【ネタバレ】『ベター・コール・ソウル』シーズン5は史上最高!? ボブ・オデンカークが語る同作のこれまでとこれから

『ブレイキング・バッド』のスピンオフ版『ベター・コール・ソウル』で4年にわたり善良な弁護士ジミー・マッギルを演じ、4度もエミー賞にノミネートされたボブ・オデンカーク。シーズン5の製作を迎え、ジミーは『ブレイキング・バッド』でファンが知っているソウル・グッドマンへと変貌を遂げつつある。何年にもわたりソウルを演じたにもかかわらず、ボブは深い役作りは『ベター・コール・ソウル』で描かれる化身のジミーから始まったと語る。そして、新シーズンに出演するにあたり、キャラクターに対するボブの情熱はますます強くなっていると、米Deadlineのインタビューでその胸の内を明かした。

(本記事は『ベター・コール・ソウル』シーズン3&4の重要なネタばれを含みます)

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――あなたはジミー・マッギルが、いかに『ブレイキング・バッド』の悪徳弁護士ソウル・グッドマンへ変貌を遂げるかを演じ、今の時点で同役を10年にわたり担ってきましたが、その経験はどんな感じですか?

そうだね。『ブレイキング・バッド』でソウルを演じたことが、この体験で大きな部分を占めているかどうかは分からないな(笑)。オリジナル版のソウルはかなりわかりやすい男だからね。素晴らしいプロジェクトに関われて演じるのはすごく楽しかったけど、この仕事は大きな意味で『ベター・コール・ソウル』から始まり、今まで私が行ったことがない場所へ連れて行ってくれた本物の冒険なんだ。このシリーズは、私を驚かせて挑戦を挑んでくるしクレイジーだね。簡単には理解できないよ。

――シーズン4の脚本を読んで、どんな第一印象を抱きましたか?

最も興味深かったのは、どうジミーが彼の人生で一番重要な人物である兄チャックの死に対処するか。ジミーの人生は、チャックの愛情と尊敬を勝ち取ることがすべてで、そうやって彼は30代を過ごしてきた。それが彼にとってすべてだったんだよ。だからチャックが自ら命を絶った時に、ジミーは最後にチャックと交わした言葉を振り返った。誰でもするようにね。そして、彼が最後にチャックに言った言葉は、「兄貴は俺にとって大切じゃなかった。まったくね」だったんだ。きっとジミーの中でスイッチがオフになり、すべての心の痛みや喪失感が、「ファック・ユー。兄貴を気の毒だなんて思わない。これからも絶対にな」という言葉にすぐに埋もれてしまったんじゃないかと思う。

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もちろん、それは本心じゃない。そんな風にジミーが壊れてしまったのはチャックの選択のせいで、彼がフルタイムでソウルになってしまうんだ。ジミーの人生において、詐欺師で取引を決めるだけのソウルは本来ならジミーの一部でしかない。ほんの一部でしかないんだよ。だが彼は怒りに任せて、本来の自分を押し殺して完全にソウルになってしまうんだ。変わった才能を活かして善行を行い、長い間正しく立派なことをしたいと思っていた善良なジミー・マッギルを押し殺してね。

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――ジミーが兄の死について心の整理する方法を、どのように理解しましたか? 控え目に言っても両者の関係は複雑でしたが。

そうだな。チャックの死に対するジミーの反応は、健全でないとは考えられないかもしれない。私は、彼のリアクションがそんなに珍しいとは思わないんだ。ジミーが兄の死に想いを馳せた時に彼が感じる喪失感や入り混じった感情は、完全に区別されている。それは自分を保つためのメカニズムで、すべてを押しのけるために、チャックの死は偶発的な事実でそれ以上の物ではないと決めて、次に見つけられる最善のことに取り掛かるんだ。

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脚本を分析する時に数学的にまとめるのは容易ではない。ジミーの精神状態というか、彼の奇妙な行動は誰にでもあることじゃないかと思う。それはとっさの反応、または本能が働く瞬間とも呼べるかもしれない。その瞬間とは、特にハワード・ハムリンがジミーのアパートにやって来て、自分がチャックを法律事務所に復帰させなかったから彼が自殺したんじゃないかと気持ちを伝えるシーンがある。そこには選択肢があった。ジミーは、「それは違う。みんなが関係しているけど、最終的にはチャックが選んだことだ」と言えたかもしれない。または、その原因の一端は自分にあると気持ちをシェアしたり、実際にジミーがしたように悲しみを爆発させて、「ファック・ユー。そうだよ。お前のせいだ、俺のせいじゃない。俺は関係ないから勝手に後悔しろよ」と言うかだ。それは捉えどころのない瞬間で上手く説明できない選択ではあるけど、あり得ない反応じゃないと思う。珍しくもないんじゃないかな。誰か愛する近しい人が亡くなって、「もっと悲しむべきなのに」と感じることもあるだろう。逆によく知らない人が亡くなって泣き始めたりね(笑)。「よく彼のことを知らないのに、すごく辛い」といったように。

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(コメディアンの)ビル・ヒックスが亡くなった時に、自分の人生に対する考え方を改めたことがある。トーク番組の舞台裏で彼に挨拶しただけで、直接彼と話をしたことはなかったのにだ。お互いに「ハイ」と言って、それぞれの仕事については知ってはいたけどそれだけだった。それでも彼が亡くなった時に、今までの人生とは違う決断を下したからね。

――今シーズンで、ジミーは現実でトラブルに巻き込まれた時に、キムに「問題を起こさないようにするよ」と言いましたが、なぜ彼女を愛しているのに道徳的に正しい生き方を拒んだのですか?

そうだね。彼はせっかちで、落ち着きのない性格なんだと思う。多くの人がそうだが、そういった点は現代社会ではほとんどプラス、もしくはポジティブに捉えられている。もっと何かを欲しがるべきで、そうじゃないと自分はどこかおかしいんじゃないかと感じるだろう。ジミーは落ち着けないせわしなさがあって、そんな部分が彼の行動や選択の引き金になり、あらゆる種類の問題を彼に引き起こしてしまうんだと思う。

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――それにジミーは、いかなるグループにもメンバーとして属したくないというメンタリティを持っているようですが?

そうだ。間違いなくね。ジミーはチャックに満たしてもらえず、明らかに自分にも満足していない。ジミーが何であれ、自分の眼には自分が十分でないと映ってしまう。それが根底にあるから、キムに自分を誇りに思ってもらおうと努力し、彼女に愛されて人から尊敬されていると確かめようとしていた。それが彼の原動力なんだけど、仏教的に言うなら内なる平和かな。自分と折り合えるのは自分しかいないけど、まったくジミーはそれができていなくて、ここで話題に出すとジョークみたいに聞こえるね。

――今年はエミー賞のために、どのエピソードを出品しましたか? その理由も教えてください。

シーズン4の最終話を出品したよ。ジミーが弁護士として復帰しようとしている素晴らしいシーンがあって、彼は自分がやらなければならない最低限のことをやったと感じてる。ジミーは普通の仕事をして法律を勉強し、必要なことをやったと心から感じていたのに、後悔しているようにも正直なようにも見えないと言われてしまった。審査官に「彼は誠実ではない」と言われたから、委員会の前で真摯な印象を植え付けないといけなかった。つまり、ジミーというキャラクターのあらゆる側面や彼の本音が相手を騙す材料として使われ、この瞬間を作るためだけに集結したようなものだっだ。ピーター・グールド(&トーマス・シュノーズ)の脚本は本当に素晴らしい。ソウルとジミー・マッギルのあらゆる側面と彼の背景、そして深く根差した感情を、風変りな形で表現したシーンを書いた二人を称えたい。

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――前回インタビューした時に、チャックを演じるマイケル・マッキーンがエミー賞にノミネートされていない事実を嘆いていましたが、今シーズンでついに候補になりましたね。彼が評価されるのを見てどう感じましたか?

最高に素晴らしいことだよ。俳優としてマイケルのことが大好きで、彼からは多くを学んだ。彼はスクリーン上で能力を引き出し、役について深く考える力を与えてくれた。本当にすごいよ。彼はノミネーションにも受賞にも値するし、みんなが彼の演技を目にすることを願う。だって、『ベター・コール・ソウル』に彼が登場するエピソードは、どれだけ彼が才能ある俳優かを表しているからね。彼が注目されることに本当にワクワクしてるよ

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――最近、シリーズで最も困難だと感じた演技は何でしたか?

本当に間違った何かを犯したキャラクターを演じるのは、私にとっては難しいんだ。ちょっとした詐欺をジミーがやっている時は純粋に楽しかったし、彼が真面目な時も地に足がついた感じで違和感がなくて気分が良かった。だけど、ジミーが誰かを本気で傷つける時は彼のことが嫌になる。彼を好きでいたいから、そういった演技をする時は辛いんだ。それに、彼が思いやりを見せるシーンを自分で演じているにもかかわらず、ジミーにとっては共感することが一番難しいかもしれないとこともわかっている。彼は非常に自己中心的だから、おそらく思いやりを見せることが最も困難なんだよ。

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――それは、ある意味シニカルですよね。

まあ彼はシニカルだが、何度もタマを蹴り上げられた理想主義的な意味でのシニカルかな。真の皮肉屋は世界に失望しないし、すべての在り方を受け入れているからね。彼らは良心を持たずに後悔を感じなければ悔いもしない。世界がクソで自分がクソみたいな人間だって毎日思ってるから、上手いこと適合できる。そして我々がシニカルだと思う皮肉屋は、本当は理想主義者で心が傷ついている。毎朝起きると彼らは怒りを感じて暴言を吐く。周りで目にすることに失望してるから、自分の気持ちを誇張しててさ。それって変だろ? なぜならシニカルな人は、密かに心が本当に傷ついてるからなんだ。

――現在、『ベター・コール・ソウル』のシーズン5を撮影していますが、そのことについて何か教えてもらえますか?

今までのシーズンのなかで最高だし、視聴者がブッ飛ぶんじゃないかな。冗談を言ってるわけじゃなくて、本当にすごいんだ。みんなに見てもらえるのが待ち切れないよ。あらゆる方面で粉々になって、それがいいなって思う。

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――あなたはまだ本シリーズに出演していますよね。以前、あなたとジャンカルロ・エスポジート(グスタボ・"ガス"・フリング役)が、『ベター・コール・ソウル』はあと1シーズンか2シーズンで終わるとほのめかしていましたが、キャリアにおいて次の章に移る時に何を望みますか?

自分と私を知る人を驚かせてくれることを続けて、ついでに少し笑うことかな。笑いが薬だとは思わないけど、笑いはなくちゃいけないと信じてるからね。

ますます本家の『ブレイキング・バッド』に結び付きつつある『ベター・コール・ソウル』シーズン5は、米AMCにて2020年より放送開始予定。なお、アーロン・ポールがジェシー・ピンクマン役で主演する『ブレイキング・バッド』の映画版『エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIE』は、Netflixにて本日10月11日(金)より配信スタート。

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(翻訳/Nami)

Photo:『ベター・コール・ソウル』(C) Ben Leuner/AMC (C)Robert Trachtenberg/AMC/Sony Pic