初心者にもわかる!マーベル・ユニバースの英語<Vol.4>~キャプテン・アメリカの脆さと純粋と盾と~

前回のコラムで紹介した、『キャプテン・アメリカ』ことスティーヴ・ロジャーズ(クリス・エヴァンス Chris Evans 演じる)の映画シリーズは、なぜ女性にも人気が高いのでしょうか?

それは、彼が "Super-Soldier/超人兵士"であり、スーパーヒーローである、という男性的な強みを持っているだけでなく、「脆さや純粋さ」という女性の母性を惹きつける魅力も持っている人物だから! とも言えます。

人を守りたい、傷つけたくない」という理想がありながら、戦場で能力を発揮することがSuper-Soldierとしての彼の避けられない性であり、約70年間も氷漬けになって蘇ってしまった現代には、家族も家もありません。唯一、友(!?)と呼べるのはアベンジャーズという "戦友"たちでしかないのです。

キャプテン・アメリカが淡い思いを寄せていた女性

1945年に生きていた時には、スティーヴには「密かに思いを寄せる女性」がいました。彼のことを米国陸軍入隊時からSuper-Soldierに変貌を遂げる実験の日まで見守っていたSSR(戦略科学予備軍/Strategic Scientific Reserve)の敏腕女性エージェント、ペギー・カーター Peggy Carterです。

入隊当時は、本来は戦地に赴く資格さえなかったガリガリのやせ細った身体で、ガールフレンドとは無縁の青年でした。決して異性にモテるタイプでなかった彼は、キスの経験さえありません。しかし、一兵士でしかなかったスティーヴは、知らず知らず、上官であるペギーに憧れのような淡い思いを抱き始めます。

そしてスティーヴの訓練時の姿を見つめていたペギーも、彼が類い稀な勇敢な心や優れた知性と機転を持ち合わせていることに気づきます。

“フォンデュ”する?とは

映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の中で、ある夜、まったく恋に奥手なスティーヴは、ペギーとハワード・スターク(ハワードは、Super-Soldier計画の実験にも協力した天才エンジニア。ドミニク・クーパー Dominic Cooper が演じる)の二人が、実は恋仲なのではないかと疑いを持ち、ペギーに問いかけます。

スティーヴ:So, you two... Do you...fondue?
で、君たち...は、するんだ ... フォンデュー?

(※ スティーヴは Fondue:フォンデュを秘密の行為か何かと勘違いしています)

ペギーは、???という表情を見せ、何も答えません。

スティーヴは別の夜、また同じことをペギーに真剣に問いつめます。

スティーヴ:Well, what about you and Stark?
君とスタークはどうなんだよ?

How do I know you two haven"t been fondue-ing?

君たちが"フォンデューして"ない、ってどうして言える(判る)?

ペギーは呆れた表情で言います。

ペギー:You still don"t know a bloody thing about woman.
あなた、まだ女のこと、全然解ってないのね。

bloodyはイギリス英語のスラングで、"凄い・べらぼうな・ひどい"といった意味)

その時のペギーの切り返しで、スティーヴがどれほど無垢なのかがよく判るのです。

スティーヴはその後、

ハワード:Fondue is just cheese and bread, my friend.
フォンデュは、ただのチーズとパンだよ。

とハワードに教わりました...(笑)。

そんな無垢なスティーヴは、『キャプテン・アメリカ』シリーズの『The First Avenger: ザ・ファースト・アベンジャー』と『Winter Soldier: ウインター・ソルジャー』の2本の映画の中で何度か女性とキスする体験をするのですが、いつも意表を突かれるタイミングでいろんな女性に唇を奪われてしまいます。(脚本家にとって、ツボとなるお決まりのシーンなのかも。来年公開のシリーズ3作目『シビル・ウォー』でも、同じような場面が果たしてあるのか!? )

"90才代の童貞クン"の恋の行方は?

こんな無防備なところが、女性ファンの目には、なんとも可愛らしい男性像として映るのではないでしょうか? 非常に二枚目で、理想的な肉体を誇る兵士なだけに、そのピュアさが際立つ、のが人気の秘密と言っていいでしょう。

彼は、そのピュアな身のままで氷漬けとなり、2000年代の現代の世界に蘇ってしまいます。多くのマーベルファンたちは、1920年代生まれの彼を"90才代の童貞クン"と親しみをもって見守っています。彼がこの先、いつ、どんな相手と恋に落ちるのか、その行方も大きな注目を集めているのです。

ペギーとは、相思相愛...となるはずでした。しかし、二人が結ばれることはありませんでした(※ この伏線は、MCUの最新作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でも重要なプロットとして描かれ、ファンの胸をキュンと苦しくさせます)。「どうして結ばれなかったの!?」と、恋の行方が気になる方は、どうか『キャプテン・アメリカ』一作目のクライマックスで、スティーヴとペギーの運命を見届けて下さい。

『キャプテン・アメリカ』という作品は、単なるヒーロー兵士のお話ではなく、70年という歳月を越えたロマンスを描いた、《愛》の物語なのです。

ちなみに!! このクライマックスは、米ABCの新ドラマ『エージェント・カーター/Agent Carter』(ペギーを演じ るヘイリー・アトウェル Hayley Atwell が主演)につながっていて第1話の冒頭から贅沢なクロスオーバーが見れるんですよ♪

マーベル・シネマ ティック・ユニバースの中で大きな意味を持つ「盾」

心からの友がいない、恋人がいない、家(home: 帰れる場所)と呼べるのも今やアベンジャーズの拠点だけ。その彼を長い間守ってきたのは、彼自身の超人兵士としての強靭な肉体と、優秀な戦略的頭脳と、そして彼の武器である「盾(shield)」です。

キャプテンの「盾」。このアイテムが、やはりマーベル・シネマ ティック・ユニバース:MCUの中で非常に大きな意味を持ちます。

この盾、開発したのは前述したハワード・スターク/Howard Stark です。さすがはトニー/Tony Stark(ロ バート・ダウニーJr)の父親であり、スターク産業/Stark Industries 創始者。息子もやがて天才的エンジニアとして軍事兵器を造る道を歩むのは、親譲りだったわけです。

映画『キャプテン・アメリカ』1作目の中で、ハワードは様々な形の何種類もの盾を造っています。

それらをスティーヴの防御・戦闘用に選ばせていたところ、

スティーヴ:What about this one?
これは?

と、円形の銀色の盾に目を留めます。

ハワード:No, no, that"s just a prototype.
あ、いや、それはまだ試作品なんだ。
スティーヴ:What"s it made of?
材質は何だい?
ハワード:Vibranium.
ヴァイブレニウム(日本では通常ヴィブラニウムの表記)

It"s stronger than steel and a third weight.

鉄よりも強く、重さは三分の一。

It"s completely vibration absorbent.

衝撃を完全に吸収できる性質だ。
スティーヴ:How come it"s not standard issue?
どうして、標準の完成品ではないんだい?

How come why と同様で「なぜ?」の意味となる、容易な聞き方。
issue は、ここでは「発行されるもの、支給されるもの」の意味)

ハワード:That"s the rarest metal on Earth.
地球上で、もっとも稀少な金属でね。What you"re holding there, that"s all we"ve got.今、君が手にしている、それだけしか無いんだよ。

Vibranium/ ヴァイブレニウムは、マーベルの世界観の中では、ファンによく知られている架空の金属(現実には存在しない元素)で、知っておくべき名称です。

この元素で試作的に造られた盾は、頑強であらゆるものの衝撃に耐えうることができるのです。

スティーヴが気に入ったこの丸い盾を手にし、

スティーヴ:What do you think?
どうかな(これ)?

と笑顔で、ちょうど通りかかったペギー・カーターに向けると、ペギーはすぐさま、近くにあった武器を手にとり、この盾の持つ特徴を彼に見せつけます。

(※ ここで一瞬のアクションあり!!!)

ペギー:I think it works.
使えそうね。

スティーヴとハワード、そしてその場に居た研究者たちは唖然。一瞬でヴァイブレニウム製の威力と、戦いのプロであるペギーの厳しさ、そして女のたくましさ(怖さ...?笑)を見せつけるシーンです。

この場面は、予告編でも使われた名シーンですが、ペギーが男性陣を唖然とさせた一瞬を、是非映画で堪能して下さい。マーベルらしい、爽快で、ユーモア溢れる描写です。

稀少な金属Vibranium

この、稀少な金属 Vibranium は、『キャプテン・アメリカ』の中だけで描かれているものではありません。量産が不可能とされており、軍事的にも高い価値があるこの金属は、1940年代にハワード・スターク率いる研究者たちがアフリカで発見したもので、のちの現代では映画『アイアンマン2』の中でトニー・スタークがこの元素の再生を試みています。(※ 映画の中では Vibranium という名称には言及しませんが、トニーの研究対象が明らかにこの稀少金属であると判る証拠が映像に出てくるので、そこもMCUクロスオーバーの見どころです!)

Vibranium で造られたキャプテンの盾は、映画『アベンジャーズ』の中で、アイアンマン/Iron Man との衝突も、邪神ロキ/Loki のセプター(Loki"s Scepter: 彼が持つ槍のような武器からの閃光も、異星人軍団チタウリ/Chitauriの攻撃も、そして神的超人ヒーローであるマイティー・ソーのハンマー(Thor"s Hammer)による打撃さえ、跳ね返してしまうほどの力を有しています。

ちなみに!『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、その中の強敵ウルトロン(暴走した人工知能ドローン)は自らのボディにこのVibranium を合成して最強化しようと考え、 南アフリカのワカンダに狙いを定めます。

このワカンダという国は、地球上唯一の Vibranium の産地というだけでなく、「ブラック・パンサー /Black Panther」という将来MCUの作品の主役となるヒーローの出身国でもあり、この金属の価値と潜在能力は、連綿と本ユニバースで語られていくのです。

キャプテン・アメリカの天敵

さて、これだけの威力を持った盾が武器ならば、キャプテン・アメリカは無敵なのでは...?とも思えますが、彼には天敵/nemesis がいます。

キャプテンが戦った第二次大戦で米国軍の敵となったナチスドイツ軍。ヒトラーに見込まれ、その兵器&科学部門の中枢を担っていた男:ヨハン・シュミット/Johann Shumidt(ヒューゴ・ウィー ヴィング Hugo Weaving が演じる)。

彼は前回コラムで言及したエイブラム・アースキン博士を脅し、強制的にヨハン自身の「超人化」の企てに協力させ、完成前の "Super-Soldier Serum /超人兵士の血清"を提供させました。スティーヴよりも前に、あの血清を身体に射った人間がいたわけで す。

但し、前回コラムで触れたように、アースキン博士は、研究中のこの 血清の使用の成否を分けるのは、実験対象者の「人格」にある!と述べています。人間の能力の、すべての要素を何倍にも増進してしまう効能を持つ血清は、ダークで邪悪な面を持つ人間の卑劣さや残忍さや欲望をも増強してしまうのです。だからこそSSR(戦略科学予備軍)は、この血清を試す実験対象者の選抜を慎重に進め、スティーヴに白羽の矢を立てたわけです。

一方、それ以前にアースキン博士を脅して血清実験を実行したヨハン・シュミットは、その副作用で「醜悪」な要素が肥大・表面化し、世にも恐ろしいレッドスカル/Red Skullという怪人に変貌していました(skull: 頭蓋骨・どくろ、という意味 )。

マーベル世界でも名高い "Supervillain" である(villain: 悪役・悪党という意味)レッドスカルは、さらに強大なパワーを持つとされる四次元キューブ(のちに映画『アベンジャーズ』で物語の中心となる、Tesseract と呼ばれるキューブ)を入手し、向かうところ敵無しとなります。

そして自身が指揮していた結社ハイドラ/HYDRA(発音はハイドラですが、日本で はヒドラの表記が一般的)の独立を宣言し、ヒトラーのナチスドイツ軍と離反。独自に世界の征服を目論むようになります。

ヨハン・シュミットは、スティーヴにこう言い放ちます。

シュミット:No matter what lies Erskine told you,
アースキンがどんな嘘をお前に伝えたかは知らん(どうでもいい)、You see, I was his greatest success!見ろ!俺は奴の、最も偉大な完成作なのだ!

そしてスティーヴの目前で、初めてレッドスカルとなった正体を晒し ます。

レッドスカル:You are deluded, Captain.
貴様は(自らの)心を欺いているのだ、キャプテン。You pretend to be a simple soldier,一兵士のフリをしているbut in reality you are just afraid to admit that we have left humanity behind.
だが現実には、"人間 であること"を捨て去ったと認めるのが怖いのだろう。Unlike you, I embrace it proudly. Without fear!
私は貴様と違って、それを誇りとする。恐れなど無いっ!
スティーヴ:Then how come you"re running?
だったら、なぜ逃げる?

これが、スティーヴ・ロジャーズとヨハン・シュミット二人の最初の遭遇でした。

人格は真逆ですが、同じ血清を基にした効果により、一方は Superhero、一方は Supervillain となり、潜在能力は同等。スティーヴはSSRの軍隊に支えられていますが、ヨハンはハイドラ/HYDRA Troopers(ハイドラ兵士たち)を率いています。そしてキャプテン・アメリカには Vibranium/ヴァイブレニウム製の盾がありますが、レッドスカルには兵器に直結させる未知のエネルギー源である四次元キューブがあります。

ほぼ互角の戦い...いや、四次元キューブが発するエネルギーの脅威は、計り知れませ ん。

映画のクライマックスで、レッドスカルを倒し人類を救うためには、スティーヴはギリギリまで抵抗し、立ち向かい、結果として自分の身を犠牲にするしか道がありませんでした。そして激しい攻防の末、レッドスカルの身をついにこの世から消すことができたのです。

この伝説的な悪漢 "Red Skull"の名は度々MCUの作品群の中で言及されます。

レッドスカルは本当に滅びたのでしょうか? それはわかりません。彼が率いたハイドラ/HYDRAの残党は水面下で生き続け、『キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー』『エージェント・オブ・ シールド』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』という、現代を舞台にしたMCU作品群の中でも、その邪悪な思想の遺伝子を引き継いだ者たちが暗躍していることが明るみに晒されます。

戦略科学予備軍/SSRは、宿敵の秘密結社を壊滅させた...かのように見えましたが、やがて国際平和維持組織 S.H.I.E.L.D. として体制を新たにし、ハワード・スタークとペギー・カーターがその指揮をとったその後も、実際はハイドラ/HYDRAの影はずっと密かに横たわり、思わぬ形で現代まで浸透していたのです。

《S.H.I.E.L.D. vs HYDRA》

この敵対の構図は、マーベル・シネマ ティック・ユニバースの中でずっと続く、ストーリーの主軸のひとつです。

ところで!

今回このコラムで触れたキーワードや 名称、意外な登場人物が『エージェント・オブ・シールド』シーズン2 の第8話にもクロスオーバーして登場します!!ご期待下さい。

"Vibranium"という最強金属の存在とその価値も、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で是非、再チェックを!

様々な作品同士が絡み合うこのユニバースを堪能して下さいね♪

<Vol.5>はこちらから。

(※ 注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、"英語のコラム"という主旨から、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

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