やっぱりエリート!? 年収っておいくら万円!? アメリカで医者になるには―海外ドラマNAVI的ざっくり手引き書-

『ER 緊急救命室』がシーズン15で終了してから、早4年。その後、アメリカではたくさんのメディカルドラマが製作され、人気ジャンルとしての地位を確立した。『ER』のロス、カーター、そして『グレイズ・アナトミー』メレディス、そして『Dr.HOUSE』ハウス。人気ドラマの医師たちは、どのようにしてその職業に就いたのだろうか。今回はメディカルドラマをより楽しむために、アメリカではどのようなステップで医者になるのか、ざっくりではあるが調べてみた。

医師を目指す人のスタートは、大学で物理や生物学といった基礎科学系またはPre-Medi(医学進学過程)を専攻すること。その後、MCAT(Medical College Admission Test=医科大学入学試験)を受験し合格すると、4年制の専門職大学院(メディカルスクール)に入学することができる。このメディカルスクールの競争率はとても高く、学部時代の成績がオールAでないと問題外というのはよく聞く話。また、入学試験には口頭試問も必須で、ボランティア等社会活動の状況や人間性も重視される。

ここで見事合格した後に待ちうけるのは多額の学費というハードル。メディカルスクールで1年間にかかる費用は書籍等諸費用を併せて公立校で平均3万ドル、私立校では7万ドル。日本では、国公立大が年間約55万円、私立大では300~900万円程と差はあるが、それでもアメリカのメディカルスクールの学費は基本的にお高いものとなっている。したがって学生の多くはローンを組み、卒業時(およそ26歳)で20万~30万ドルの借金を背負っているという。こんな重たい荷物を背負ったらもう他の道を選ぶわけにはいかないだろう。

さて、メディカルスクールを卒業しM.D.(医学博士)の学位を得た学生は、続いて国家試験USMLEを受験する(※USMLEはM.D.を取る前から受験も可能)。この試験に合格すると、州から医師免許が付与され、やっと基本的な処置や診療が行えるようになる。この段階をクリアするといよいよ「インターンシップ」の開始だ。

海外ドラマ好きには馴染みあるこの「インターンシップ」という言葉。『ER』のカーターも『グレイズ・アナトミー』のメレディスも、ドラマの初回はインターンだった。これは1年で主要診療科を一巡し、院内の雑務をこなしながら技術を学ぶ、なかなかハードな期間だ。この辺りは、初期『グレアナ』でも何度となく観られる光景で、年齢も若く、医師としても未熟だからこその悩みを抱え、また現状からの脱却を目指してもがき苦しむ「孵化の時期」。ドラマの舞台としてはまさにもってこいの時代だろう。

インターンが終わると、試験をクリアしながらレジデント(研修医)、フェロー(研究員)と進む。これらの期間は専門によって3年から10年と異なり、フェローシップ(特別研究員)を終了するとやっと1人前と認められる。最速でも、この時点で30代前半。長い道のりである。

ここまで来れば、高度な医療を行うことができ、開業医を目指す者も出てくる。型破りで、口が悪く、一匹狼でも腕は確かな『Dr. House』のハウスしかり。『グレアナ』の病院を出て、LAで開業医として再出発した『プライベート・プラクティス』アディソンしかり。(もちろん医療の腕は一流と呼ばれるレベルに到達しても、人間性やプライベートの"腕"は全く別次元。ゆえに公私のギャップがこれまたドラマの格好のネタになるということ!?)

なお医師という職業は、アメリカでも高給取りだ。専門によって違いはあるが、彼らの年収は30万~40万ドルとされており、日本の医師の年収約1000万円と比べるとはるかに高収入。メディカルスクール時代に作った多額の借金も、完済できるわけだ。ここまでたどり着けば、の話だが。

しかし、だからといって、一生のらりくらりと暮らせるわけではない。何よりも激務であり、コメディドラマ『CHUCK/チャック』の劇中ですら、医師であるチャックの姉夫妻が急患のため病院に呼び戻されるシーンが何度もあった。さらには、一般企業と同様に解雇やポジション争いだって存在する。例えば、『ロイヤルペインズ 救命医ハンク』ハンクがハンプトンズの金持ちを相手に"コンシェルジュ・ドクター"を始めたのは、NYの病院をクビになったからだし、『ハート・オブ・ディクシー』ゾーイがNYからアラバマの田舎町に渋々来たのだって、レジデント終了後にフェローのポジションを得られなかったからだ。一度王道から逸れてしまった場合、仕事を求めて街を移ったり、時にはうさんくさい肩書きを持つ必要にだって迫られる。想像以上にとても厳しい業界なのだ。

注意して欲しいのは、ここで紹介したのは"アメリカ人がアメリカで医師になる場合の方法"だということ。外国人には国籍や言語が壁となり、さらに難関となるのは言うまでもない。それでも海外ドラマを観てこの道を選びたい人は、ぜひ果敢に挑戦してもらいたいものだ。

なお、もう一つ"医師"になるための方法がある。それは俳優か女優になって医師役のオーディションに合格すること! これまた難関だが、運が良ければシアトル・グレース病院やプレインズボロ教育病院などであの名物医師たちと一緒に勤務ができるかも。NAVI的にはむしろこっちを勧めたい!? (海外ドラマNAVI)

Photo:『プライベート・プラクティス LA診療所』 (c)ABC Studios 『Dr.HOUSE』(c)2007 Universal Network Television LLC. All Rights Reserved 『グレイズ・アナトミー』(c)Touchstone Television (c)ABC Studios 『ハート・オブ・ディクシー』(c)Warner Bros. Entertainment Inc.