AIが人間の仕事をどんどん代行していきつつある現代だが、ハリウッドの脚本家の地位はまだ揺るがされないのかもしれない。人気ドラマ『ブラック・ミラー』のクリエイターであるチャーリー・ブルッカーが、昨年11月に公開された人工知能チャットボット「ChatGPT」に同作の脚本を書かせたものの、その出来に満足できなかったと語っている。米Varietyほか複数のメディアが報じた。
オリジナリティがまったくない
英Channel 4で2シーズンが放送された後、3シーズン目からNetflixで制作されるようになったオムニバスSFシリーズ『ブラック・ミラー』。“デジタル時代のトワイライト・ゾーン”とも呼ばれる同作は、インターネットやスマートフォン、リアリティショーなど、テクノロジーやメディアの潮流が私たちの生活に及ぼす影響をテーマに据えて、近未来のストーリーを描いている。
そういう作品の背景もあってか、ブルッカーは4年ぶりに作られた新シーズンのため、最近話題を集めているChatGPTに脚本を書かせてみたと明かしている。
「ChatGPTをちょっと試していて、“『ブラック・ミラー』のエピソードを生成しろ”と打ってみたんだ。そうやって出来上がったものは、一見したところではもっともらしかったけど、ちゃんと読んでみるとクソみたいな代物だった」
「なぜなら、これまでの『ブラック・ミラー』の数々のエピソードをごちゃまぜにしただけのような内容だったんだ。ちゃんと読んでみたらすぐ、この脚本にはオリジナルの発想が一つもないことが分かる出来だった」
ブルッカーが指摘した通り、ChatGPTは既存の情報を情報源にしており、新たに何かを生み出す機能はない。『ブラック・ミラー』のような斬新な設定を生み出すには力不足だったわけだが、現在ハリウッドで1ヵ月以上にわたってストライキを続けている脚本家たちにとっては朗報だろう。
とはいえ、ChatGPTに書かせたことで気づいたこともあったという。「これまで手掛けたいくつかのエピソードが、“なんてこった、自分はずっとコンピューターの中にいたのか!”という展開だったことに気づいたんだ。だから今回は、『ブラック・ミラー』のエピソードはこういうものだと自分が思い描くイメージから脱しようと思った。自分の作ったルールを破れないなら、アンソロジーシリーズを作る意味はないからね」
結局ブルッカーはAIに頼らないことにしたようで、6月15日(木)からNetflixで配信されるシーズン6の全5話のうち4話(「ジョーンはひどい人」「ヘンリー湖」「ビヨンド・ザ・シー」「メイジー・デイ」)を彼が一人で、残る1話(「デーモン79」)はビシャ・K・アリ(『ロキ』『ミズ・マーベル』)とともに執筆している。先日公開された予告編からも相変わらずオリジナリティにあふれた内容であることが伝わってくるため、ブルッカーには今後も自力で書き続けてほしいものだ。
『ブラック・ミラー』はNetflixにてシーズン1〜5が配信中。シーズン6は6月15日(木)より配信開始。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Variety
Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ブラック・ミラー』独占配信中