英Guardian紙が「21世紀のドラマ・ベスト100」を発表している。どんな作品が揃ったのか、厳選のベスト10作品を見てみよう。
過去20年の秀作ずらり
同紙は100位までのランキングを掲載しており、上位10選を抜粋すると以下のようになる。今年波乱の幕引きを遂げた『ゲーム・オブ・スローンズ』など最新の話題作から、2001年放送開始の『ジ・オフィス(イギリス版)』といった名作まで、新旧の人気作が集まった。
1位:『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』(Amazon Prime Video)
2位:『THE WIRE/ザ・ワイヤー』(Amazon Prime Video)
3位:『MAD MEN マッドメン』(Amazon Prime Video)
4位:『官僚天国!~今日もツジツマ合わせマス~』(過去にWOWOWで放送)
5位:『ブレイキング・バッド』(Netflix)
6位:『The Office(ジ・オフィス)』(イギリス版)(Hulu)
7位:『ゲーム・オブ・スローンズ』(Amazon Prime Video/Hulu)
8位:『Fleabag フリーバッグ』(Amazon Prime Video)
9位:『ピープ・ショー ボクたち妄想族』(Netflix)
10位:『アトランタ』(Netflix)
カッコ内は日本での視聴方法を示している。通常こうしたランキングではNetflixがやや優勢だが、今回の番付ではAmazon Prime VideoとHuluで視聴できる作品もバランスよく揃ったようだ。加入済みであれば、この機会にぜひチェックしてみたいところだ。
知られざる職業の世界を知る、1位~5位
職業ものはドラマの人気ジャンルだが、上位5作品はまさにこのジャンルの作品が占めている。きらびやかな広告ビジネスからダークな裏稼業まで、知られざる世界にどっぷりと浸ろう。
堂々1位に輝いたのは、クライムドラマ『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』。闇の社会に生きる者の情熱と悲哀を、人間味たっぷりに描く。ニュージャージー郊外でマフィアをまとめ上げるトニーは、立場に似合わずメンタルがとっても弱め。裏稼業と家族の狭間でストレスが溜まり、やがて倒れてしまう。人情たっぷりのストーリーをブラックなユーモアで包む本作には、気づけばマフィアに感情移入しているという不思議な魅力が。過去にWOWOWでも放送した本シリーズは、現在Amazon Prime Videoで全6シーズン配信中。
2位『THE WIRE/ザ・ワイヤー』は、ハードボイルドな刑事ドラマ。ワシントンD.C.にほど近い都会・ボルティモアで、ドラッグの売買が横行。ディーラーたちの検挙に執念を燃やす所轄警察は、署内でも一癖あるメンバーばかりを集めた特別捜査班を結成する。それぞれに強みを持った者たちの寄せ集め部隊は、麻薬組織とどう渡り合うのか。暗号解読、電子ガジェット、証人保護など刑事ドラマとしての旨みに、一匹オオカミの捜査員といった人間ドラマの魅力をプラスした。Amazon Prime Videoで全5シーズン配信中。
続いて3位は、華やかな広告業界の内情を描いた『MAD MEN マッドメン』。1960年代のニューヨークで活躍する、凄腕広告マンのドン・ドレーパーが主人公だ。クライアントからの信頼が厚い彼には、妻を差し置いて不倫に走ってしまうプレイボーイの一面が。私生活と職場の両方で、秘密とウソが混じり合った複雑なストーリーが紡がれる。現時点で定額配信では視聴できないため、興味のある方はAmazon Prime Videoなどの単話レンタルを利用しよう。
4位の『官僚天国!~今日もツジツマ合わせマス~』は、政治家と高級官僚たちを皮肉るポリティカル・コメディ。政府の広報局長であるタッカーが、スキャンダルまみれの大臣などと舞台裏で駆け引き。マスコミへの醜聞流出を毎回水際で食い止める。イギリス特有のシニカルなジョークが冴え渡る、テンポの良いコメディ作品だ。残念ながら現在日本では配信されていないが、過去にWOWOWで放送していた時期に観たという方もいるかもしれない。
5位には、2008年から5シーズン放送された名作『ブレイキング・バッド』がランクイン。真面目な化学教師だったウォルターだが、肺ガンと診断されたことで生き方を一新。家族に遺産を残したい一心で、違法ドラッグの精製に手を染める。一介の精製者からスタートし、やがて裏社会の階段を登ってゆくストーリーはドラマ性満点。現在Netflixで配信中だ。今年10月11日(金)には、Netflixオリジナルの続編映画『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』の配信が控えている。
誰もが物語の主人公! ふつうの暮らしが輝く6位〜10位
警察や政治家など専門職の世界を描いた5位までの作品とは対照的に、6位以下は比較的日常寄りのシリーズが目立つ。平凡な状況設定から笑いを作り上げる脚本家たちの手腕には脱帽だ。
オフィスという身近な場所をコメディの舞台に変えてしまったのが、6位『The Office(ジ・オフィス)』。自身を才能あるボスだと思い込んでいる勘違い上司により、職場全体が上を下への大騒ぎ。イギリス作品として初めてゴールデン・グローブ賞を獲得した抱腹絶倒コメディだ。2001年の放送開始からすでに20年近くが経つが、いまだ色あせることがない名作。現在Huluが全3シーズン配信している。ちなみに直近の報道によると、アメリカ版『ジ・オフィス』のリブートを米NBCが検討しているようだ。
7位は言わずと知れた王道ファンタジーの『ゲーム・オブ・スローンズ』。架空のウェスタロス大陸を舞台に、7つの王国が「鉄の玉座」をめぐり紛争に明け暮れる。ジョージ・R・R・マーティンによるベストセラー小説『氷と炎の歌』を、米HBOが壮大なスケールで映像化した。エミー賞ドラマシリーズ部門の常連作品だ。Amazon Prime Videoではシーズン6まで、Huluでは最終章の直前・シーズン7まで楽しむことができる。
8位『Fleabag フリーバッグ』も、この手のランキングで必ず名前が挙がる注目作。2013年に舞台が上演された際には批評家から辛辣なコメントが寄せられたものの、2016年にスタートしたドラマ版は飛ぶ鳥を落とす勢いとなった。強気に生きながら、どこかで癒しを求めているロンドン女性・フリーバッグ。その前代未聞の生き方を、シニカルな視点で描く。Amazon Prime Videoで配信中だ。
9位はコメディ『ピープ・ショー ボクたち妄想族』。だらだらした性格が災いし、恋人との同棲生活が終わりを迎えてしまったジェレミー。友人マークの家に転がり込むが、彼もまた堅実とは言えない生活ぶりで...。本作は好対照な二人の性格が楽しいコメディ・シリーズで、2015年までに9シーズンが製作されている。シーズン4では英国アカデミー賞・テレビ部門の最優秀コメディ賞を獲得した実績が。Netflixで配信中だ。
10位の『アトランタ』は、その名の通りアメリカ・アトランタ州に暮らすラッパーボーイたちが主役。「ペーパーボーイ」のアーティスト名で成功した従兄弟の後を追い、青年・アーンは音楽の世界に飛び込む。シュールさとブラックジョークが売りのコメディで、現在シーズン1と2を公開しているが、すでにシーズン4までの更新が決定している。Netflixで視聴可能だ。
以上、Guardian紙が推す「21世紀のベストドラマ」上位10作品をご紹介した。2000年代初期の若干古い作品もあるが、秀作のオーラは現代の視聴者にもきっと届くはずだ。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. 『THE WIRE/ザ・ワイヤー』© Home Box Office, Inc. 『MAD MEN マッドメン』© AMC 『ブレイキング・バッド』© Frank Ockenfels/AMC 『ゲーム・オブ・スローンズ』©Helen Sloan/HBO 『Fleabag フリーバッグ』© 2016 Amazon Studios 『アトランタ』 (c)2016 FX Productions, LLC. All rights reserved.