今月10日に米HBOでの放送開始から25周年を迎えた『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』。クリエイターのデヴィッド・チェイスが、このアニバーサリーはテレビ黄金時代の葬式だと語った。米Entertainment Weeklyが伝えている。
『ザ・ソプラノズ』のような作品はもはや必要とされない?
ニュージャージー州を拠点とするマフィアのボス、トニー・ソプラノを主人公に、彼のマフィアとしての活動や妻子との関係を描き、1999年1月8日から6シーズンにわたって続いた犯罪ドラマ『ザ・ソプラノズ』。その芸術性や物語としてのクオリティの高さで、全米脚本家組合が選ぶ「テレビ史上最高の脚本」で1位を獲得したりエミー賞をはじめとした賞レースを総ナメにしたりして、TVシリーズは映画よりも劣るという風潮を覆した記念碑的作品とも言えるが、そのアニバーサリーにクリエイターが思いがけないコメントを発した。
「たしかに25周年だ。もちろん喜ばしいことだよ」と英The Sunday Times紙に話したチェイス。「でも、きっとそんな風に捉えるべきではないと思う。葬式のようなものとして見た方がいいんじゃないかな」
チェイスは地上波の放送局に勤めた後、ケーブル局のHBOに移り、広告などのプレッシャーから解放された作品作りをしてきた。「あの頃、地上波の放送局は芸術の落とし穴だった。プロセスはゾッとするものだった。こういう人たちは会議でいつも、そのエピソードをやる価値のあるものにしている唯一のものを取り除いてほしいと頼んでくる。辞めるべきだったよ」と、放送局にいた頃を振り返る。その後『ザ・ソプラノズ』の成功によって、愚かで欲深い放送局の人間がいかに数十年を無駄にしたかを後悔させることができたと思っていたが、近年は動画配信サービスにも広告が取り入れられたりと、似たようなことが起きていると感じているようだ。
「既に、もっとレベルを下げろと言われた」というチェイス。伝記ドラマ『パム&トミー』の監督ハンナ・フィデルとともに、証人保護を強制される高級娼婦のドラマを作ろうと試みた際、「表現が複雑すぎる」という“残念な真実”を告げられたそう。「一体誰のためなんだ? 株主か?」と苦言を呈している。
さらにチェイスは、マルチタスクと世界的なスマートフォン依存に対しても懸念を示している。「我々は混乱していて、観客は物事に集中することができないように見える。だからたくさんの意味があって、観る者の集中力を必要とするものを作ることができない」と意見。「だから葬式なんだ。何かが死にかけている」と結論付けた。
チェイスが言うことにも一理あるが、果たして本当に黄金時代は終わり、優れた作品はもう生み出されないのだろうか?
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Photo:『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』©2006 Warner Bros. Entertainment Inc.