
2002年に放送されたSFドラマ『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』は、今なお熱狂的なファンを持つ伝説的な作品だが、放送開始からわずか数か月で打ち切られるという不遇の運命をたどった。ここでは、同シリーズが短命に終わった理由とファンの復活運動について紹介する。
目次
『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』概要
『ファイヤーフライ』は、『バフィー 〜恋する十字架〜』や『エンジェル』、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』などで知られるジョス・ウェドンが企画・製作したSFドラマ。2517年の宇宙を舞台に、地球の資源が枯渇し、人類が銀河系へと進出した未来が描かれる。
物語の中心となるのは、宇宙船「セレニティ号」に乗る9人のクルーたち。彼らは、全惑星を支配下におく"コア"と呼ばれる中央の惑星たちから逃れながら密輸や強盗など宇宙の便利屋としての仕事をこなし、自由を求めて生きている。特に、キャプテンのマルコム・"マル"・レイノルズ(ネイサン・フィリオン『キャッスル ~ミステリー作家は事件がお好き』)は、かつてコアと戦った独立派の退役軍人であり、反骨精神に満ちたキャラクターとして人気を博した。
ウェスタン映画の要素を取り入れた独特の世界観と、個性的なキャラクターたちが織りなすストーリーは、批評家や視聴者から高い評価を受けた。
また、大人気シットコム『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』のシェルドンは『ファイヤーフライ』のファンとして描かれており、いくつかのエピソードで同シリーズに関して言及されている。
打ち切りの理由①:FOXによる放送順のミス
本作が打ち切られた最大の原因の一つは、FOXがエピソードの放送順をめちゃくちゃにしたことだ。
本来、シリーズの第1話は「Serenity(セレニティ)」というエピソードであり、キャラクターの紹介や世界観の説明がしっかりなされていた。しかし、FOXはこのエピソードを“つまらない”と判断し、第2話「The Train Job(トレイン・ジョブ)」を先に放送してしまった。その結果、視聴者は背景を理解できないまま物語に放り込まれることになり、入り込みづらい作品になってしまった。
さらに、放送自体も不規則で、全14話のうち3話が未放送のまま打ち切られてしまった(後にDVDで完全版が発売)。
打ち切りの理由②:視聴率の低迷
『ファイヤーフライ』は、視聴率が振るわなかったことも打ち切りの要因となった。
初回放送時の視聴者数は440万人で、FOXが期待していた数字を大きく下回った。これは、当時の放送スケジュールにも問題があったと言われている。『ファイヤーフライ』は、金曜日の夜という視聴率が取りにくい時間帯に放送されており、特にターゲット層である若年層の視聴習慣と合わなかった。
また、2002年当時はまだ「SFドラマ」が主流のジャンルではなく、『X-ファイル』のようなサスペンス寄りの作品の方が受け入れられやすかった。
ファンによる復活運動と映画『セレニティ』の誕生
『ファイヤーフライ』の打ち切りを惜しんだファンたちは、ネット上で救済活動を開始。特に、「Browncoats(ブラウンコート)」と呼ばれる熱狂的なファンダムが大きな運動を展開し、DVDの売上も驚異的な数字を記録した。こうしたファンの後押しにより、2005年には劇場版『セレニティ』が制作され、シリーズの一部が補完される形となった。映画は興行的には成功しなかったが、批評家からは高評価を受け、現在もカルト的人気を誇る。
今後『ファイヤーフライ』が復活する可能性は?
近年、リブートや続編の話が浮上しているが、具体的な計画は発表されていない。ただし、2021年には20世紀スタジオ(旧20世紀FOX)がDisney傘下に入ったことで、Disney+(ディズニープラス)でのリブートの可能性が噂されている。また、主演のネイサン・フィリオンは、「もし機会があれば、いつでも戻りたい」と発言しており、キャスト陣も復活には前向きな姿勢を見せている。
(海外ドラマNAVI)
Photo:参照元:slashfilm