『ハリー・ポッター』シリーズのルシウス・マルフォイ役で知られるジェイソン・アイザックスが、名優ケイリー・グラントの伝記ドラマ『Archie(原題)』の主演を打診された時は「酷い考え」だと思い、出演を躊躇したと明かしている。
映画スターではなく傷ついた男の素顔を描く
本名がアーチボルト(アーチー)・リーチというケイリー・グラントは、アルフレッド・ヒッチコック監督作である『泥棒成金』や『北北西に進路を取れ』、スタンリー・ドーネンがメガホンを取った『シャレード』といった映画で知られる20世紀を代表する映画スター。英ブリストルの貧困家庭で生まれ育ったケイリーは、母親は死んだと伝えられ(彼が31歳の時、精神病院に入院した母親がまだ生きていることを知る)、そして父親からは酷い虐待を受け、愛に飢えた悲惨な子ども時代を送った。
ケイリー役で主演したジェイソンは、『Archie』のプレス向け試写会にて、最初に出演を依頼された時は単なる俳優の伝記映画だと思い込み、「とんでもなく酷いアイデア」だと思ったという。それでも脚本を読むことに同意したのは、『あなたを抱きしめる日まで』や『僕たちのラストステージ』で知られるアカデミー賞ノミネート経験のあるジェフ・ポープが執筆したからであり、読み始めるとすぐに『Archie』がケイリー・グラントではなくアーチーの物語だと悟ったと明かしている。
ジェイソンは、「ケイリー・グラントは存在しませんでした。ケイリー・グラントは、虐待された男が生み出した人物だったからです。だから、“数多くの状況でいろんなことをごまかせる、本当にメチャクチャになった男なら演じられる。ケイリー・グラントは演じられないけど、アーチー・リーチなら演じられる”と思いました」と、自分はケイリーではなくアーチーを演じたのだと強調した。
もともと本作は90分の映画として構想されていたが、ポープは「その尺ではケイリーの“本質”を適切には描けない」と思い、全4話のミニシリーズに変更したそうだ。ジェイソンはアーチーについて、「彼は幼少期に酷い虐待を受け、絶望的な悩みを抱えた、不幸で呪われた人間でした。その物語は、映画では決して伝わり切らなかったでしょう。彼はお腹を空かせて飢えていたし、愛にも飢えていました」と分析している。
そんなケイリーを救ったのは、33歳年下の女優ダイアン・キャノンとの間に生まれた一人娘ジェニファーだったという。ケイリーはその生い立ちと私生活で数多くの問題を抱えていたことで知られているが、英Radio Timesのインタビューでジェニファーは父親について、「すべてが悲惨で、呪われたような人生だったとは思いません。父は愛嬌があって魅力的なところもありましたし、俳優として素晴らしい時を過ごしました」と語っていた。
ジェイソンがケイリー・グラント役で主演する『Archie』は、英ITVの動画配信サービス、英ITVXにて11月23日(木)に配信開始されたばかりだ。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Variety、英Radio Times