン・グローブ賞を1度受賞した。ジェームズ自身は2013年に急死してしまったが、トニー・ソプラノというキャラクターは今もなお多くの人々に愛されている。
『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』全6シーズン、前日譚映画『ソプラノズ ニューアークに舞い降りたマフィアたち』はU-NEXTにて配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Deadline
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Photo:『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc.