世界中を虜にしたファンタジー『チャーリーとチョコレート工場』で有名な工場長ウィリー・ウォンカの“夢のはじまり”を描く『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が、全米よりも早い12月8日(金)に日本公開。本作でメガホンを取ったポール・キング監督(『パディントン』シリーズ)にインタビュー! 本作の見どころやティモシー・シャラメ、ヒュー・グラントらキャストについて語ってもらった。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ポール・キング監督インタビュー
――元々原作のファンでしたか?最初に原作を読んだときはどんなことを感じましたか?また、この映画を見た観客になにを感じてほしいですか。
私は幼少期からこの原作の大ファンで、7~8歳の時に読んだのですが、ページが本から抜け落ちるほどずっと繰り返し読んでいた本でした。それで、プロデューサーのデイビッド・ヘイマンからこれをぜひ映画化したい、ウォンカの若かりし頃をフィーチャーした映画を作るのはどうかと言われた時に、面白そうだなと思いました。私は元々このウォンカというキャラクターが大好きですし、原作者のロアルド・ダールはウォンカの若い頃や、その後の展開もストーリーにしているんです。出版されているものもあれば、されていないものもありますが、ウォンカはダールが人生を通して深く探求したキャラクターだったようで、彼が残したウォンカ像をぜひ引き継ぎたいと思って意気揚々と取り組みました。
観客の皆さんには、私が原作を読んだ時に感じたのと同じ感情を受け取ってくれればと思います。面白おかしいし、魔法のような世界だし、同時に心の深いところで何かが揺り動かされるような感覚を僕は覚えたので、そういう感覚が伝われば嬉しいです。最近読み返したときは、チャーリーが最後にチョコレート工場を引き継ぐところで、込み上げてくるものがありました。観客の皆さんにも笑って泣いて、感情的に揺り動かされるものがあれば、と思います。
――若きウォンカを描くために、どのようなことを考えましたか?ウォンカを作り上げる過程で、ティモシーとはどのような会話をして、どこを目指していましたか?彼が役に対して取ったアプローチ方法などがあれば教えてください。
このウォンカというキャラクターは過去にも名優たちが演じてきて、ジーン・ワイルダーやジョニー・デップが素晴らしい演技をしていますが、それぞれのスタイルで演じています。もちろんティモシーも二人の演技を見ていますが、彼のスタイルはやっぱり彼自身の中から出てこないといけないので、彼なりのアプローチが必要でした。
そうは言っても今回は若かりし頃の、工場が出来上がる前のウォンカを描いていて、ジョニー・デップやジーン・ワイルダーが演じたウォンカとは全然違う人物像です。つまり、楽観的で、希望を抱いていて、世界に対して心を開いている、若い時のウォンカなんです。彼は、世界は公平であって、優しくあって、そして自分の才能と努力は認められるに違いないと思っています。でも、世の中はそう簡単にはいかずに、夢を叶えるためには困難にも立ち向かっていかないといけない、ということに気が付きます。ティミー(ティモシー)は、そういったことを自分なりに演じようと見出しながら役にアプローチしていました。
――ティモシーが高校時代にラップをしている動画を見て彼を起用したとのことですが、詳しく教えていただけますか?
(笑)ラップビデオではなくて、彼がパフォーミングアーツを勉強するような芸術系の一流高校に通っていた時に、その学校で出演したミュージカルの映像がYouTubeで見られるんです。その動画は何十万回と再生されていて、私もそれを見て「あ、彼は歌も踊りも大丈夫なんだ」ってことが分かったんです。
ですが、彼をキャスティングした一番の理由はやっぱりカリスマ性と魅力です。それとウィリー・ウォンカのあのキャラクターに必要などこか摩訶不思議な、未知数的な不思議な魅力を持っていることがキャスティングした動機となりました。彼は面白おかしいこともできるし、チャーミングだし、観客を揺さぶる何かを持っている素晴らしい役者で、今、彼の世代で活躍している役者の中では最高級だと思っています。
――ヒュー・グラントは『パディントン2』に続く起用ですが、今回ウンパルンパ役に起用したきっかけや理由などを教えてください。彼との仕事はどのような感じでしょうか?彼の出演が決まったことで、出番やセリフが増えるなど、脚本に影響はありましたか?
ヒューとは『パディントン2』でも一緒にお仕事をして、お互いに冗談を言い合うような仲だったんです。本作の脚本を書き始めた当初は、ヒューのことは検討していませんでした。ウンパルンパはこれまでも色んな描き方をされているから、今回はどうしようかということで、原作をもう一度振り返りました。
読んでいくと彼らはあまり台詞がなくて、歌詞を通じて色々と語っていくキャラクターで、何ページにもまたがるような長い歌を歌います。彼らは、皮肉たっぷりに辛辣で面白いことを言う人たちなんです。工場では、子供たちが大変な状況に追い込まれていきますが、それをキャキャキャと笑うような意地悪なところがあって、この役はヒューにピッタリかもしれないと考え始めました。彼も皮肉めいたことをとても面白おかしく言うことができるので。ということで、ヒューがあの緑色の髪の毛で、顔がオレンジだったらどうだろうと想像し始めたらもう寝つけなくなりました(笑)寝つけなくなったので、これはもう世界と共有するしかないなって思い、起用に至りました。
実際に演じてもらうと彼は本当に素晴らしくて、ティミーとの相性も素晴らしくて、演技でも素早く対応してくれるのでとてもよかったです。撮影が進むにつれて、彼の出演シーンは増えていきました。彼は非常に素晴らしいと思いましたし、我々が脚本で書いた台詞をさらに肉付けしてくれたりもしました。ティミーとヒューの芝居を見ているのは本当に見物でした。
――ヒューが演じるウンパルンパはとても印象的でした。彼は、『ラブ・アクチュアリー』出演時にはダンスをやりたくなかったという話がありますが、今回はウンパルンパのダンスをするようにどのように説得したのですか?
『ラブ・アクチュアリー』のときは実際どうだったか私は知らないですが、今回はすごく意気揚々と取り組んでくれたので、普段パーティーでもあんな感じで踊っている人なんじゃないかなと思います(笑)彼はとても楽しんでいるように見えましたし、非常にエネルギッシュに、そして律義に取り組んでくれました。今回は振付師もいたのですが、彼はとてもよくやっていた、と言っていました。
――ウォンカとヌードルの関係性が素敵でした。ウォンカはピュアで希望に溢れていて、ヌードルは現実的で冷静な視点を持っていて、とても対照的な二人ですが、この関係性でこだわったことがあれば教えてください。
まさに対照的なキャラクター、コンビを意識しました。ウォンカは子供のような童心があって、何でもできるに違いないと、希望に溢れていて、皮肉っぽいところもまだありません。なので、身体は大の大人ですが中にいるのは子供みたいな、そういうキャラクターになっているんです。ヌードルの方は対照的に、子供の身体の中に大の大人がいるっていう感じで、真逆ですよね。彼女は非常に皮肉的だし、世の中は信用できないと思っているし、現実を考える子という設定にしているんです。ヌードルは都会の生活が長いから、都会の厳しさや信用できない人がいることも分かっています。そんな対照的な二人ですが、お互いをちゃんと補完し合うところがあって、とても面白い関係性だなと我ながら思います。
――ウォンカとヌードルがチョコレートで溺れるシーンなど、撮影で使用したのは本物のチョコレートですか?また、どれぐらいのチョコレートを使いましたか。
正確な数については、私は把握していないですが、ヌードルとウォンカが溺れるシーンは、最初はいろいろな液体やカラーリングを試したんですが、最終的には本当にホットチョコレートを大量に作って使おうということになりました。私は、今5歳の娘がいるんですが、撮影当時は3~4歳で「見て、あれ全部本物のチョコレートだよ」って言ったらすごく嬉しがっていました。実際にプロのチョコレートメーカーが現場に来てくれて、本物のチョコレートを作ってくれたので、全部実際に食べられるチョコレートなんです。なので、月曜日の朝はいつもみんなでチョコレートのテイスティングをするという、仕事をするのにこんなにいい始め方はないと思える撮影でした。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、12月8日(金)より劇場公開。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』12月8日(金)全国公開© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.