【映画レビュー】『バイス』アメリカを裏で仕切った「史上最凶の副大統領」とは?

2001年に発足したジョージ・W・ブッシュ政権の陰には、絶大な影響力を持った裏の為政者が存在した――。4月5日(金)公開の映画『バイス』は、その名の通りアメリカの副大統領(バイス・プレジデント)を務めたディック・チェイニーを追う実話コメディだ。

【関連動画】映画『バイス』たっぷり1分半の本予告編はこちら!

♦︎呑んだくれ青年が副大統領に立身出世

アメリカ全土に衝撃を与えた、2001年の9・11テロ事件。混乱する政府を立て直して名を上げ、やがては悪名高いイラク戦争へとアメリカを導いた男がいた。「史上最凶の副大統領」とさえ呼ばれる、副大統領のディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『アメリカン・ハッスル』)だ。

かつては酒に溺れ大学を中退するという、どん底の人生を歩んでいたチェイニー青年は、後の妻となる恋人リン(エイミー・アダムス(『KIZU-傷-』)に発破をかけられたことで政界入りを志望。常識外れのドナルド・ラムズフェルド議員(スティーヴ・カレル『ザ・オフィス』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』)に師事するうちに、モラル度外視の過激なやり口を身につけてゆく。出世街道を駆け抜け、ついにはブッシュ大統領から副大統領に指名されることに。チェイニーは引き受けるが、お飾りの役職は嫌だと大統領相手にキッパリ断言。内政のみならず軍事や外交など、あらゆる政治的局面を裏で操り始める。

9・11の混乱を契機に、まるで大統領と同等の権限があるかのような言動が目立つように。ライス大統領補佐官(リサ・ゲイ・ハミルトン『ハウス・オブ・カード 野望の階段』)ら要職たちは、チェイニー副大統領の権力への執着に、得体の知れない不安を感じるようになる。

♦︎クリスチャン・ベイル、今作も役作りで激変

製作の裏話を明かす米Los Angeles Times紙は、チェイニー副大統領役のクリスチャンの役作りについて紹介。副大統領にふさわしい貫禄をつけるため、体重を20キロも増加させたという。頑固者のイメージを重視し、とくに首回りにたっぷりと肉を蓄積。さらには老齢の政治家を演じるとあって、メイクには毎日5時間が費やされた。

こうした苦労の甲斐あってスクリーンでは、少しずつ齢を重ね狡猾さに磨きをかけてゆくチェイニーの姿が鮮明に表現されている。自らを政治の道へ導いた妻リンへの愛情は忘れないなど、一応の人間らしさは持ち合わせているチェイニー。しかし、ユーモアも何もないない男だと米New York Times紙が表現するように、ただただ権力の拡大に執念を燃やす。

着々と大統領への権力の集約を進めた上で、ブッシュ大統領を陰で操るという抜け目ない策略を進める副大統領。細部の歴史的正確性については議論のあるところだが、モラルを無視して政界を牛耳るチェイニーの姿に目が離せない。米USA Today紙は星4つ中3.5の高評価をつけている。

♦︎アカデミー賞受賞作品

本作では、2015年に公開され好評を博した、トレーダーたちの大逆転を描いた映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスタッフとキャストが再び集結。本作も実話に基づくコメディ作品となっており、製作チームお得意のジャンルだ。

主演のクリスチャンは、本作の熱演で今年のゴールデングローブ賞を受賞した実力派俳優。彼が長時間にわたるメイクに耐えた甲斐あって、本年度のアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング部門でオスカーを獲得している。

ワイオミングの田舎の電気工から"事実上の大統領"に上り詰め、アメリカを自在に支配し、アメリカ史上最も権力を持ったチェイニー副大統領の前代未聞の裏側を描いた社会派エンターテイメント『バイス』は、4月5日(金)から全国ロードショー(ロングライド配給)。公式サイトはこちら

製作チームの過去作品『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が気になる方は、Netflixで配信中なので是非チェックを。(海外ドラマNAVI)

Photo:

映画『バイス』4月5日(金)全国ロードショー
提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド
© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved