2010年に登場したBBCの『SHERLOCK/シャーロック』は、アーサー・コナン・ドイルの名作を鮮やかに現代へ翻案し、世界中を熱狂させた。ベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマンの完璧な共演は観る者を瞬時に虜にしたが、その魔法は長くは続かなかった。シーズン1・2で頂点を極めたクオリティは、その後急速に失速。2026年の今、本作を再視聴することはファンにとっても容易ではない。かつての熱狂を差し引けば、そこにはうまく歳月を重ねられなかった、時代遅れな要素が散見されるからである。米メディアCBRの意見をご紹介しよう。
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過剰なファンサービスの代償:失われた作品のアイデンティティ
2010年のプレミア公開時、本作が計り知れない人気を博したことに疑いの余地はない。最大の呼び水は、何と言っても魅力的なキャラクターたちであった。ベネディクト演じるホームズとマーティンのワトソンは完璧なケミストリーを見せ、ファンはすぐさま彼らをとしてカップリングし、熱狂的な支持を寄せた。
二人の間に流れる信頼と愛情は確かに感動的であったが、シーズン2以降、物語には過剰なファンサービスが目立つようになる。ベネディクトに象徴的なロングコートを着せ、何度もマフラーを巻かせる演出や、二人の関係性の言外のニュアンスを強調しすぎる傾向は、制作者たちがファンの期待に寄り添いすぎた結果だろう。ショーランナーたちはファンの欲望を過剰に意識し、シーズン3と4では彼らが望むものへと安易に迎合してしまった。そのファンサービスは、今日の視点では物語への没入を妨げるほどにあからさまである。
早すぎた宿敵の終焉:モリアーティ退場という致命的なミス
アンドリュー・スコットが演じたジム・モリアーティは、実に見事な悪役であった。予測不能で狡猾、それでいてコミカル。彼は既存のドラマにおけるヴィランの概念を打ち破る存在だったが、製作陣はシーズン2で彼を殺害するという痛恨のミスを犯した。
その最期も、自らの口に銃を突っ込み引き金を引くという、唐突で呆気ないものだった。モリアーティが仕掛けた、シャーロック自身を偽物だと国家全体に信じ込ませる心理戦が凄まじかっただけに、彼は最後まで物語を牽引する最終的な敵対者として温存されるべきであった。彼の死後、番組は同等の魅力を持つ悪役を見出すことができず、結果として彼はシャーロックの幻想や回想の中に現れ続けることになる。この亡霊としての存続は、キャラクターを浪費する弱々しい手法に過ぎず、観客の興奮を冷めさせる一因となった。
迷走するベーカー街:ミステリーからメロドラマへの変貌
『SHERLOCK』の真骨頂は、一人の探偵が知性を駆使して解決不能な犯罪を解き明かすクライム・ショーである点にあった。「ピンク色の研究」から「バスカヴィルの犬」に至る初期のエピソードが今なお傑作とされるのは、純粋にミステリーの醍醐味と解決のプロセスに焦点が絞られていたからだ。
しかし、シーズン3以降、番組はあまりにメロドラマ的な側面を強めていく。シャーロックとジョンの関係性やメアリーの裏切りといった要素が強調され、後半2シーズンはドラマ性に偏重し、肝心の「犯罪」が二の次になってしまった。キャラクターの感情や対人関係、結婚生活の葛藤に執着するあまり、緻密な謎解きの面白さは損なわれてしまったのである。
輝きの終焉:なぜシーズン4は失望に終わったのか
本作が今日において視聴を困難にさせている最大の理由は、その終幕の不出来にある。最終シーズンは感傷に浸りすぎ、強固なミステリーを提供する代わりに、シャーロックのトラウマや精神世界の深掘りに終始した。ホームズ家の行方不明でサイコパスな妹、ユーラス・ホームズの登場はあまりに唐突であり、その描き方も稚拙であったと言わざるを得ない。
さらに、シャーロックの幼少期の記憶やモリアーティの立ち位置までをも後付け設定で書き換えたことは、多くのファンを当惑させた。ユーラスをすべての黒幕に据えた展開は、啓示的というよりは不条理であり、シリーズが積み上げてきた輝きを自ら鈍らせる結果となった。ラストに流れるシャーロックとジョンが犯罪に立ち向かうモンタージュさえも、迷走を見守ってきたファンにとっては虚しさを感じさせるものとなってしまったのだ。
もちろん、こうした批判的な視点がある一方で、本作が21世紀のドラマ史に燦然と輝く金字塔である事実に変わりはない。ベネディクトとマーティンが体現した比類なきカリスマ性、ロンドンの街をスタイリッシュに切り取った映像美、そして何より視聴者を熱狂させたドラマチックな展開は、今なお色褪せない魅力を放っている。初見の衝撃を求める新たな視聴者にとっても、また思い出とともに再訪するファンにとっても、本作が唯一無二のエンターテインメントであることは否定できないだろう。
『SHERLOCK/シャーロック』シーズン1~4はU-NEXT、などで配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:CBR





