『ブレイキング・バッド』はスリリングな展開と衝撃的なドラマ性で高く評価された作品だが、主人公ウォルター・ホワイトが築いた犯罪帝国を支える「科学」はどの程度正確なのだろうか? 米TV Lineがその疑問に答えている。
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『ブレイキング・バッド』キャストたちは今?!
ハリウッドにおけるTVドラマの評価を急上昇させた作品として間 …
ブルーメスは完全なフィクション
本作は、オクラホマ大学の化学教授ドナ・ネルソン博士などの科学アドバイザーの協力により、メタンフェタミン製造プロセスはほぼ現実にもとづいて描かれているという。高校の化学教師だったウォルターと元教え子で相棒のジェシーが使用する装置や器具は、実際に研究室でも使用されているもので、彼らが採用する“古典的”な製造手法も理論上は実現可能とされている。ただし、劇中で描かれる大量生産を安定して行うことは極めて困難で、演出上の誇張も少なくない。また、製作陣は科学的なリアリティを重視しつつも、具体的な製造方法を詳細に説明することは避けている。

メタンフェタミン製造の描写の大部分が科学的に正確である一方、作品の象徴となった青色の覚醒剤“ブルーメス”は完全なフィクションだ。ウォルターが極めて高純度のメタンフェタミンを製造できたとしても、その純度が色に影響することはない。英BBCの取材でジョナサン・ヘア博士は、水晶などの鉱物がピンクや紫に見えるのは不純物が混ざっているためで、基本的に結晶の色は物質内の電子が光をどのように吸収するかによって決まると説明している。つまり、“ブルーメス”が鮮やかな青色だからといって、それが高純度の証にはなり得ないのだ。劇中でウォルターの生成物が青色を帯びているのは、ほかとの差別化を図るための演出で、その再現にはシンプルな青いロックキャンディが使用された。
さらにシーズン1の衝撃的な場面の一つが、ウォルターにギャングの遺体処理を任されたジェシーが、フッ化水素酸で遺体を溶かそうとするシーン。この場面は科学検証番組『怪しい伝説』でも検証され、フッ化水素酸が豚の組織を泥状に変化させることは確認されたが、劇中のように浴槽や床を溶かすほどの腐食性は示さなかった。フッ化水素酸は特殊なプラスチック容器で保管しなければならない危険物質ではあるものの、映画『エイリアン』に登場するゼノモーフの血液のように“床まで貫通する超強力バージョン”は存在しない。

また、ウォルターが麻薬密売の元締めであるトゥコとの対決で即席爆薬として使用した雷酸水銀についても、科学的には不安定で強力な爆発性を持つ化合物であり、ごく小さな結晶としてしか安全に扱えないとされる。仮にウォルターが運搬中は爆発を免れたとしても、彼が投げ込んだ衝撃によって机の上にあったほかの結晶も誘爆させていた可能性が高い。さらに奇跡的に生き延びたとしても、強烈な爆風によって長期間の聴覚障害を負っていたと考えられる。
これらの例が示すように、『ブレイキング・バッド』は科学的リアリティを重視しながらも、ドラマとしての面白さを優先して大胆な脚色を施している。現実とフィクションの絶妙なバランス感こそが、この作品を犯罪ドラマの金字塔へと押し上げた大きな要因だと言えそうだ。
『ブレイキング・バッド』全5シーズンはNetflixとHuluで配信中。(海外ドラマNAVI)





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