4年ぶりに復活!『ブラック・ミラー』シーズン6は強烈なカウンターパンチを食らった気分

4年間の沈黙を破り、ついに復活したNetflixのオムニバスSFシリーズ『ブラック・ミラー』。新しいテクノロジーがもたらす人間社会への“影響力”を主に描いていることから、デジタル時代の『トワイライト・ゾーン』と呼ばれることもあるようだが、シーズン6となる今回も期待にたがわぬ奇想天外な物語が視聴者の度肝を抜く。

『ブラック・ミラー』シーズン6【レビュー】

オムニバス形式は、言ってみれば短編集のようなもの。縦軸がないので、それぞれ独立したカタチで感想が生まれてくるが、ここで全てを紹介するわけにはいかないので、特に気に入った作品をピックアップしてみたい。これはあくまでも個人的なセレクトになるが、第1話「ジョーンはひどい人」第3話「ビヨンド・ザ・シー」。この2作は、『ブラック・ミラー』のコンセプトに則しながら、強烈なカウンターパンチを繰り出してくる、まさに傑作中の傑作だ。

第1話「ジョーンはひどい人」


まずは、第1話の「ジョーンはひどい人」だが、Netflixを明らかに模した“Streamberry”という架空の動画配信サービスが、“リアリティーショー”というスタイルを持ち込んで社会をかき回す自虐的(あるいは戒め)作品となっているところが実に面白い。
リアルな世界で起きている主人公ジョーンの私生活がそのまま配信ドラマの物語となって、なんと女優のサルマ・ハエック(本人が登場)が演じているのだ!
名作『トゥルーマン・ショー』よろしく、全てが監視され、その行動も、会話も、感情もダダ漏れ。しかも、本人が部屋でくつろぎながら自分の私生活を作品として鑑賞するなんて、恐怖を超えてもう笑うしかない。

あくまでもありそうでなさそうな空想話、でも、どこか真実味も拭えなくて、今のテクノロジーの不気味さがジワジワ伝わってくる世界観はまさに圧巻。
しかも製作元のNetflix自らが悪役を買って出ているところも、さすがの度量だ。
ところで肝心の物語だが、ブチギレしたジョーンは、「サルマ・ハエックが躊躇するような行動に出れば、さすがに出演拒否するのでは?」と思い立ち、あの手この手の奇行に走るのだが、ここからは下品でおバカ過ぎて大爆笑! さてその結末は…?
少々滑稽ではあるが、風刺がうまく利いていて、エンタメ作品として文句なしに楽しめる。

第3話「ビヨンド・ザ・シー」


もう一つは、第3話「ビヨンド・ザ・シー」。宇宙飛行士デヴィッドとクリフが宇宙ステーションに勤務しながら、私生活で恋のバトルを繰り広げるという奇想天外な物語だ。
宇宙にいるのに私生活? 恋のバトルって何? ハテナが頭の中を駆け巡りそうだが、実は彼らが眠りにつくと、地球上にいる精巧なレプリカントが作動し、普通に家族や友人たちと暮らしを営むという設定なのだが、デヴィッドが私生活であるアクシデントに遭遇したことから、クリフの妻と接する機会が増えて、やがて愛の修羅場がドロドロと…。

宇宙飛行中なのに泥沼の恋愛劇が展開するという斬新な発想もさることながら、テクノロジーの介入が行き過ぎるといかに恐ろしい現実を招くかがよりリアルに突きつけられているようで、終始ドキドキが止まらなかった。
スケール、サスペンス、人間ドラマと三拍子揃った内容で、尺がなんと1時間20分! オムニバスの1作ではあるが、『パール・ハーバー』『ブラックホーク・ダウン』のジョシュ・ハートネットと『ブレイキング・バッド』のジェシー役でお馴染みのアーロン・ポールを主演に迎えた“長編作品”として堂々たる仕上がりになっている。

なお、そのほか3作品も上記2作とクオリティーにおいては遜色ない完成度。ただ、いずれもホラー色をより強く押し出した作品となっているので、背筋ゾワゾワ系がお好きな方にはハマるはず。

(文/坂田正樹)

Photo:『ブラック・ミラー』© 2023 Netflix, Inc.