Apple TV+で配信中のゴジラ新作ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』。エグゼクティブプロデューサーで、第1~2話の監督も務めているマット・シャックマンと、ショーランナー&エグゼクティブプロデューサーのクリス・ブラック、エグゼクティブプロデューサーと脚本を担当しているマット・フラクションに直撃インタビュー! 本作の魅力だけでなく、それぞれゴジラとの出会いや好きな怪獣について明かしてくれた。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』製作陣インタビュー全文
――ほかのモンスター・ヴァースの作品には、ゴジラやコングといった怪獣の名前が入っていますが、本作のタイトルには怪獣の名前がありません。これは、本作がモナークと、それに関わる人々について、そして怪獣たちがどのように人類に影響を与えているかについての物語だからなのでしょうか。
フラクション:まさしくおっしゃった通りです。私たちは、過去の映画をテレビサイズにしたものは作りたくなかったし、映画作品と競い合うようなことはしたくありませんでした。豪華な超大作映画をテレビサイズに縮小するようなことはしたくなかったので、テレビシリーズとして一から構築する必要がありました。長く続いていくテレビシリーズを作るためには、次の週へ次の週へと視聴者を引っ張っていくキャラクターやドラマを作り上げなければなりません。
私たちはタイタンが好きで、タイタン同士が戦う壮大なシーンが好きですが、実際問題として、それを毎週お見せすることはできませんでした。それに、もしすべてのエピソードにタイタンを登場させて、「今週の怪獣」を紹介するような作品になったり、毎回ゴジラがビルを破壊したりしていたら、視聴者は飽きて、見るのを止めてしまうでしょう。
タイトルについてお話しすると、タイトルの中で私が最も重要だと思う言葉は「レガシー(受け継がれたもの)」ですが、クリーチャーやモナークという組織のレガシーだけではなく、モナークを作った人々、1940年代や1950年代の創設者たちから始まった数世代にわたる家族のドラマを描くことで、長く愛されるシリーズを作りたいと思いました。
祖父母から両親に、両親から子どもたち、つまり現代の登場人物たちに受け継がれてきたものです。シリーズの企画や組み立てを行う時も、物語の中心は常に登場人物たちのパーソナルな旅であり、その旅の途中で冒険の障害となる怪獣たちにどのように遭遇するかを考えていました。
ブラック:クリスと私は脚本の草案に取り組む際、ケイトのトラウマに焦点を当てていました。彼女はゴジラとの遭遇によってトラウマを抱えることになりますが、トラウマの本当の原因は父親なのです。ケイトにとっての怪獣は人間だったのであり、彼女が父親について理解していく物語をこの作品は描いています。
――過去のモンスター・ヴァース作品とリンクするシリーズを作ろうと決めたのはなぜですか?
ブラック:私たちが作りたかったのは、あくまでもテレビ番組なんです。過去の映画をスケールダウンしたようなものは作りたくなかったですし、人間について語りたいと思っていました。テレビシリーズは一続きの長編の物語で、物語を動かすのは視聴者を夢中にさせるような、自宅に招いて一緒に時間を過ごしたくなるような魅力的な登場人物たちです。
そして、この作品について考える際のアプローチとして、登場人物たちと同じように、視聴者にとっても初めての経験をしてもらおうと思いました。登場人物たちは世界について、そしてモナークの役割について知っていきますが、それはケイトとケンタロウの父親が本当はどんな人物だったかを知るということです。
組織の歴史の中に、物語を構成する要素を組み込んでいくことができました。この組織については、過去の映画を観た方であればすでに知っていたかもしれませんし、中には詳しく追求していた熱心なファンもいるかもしれません。この壮大な舞台設定で私たちが伝えようとした人間の物語を展開させる方法の一つとしてモナークを登場させることができたんです。
フラクション:この作品を作る上で、もちろん同じ舞台設定で作品を作ってはいるのですが、過去の映画作品から変えようとした部分の一つが視点です。過去の映画作品では、登場人物たちはモナークという組織の内側から外側を見ています。彼らは物語の中で起きる出来事に深く関与している当事者です。
彼らは指令室や水中基地、潜水艦の中にいて、全員が科学者、技術者、軍人です。基本的に同じ世界ではありますが、私たちは視点を180度切り替えてみたかったんです。人々は今、外側から内側をのぞいていて、何が起きているかを知りませんし、理解できません。モナークの人間たちが何者なのかも、どこから来たのかも知らなければ、味方なのか、敵なのかさえもわからないのです。これによって私たちは、とても具体的で過去の映画とは異なるものの、同じ世界に存在する物語を作ることができました。
シャックマン:視聴者を引き込む登場人物たちの視点があることによって、モンスター・ヴァースのもともとのファンたちも、初めてモンスター・ヴァースの世界を目の当たりにする人たちも同じように楽しむことができます。この点は、本作で私たちが成し遂げた奇跡の一つだと思います。
モンスター・ヴァースについて詳しいファンにとっては豪華なパズルのように、すでに存在する時間軸の中にピースがはまっていきます。何も知らない場合でも、美しいヒューマンドラマを楽しみながら、これまでに起きた出来事を知っていくことができます。これが、この作品が特別である理由の一つだと思います。
――モナークの成り立ちを描くため、本作は2つの異なる時間軸で展開されますが、主要な登場人物たちをどのように生み出したのか、また、それぞれの時代の出来事に対する彼らの感情的なつながりをどのように作り上げたのかを教えてください。
ブラック:それぞれの時間軸で、初めて登場するキャラクターがいます。過去ではリーやケイトです。両方の時間軸にリーをリンクさせることで、現在のリーは知恵と経験を備えた人物として描かれます。これは、カートの演技が体現してくれています。レジェンダリーと協力してモンスター・ヴァースの一部となる作品を作っていく中で、『モナーク』の世界での出来事が時間軸の上でビーズのようにつながっていき、「このキャラクターはここ、あのキャラクターはあそこ」と割り当てることができました。『キングコング:髑髏島の巨神』でジョン・グッドマンが演じたビル・ランダもその一人です。
モナークの成り立ちの話をするなら、彼がどのような人物だったのかを知らなければなりません。そこで山本真理が演じるケイコというキャラクターが登場することになりました。これは部外者を作りたかったからです。水からあげられた魚のような、彼女自身が生きる時代にさえ合っていないような人物です。
これにより過去の三人組が生まれ、それが現在のメイン三人組に反映されます。我々はこの2通りの三人組にたくさんの似通った部分を見出し、それによって過去と現在を行き来することができました。これが、登場人物たちが様々な出来事に遭遇し、彼らが知っているつもりだった世界が実はまったく異なる予想もできない世界だったことを知るという物語の仕掛けになっています。
フラクション:タイトルにもある通り、この作品のテーマはレガシー(受け継がれたもの)です。モナークの歴史を語っていくと、それは数世代にわたるこの一家の物語と深く絡み合っていきます。この作品でそれを描くことになった時に、決して簡単だったとは言いませんが、祖父母から両親へ、両親から子どもたちへと、何世代にもわたる登場人物たちの物語にモナークの歴史が影響していく軌跡が見えたんです。
――ゴジラが人を引きつける魅力は何だと思いますか?
シャックマン:私がゴジラを好きになったのは5歳くらいの時で、子どもの頃の1番幸せな思い出は、カリフォルニア州ベンチュラの自宅で父とソファーに座って、東宝が製作したオリジナルの『ゴジラ』を観たことです。ゴジラは、私たちには理解できない謎めいた存在で、不思議でワクワクするような感動を与えてくれます。これは私が映画を観る上で1番好きな要素です。
純粋に謎であり、恐怖でもある説明しがたい不思議な気持ちです。ゴジラは善でもなく悪でもなく、守護者でもあり破壊者でもあります。ゴジラは、私たちが映画スターに求めるものをすべて持っているんです。この魅力のおかげで、ゴジラは何世代にもわたって愛され続けているのだと思います。
そして何世代にもわたる映画製作者たちは、自身の世界を見つめ、ゴジラをメタファーとして使うことで、世界で起きている問題に目を向けたり、複雑な物語を語ることができます。
それから、マットとクリスがこの作品で作り上げた非常に美しい部分であり、私がこのプロジェクトにぜひ参加したいと思った理由にもなるのですが、この作品では怪獣や組織ではなく人間の物語が主題として描かれ、怪獣はその物語に影響を与える存在となっています。
単にスペクタクルなシーンがあるヒューマンドラマではありません。怪獣たちが人間の物語に深く関わり、登場人物たちに美しく影響を及ぼします。周囲の世界が変わっていくとともに、登場人物たちの物語も怪獣たちと交差し、変化していくのです。
フラクション:マットが幼い頃からのゴジラファンだというのは明らかで、作品について話し合うためのかなり初期段階のミーティングに、子どもの頃に遊んでいたゴジラの人形を持ってきたんですよ。彼は間違いなく、この作品にふさわしい人物です。
――みなさんがゴジラの世界に初めて触れたのはいつですか。どのような作品に魅力を感じられているか教えてください。
フラクション:薄っぺらく聞こえたり、当たり前のように思われるかもしれませんが、私は、やはりゴジラです。ゴジラは元祖であり、ゴジラ自身の物語の主役です。それから、ゴジラとの出会いについてですが、自分でも面白いと思ったことに、初めて観たゴジラ映画や初めて観た東宝の怪獣映画をお答えすることができません。怪獣の存在は常に、カルチャーに対する私の意識の一部だったように思います。幼い頃、両親と白黒のテレビで土曜の午後に観た様々な名作映画に夢中になったことも覚えていますが、何が初めてだったかと聞かれると、答えることができません。映画はいつでもそこにあったものだと感じるからです。
ブラック:このキャラクターが長年にわたって愛され、ゴジラがいなかった時代など思い出せないのは、これが理由だと思います。怪獣映画を観て育った私が、親になって本当にうれしかったことの一つは、自分の子どもたちをこの世界につれていってあげられたこと、そして私と同じスリルを彼らが感じているのを見られたことです。
まったく同じエネルギー、興奮、ワクワク感、恐怖、すべてが混ぜ合わさった感情です。この感情は私たちの中に残り続けます。年を取って、自身や世界に対する恐怖や不安がより洗練されたものになっても、ゴジラはそれらをすべて詰め込むことのできる枠組みとして私たちの中に残るのです。そして、このキャラクターやシリーズ、映画作品、派生作品により、いつの時代にも同じ魅力やワクワク感、恐怖、興奮が生まれ続けていくと思います。
シャックマン:先ほどお話ししたオリジナルの『ゴジラ』以外にも、長年にわたって何度もリメイクされてきたゴジラ作品や、近日公開予定の『ゴジラ-1.0』(注:インタビュー時は欧米公開前)など、近年東宝が製作したゴジラ映画にも非常に強い感銘を受けています。
中でも、数年前に公開された『シン・ゴジラ』は、類まれな映画です。政府の組織がどのように危機に立ち向かっていくかが美しく描かれ、何層にもわたって物語が展開していきます。様式的な観点からも、映画の中で怪獣がどのように作られ、進化していくかという創作性が素晴らしい作品です。
キャラクター自体が人々の関心を集め続けているのと同時に、キャラクターをどのように捉えて、どのように用いるのかという方法も新しく考えられ続けていることが見て取れます。だからこそゴジラは、いつの時代でも感動を与えてくれるのです。
――ゴジラ映画に登場する怪獣で一番好きなものはどれですか。
ブラック:一番好きな怪獣は、ゴジラを除いてというと「ビートルズを除いて最高のバンドは?」というようなものですが、デストロイアが好きです。わりと最近の怪獣ですが、デザインや両肩から生えたクリスタルのような結晶体だったり、悪のゴジラのような見た目だったり、とにかくデストロイアが大好きなんです。自宅にはこっそり集めたデストロイアのグッズがたくさんあります。東宝の人たちには言わないでくださいね。
シャックマン:つまらないことに私もゴジラが一番好きですが、最近の作品では『シン・ゴジラ』のゴジラがとても好きです。映画の中で形態変化を見せますが、そのデザインが挑戦的で素晴らしいんです。あとはラドンもお気に入りです。
ブラック:あの炎はかっこいいですよね。
フラクション:私の回答もつまらないし、何も考えずに答えているように思われるかもしれませんが、ゴジラです。マットがとてもいいことを言っていました。子どもの頃に観た素晴らしい初期の東宝作品からデジタルの時代、そして『シン・ゴジラ』まで、私は何度も繰り返しゴジラを見てきましたが、ゴム製のスーツの中に人が入っているなんて思ったことは一度もありません。
ゴジラはジェームズ・ボンドのような存在です。たくさんの俳優がジェームズ・ボンドを演じていますが、ジェームズ・ボンドは一人の同じキャラクターなのです。
シャックマン:ゴジラは永遠に生き続けるわけです。
ブラック:東宝の外に異なる時代の三人のスーツアクターを写した写真が飾ってありましたが、見ましたか。三人とも衣装を着ないで歩いて見せているんですが、人間が演じていることがよくわかります。
フラクション:東京に行った時のことでよく覚えているのは、東宝の前でみんなで写真を撮ったことです。スタジオの前にゴジラのブロンズ像があって、絶対に一緒に写真を撮ろうってみんなで決めていたんです。
フラクション:まさしく聖地巡礼です。
――本シリーズには興味深い新怪獣がたくさん登場し、中にはクモや恐竜に似たものもいますが、このようなクリーチャーのインスピレーションはどこから来たのでしょうか。
ブラック:レジェンダリーのスタジオパートナーや、神話マネージャーのバーナビー・レッグに協力を求めました。私たちは、これまでの映画作品でうまくいった方法を踏襲して、モンスター・ヴァースの世界の動物学、未確認動物学をさらに発展させたいと思っていたんです。
現実の世界には、いつでもクリーチャーのベースになる類似の生き物が存在しています。作品に登場させる環境や場所に加え、登場人物たちをどんな危険な目に遭わせるかなど、クリーチャーに求められる役割も考慮しました。必ずベースになる生き物が2~3種類はいるものです。そうした現実の世界に存在する生き物を、モロー博士みたいな恐ろしい方法で合体させて、最高にかっこよくて、気持ち悪くて、恐ろしい、魅力的な怪獣を見つけ出すんです。
とても面白い作業でした。フランケンシュタイン博士になった気分でしたね。様々な生き物のパーツを組み合わせながら、奇妙で恐ろしげな生き物を一日中作り続けていました。
シャックマン:東宝とレジェンダリーの作品から、すでに存在していた怪獣も登場させました。私たちの大好きな既存の怪獣たちを登場させられた上に、その横に並ぶ新しい怪獣を作ることができたのは、本当に素晴らしい体験でした。
ブラック:VFXスーパーバイザーのコンラッドは、2014年からモンスター・ヴァース作品に参加していたので、この作業を熟知していました。彼は以前にもこのようなクリーチャーをたくさん扱ったことがあったため、クリーチャーを生み出す方法もよく知っていたんです。とても助かりました。
――本作には日本人の俳優が数名出演していますが、何が彼らをキャスティングする際の決め手となりましたか。
フラクション:キャスティングチームに真っ先に伝えたのは2点で、一つはその役に合った素晴らしい俳優であることです。これについては全員が素晴らしい俳優でしたし、こちらの期待をはるかに上回っていました。彼らと仕事をするのは本当にワクワクしました。
しかし私たちにとって本当に大切だったのは、この作品のあらゆる要素にリアリティを持たせることでした。ですから、どこで撮るかということも重要で、東京のシーンを撮るなら、東京に似せた街を作ったり、ブルーバックで撮影して銀座の風景を合成するようなことはしたくなかったのです。私たちは舞台となる場所に行って、実際の現場に立って作品を作りたいと思っていました。
キャスティングについても同様で、日本の人々が実際に持っている考え方や視点を作品にもたらすキャラクターであることが大事でした。私たちは日本人でもなければ、日本で生活をした経験もないので、そうした視点を持つことができません。そういう意味では、素晴らしいコラボレーションができたと思います。
最大限の敬意を込めて言いますが、俳優たちに台本を渡して台詞を言ってもらっても、それは英語を話すアメリカ人の脚本家である私の話し方であって、そのキャラクターの本当の話し方ではないんです。
それで、「このキャラクターだったら、どのように言うと思いますか」と彼らに尋ねて、何度かやり取りをするうちに、キャラクターたちがお互いに対してどんなリアクションをするか、どうやって話すか、どのように日本語を使うか、また台詞のどの部分を英語から翻訳しないかなどが見えてきました。これについてはマットの方が、ディレクターだったこともあり、彼らともっと密接にやり取りをしていたと思います。
シャックマン:デザインについてもお話ししておくと、セットを作る時や装飾する時は、本物らしく見せるために、つまり私たちが作ろうとしていた世界に対して正確であるかを確かめるために、アドバイザーに相談したり、日本人のプロダクションデザイナーと協力したりしました。
みなさん、素晴らしい働きをしてくれました。そしてキャスティングについては、RonnaとYokoが選定に尽力してくれました。マットとクリスがこの作品のために作ったキャラクターたちは、それぞれが驚くほど具体的で個性豊かなので、キャスティングをする際はときどき鍵をなくした時のような気持ちになりました。
「鍵はどこだ。どこに行ったんだ。見つからない。これはもう絶対見つからないよ。あぁ、あった!」という感じでした。そのようにしながら、それぞれの役にぴったり合う、この世界で唯一の人物を探し出すのです。すべてのキャラクターについてこの作業を行いました。
私たちも作品を観たことがあるようなベテランの場合もあれば、初めて見る俳優たちの場合もあります。演技自体が初めてだったキャストもいました。ケンタロウを演じた(渡部)蓮は、この作品に出演する前は料理人として働いていたんですよ。
家族がこの業界で活躍されているため、演技の世界には親しみがありましたが、それまでは積極的に演技に取り組んできたわけではありませんでした。それで私たちが彼を誘って作品に参加してもらうことになったのですが、蓮は素晴らしかった。本当に素晴らしい俳優です。
こうして才能豊かな幅広い人材が集まり、美しいコラボレーションが実現しました。良い作品はいつでも、お互いの考え方に敬意を払い、協力して作り上げるコラボレーションによって生まれるのだと思います。
フラクション:制作とセットのデザインについて言うと、現実に即していないと全員から指摘を受けたものがあって、それは...。
ブラック:アパートが大きすぎたことですね。
フラクション:ランダ家のアパートでした。東京でこんなに大きいアパートに住んでいる人はいないと、みんな口をそろえて言っていました。
ブラック:全員が「これはおかしい。どれだけ裕福な家なんだ」と言っていました。これが原因でゴジラやモンスター・ヴァース作品の世界に入り込めないというなら、今回はうまく回避できたと思います。
マットの日本人俳優たちとの接し方について言えば、日本でのシーンは日本語になることが多いので、日本人の俳優たちも日本語で演じることになります。それでも、マットが指示を出して、俳優たちが言語の壁を越えた演技をするのを見ると、私は日本語を話せませんが、同じ人間として共感できるような演技をマットが引き出していたことがわかります。これを見ることができたのは、マットの努力の賜物だと思います。
シャックマン:とても面白いプロセスでした。英語以外の言語を話す俳優たちと仕事をするのも、別の言語の演出をするのも初めてだったので、優秀な通訳たちに助けられました。私は劇場で仕事をすることが多いのですが、興味深い論文を読んだことがあります。
その論文によると、席に座って演劇を観ている何百という観客たちの心臓の鼓動は、パフォーマンスが終わるまでに同じリズムを刻むようになるそうです。これは真実であって欲しいですね。美しい現象です。とてもいいですよね。演技やパフォーマンスには本当にこういうことがあって、すべての言葉の意味を知っていなくても、感情を理解したり受け取ったりすることができます。そうなれば、パフォーマンスは成功です。
撮影をするにあたって、俳優たちも私自身も、彼らが演じるシーンについて、そして私たちが何をしたいかを理解していました。だからこそ、すべての言葉を理解していたわけではなくても、このコラボレーションを成功させることができたのだと思います。
――みなさんは、この作品の前にはスーパーヒーローシリーズやスリラー、ドラマ、ダークファンタジーなど、様々なジャンルに携わっていらっしゃいますが、脚本や台詞、演出のためのアイデア出しなど、共同での作業はどのように行いましたか。内容をどうするかについては全員が同意していましたか。
フラクション:すべてについて全員が同意するわけではありません。それもプロセスの一部ですし、クリエイティブな人たちとコラボレーションをすることの一部だと思います。様々な事柄について議論になりますし、ケンカにもなりますし、意見が合わないこともあります。マットと私は特に、編集作業中に何度かケンカしています。
初めのエピソードを編集していた時に私が「なんであのシーンをカットしたんだよ」と言ったら、マットが「だって良くなかったから」と返してきて、「いや、すごく良かっただろ!」と口論になりました。ですが、そういう会話の中で突然「わかった。僕も正しくなかったし、君も正しくなかった」と思うようなバージョンが見つかるんです。
ちょうど二人の意見の間にあるようなアイデアが見つかり、それが完成形になります。誰かと協力して制作をする上で、本当に楽しいのはこういう部分です。あなたが言っていたように、このような作品は、コミックやスーパーヒーローシリーズ、怪獣映画、ホラー映画、ファミリードラマなど、たくさんの異なるジャンルをかけ合わせたものなんです。
シャックマン:とても難しいことでした。コラボレーションをする上で重要なことは、全員が同じ作品を作ろうとしているということです。どういう作品を作りたいかをそれぞれが主張しますが、常に同じ方向へ向かっていなければなりません。
そして、何についての物語なのか、テーマは何か、どのようなキャラクターが登場するのか、どのような世界かなど、全員が自分たちの伝えようとしている物語に情熱と信念を持っていることが必要です。そうして初めて、その物語を語るための最良の方法について何度も話し合うことができるようになります。共同作業において問題が起きるのは、それぞれが伝えようとしている物語が大きく異なる場合や、どこかで折り合いをつけようとする時です。
ブラック:常に気をつけていたのは、人間のキャラクターたちを中心に描くことです。ケイトとケンタロウは最悪のタイミングで恐ろしい秘密にたどり着きます。そして、二人はこの謎を解き明かすため、手がかりを追って巨大な怪獣の世界へと足を踏み入れることになります。
物語がこの二人を中心にして描かれている限り、それ以外のことも二人から必然的に生まれてくるんです。あらゆる意見を検討して、より規模の大きいアイデアや奇抜なアイデアを出してみたり、これはどうかあれはどうかと試してみたりするのですが、それでもうまくいかないなら、それは間違った方向に進んでいるということなのです。そのような場合にはキャラクターたちを中心に考え直して、最終的には、いつもキャラクターたちに正しい答えへと導いてもらいました。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』配信情報
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』は、Apple TV+で独占配信中。2024年1月12日まで毎週金曜日に新エピソード配信。
(海外ドラマNAVI)
Photo:画像提供 Apple TV+